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36.脱・無職



 怒涛のような一年が過ぎ去った──気がする。 まぁ、実質一か月とちょっとしか過ぎ去ってないわけなんだけど。

 俺はいまだに無職を続けている。 まぁ、俺みたいな人間を雇ってくれる酔狂な人物なんていないだろうからそれはいいんだけど、いま俺の目の前で起こっている出来事を見るならばそろそろ本格的に仕事を見つけなければと思ってきた。

「へー、『幼馴染と結婚! 二人の純愛に乾杯ッ!』かー。 素敵だねー、この二人」

「ほんとだねー。 さぞかし素敵な幼馴染だったんだろうね。 お金もあって優しくて甲斐性があって。 やっぱり……幼馴染ってすごいな〜。 この人、お嫁さんのために一生懸命頑張ったらしいよ」

 大好きななのはとフェイトが雑誌をみながらそう呟く。 それは本当に二人だけの会話であって、声量も俺に遠慮してくれているのかとっても小さかったわけなんだけど、

「が……は……ッ!?」

 無職で金なくてキチガイで甲斐性もない幼馴染には痛恨の一撃だった。 即死系の技にもほどがある。

「きゃあーー!? どうしたの、いきなり吐血なんかしてッ!?」

 なのはが駆け寄ってくる。

「いや、ちょっと……いま銀行強盗のプランを練ってて……まっててね。 君たちに素敵なプレゼントを用意するからさ!」

「いやいやいやいやいやっ!? そのプレゼント絶対に君の保釈金の手紙だからっ!」

 あ、捕まったら保釈金払ってくれるんだ。 それはそれで嬉しいかぎりです。

「あ、なのは! もう仕事にいく時間だよっ!?」

「え、ほんとっ!? それじゃ仕事行ってくるから、捕まっちゃダメだよっ!」

「善処する!」

 この会話が世間一般的にみてズレているのは承知である。

「さて、ヴィヴィオ。 ──って、ヴィヴィオ〜?」

 さっきまで俺が貸したゲームで遊んでいた小さな姫君は、ちょっと目を離した隙に見失ってしまった。 だが、もうそんなことで慌てる俺ではない。

「ヴィヴィオの体から発せられるフェロモンをたどっていけば……」

 ヴィヴィオのフェロモンを頼りに庭へと出ると、ヴィヴィオがしゃがみこんでいた。

「おいヴィヴィオっ!? どうした!? 気分悪くなったのか!?」

「あー、おにいさん! ほら! なんかネコさんみつけたよー!」

 慌てて駆け寄る俺に、こちらを向いたヴィヴィオはお日様のような笑顔を浮かべながら、なにかを俺にみせてきた。 それはヌイグルミのようであり、色は白、確かにネコと言われればネコだが、ちょっと違うような気もする。 なんだ、これ?

 俺がヴィヴィオの手からその物体を受け取ると、

「やぁ、キミがこの子の親なのかい? ボクはQべぇ。 さっそくだけど、この子を魔法少女にしたいんだ。 どうか君からも言ってあげて──」

「ほおおおおおおおおおおおおおおっ、わちゃあーーーーーーーーーーー!!」

 渾身の力で、腰を使って、腕にうねりを加えて、喋るネコもどきを庭に叩きつける。

 めり込む物体。 喜ぶヴィヴィオ。 冷や汗を流す俺。

 やがて額の汗をぬぐった俺は、ヴィヴィオに向き直って目線を合わせながら言った。

「ヴィヴィオ、いまの見なかったことにしよう。 な?」

「え? なんでー?」

「あいつに絡まれると厄介だから。 もう、なんか色々とメンドイことになるからさ」

「はーい!」

 ヴィヴィオの聞き分けがよくて本当に助かった。

「ああ、そういえばヴィヴィオ。 いまからはやてお姉ちゃんの所にいくぞー」

 ちょっと用事ができてしまった。 これははやてにしか頼めない用事である。

「えー? おしごとじゃないのー?」

「大丈夫。 たぶんゲームかパソコンしてるから」

こうして俺とヴィヴィオは、ミッドにあるはやての家にいくことになった。



           ☆



「はやえもん。 僕に職を恵んでください」

「シャマル、塩」

「はい」

「まって!? 俺の話を聞いてからにして!」

 予想通りはやては家でパソコンをしていた。 といっても、なんか書類をしているみたいだったが。 俺はそんなはやての目の前で土下座をしながら職をくださいと叫んでいた。

 家の中心で職探しを叫ぶ

 まったくもって意味がわからない。

 ちなみに俺も親として、ヴィヴィオにこの姿を見られたくないと思い、ヴィータの部屋で遊ばせている。 あの二人が隣に並ぶと姉妹のようでとても可愛らしい。 そうヴィータにいったら『きめぇんだよ、ロリコンが』と唾を吐かれながらいわれた。 お前の貧弱ボディーには興味ねえよ。

「まぁ、とりあえず理由を聞こうか」

 はやてがテーブルにヒジをつきながら女王様のように、俺を見下す。

「あの……俺には椅子ないの?」

「ほしい?」

「うん」

「ほら、ここに空気があるやろ?」

「誰が空気椅子が欲しいといったっ!?」

 なんなの、この子。 まじでなんなの。

「まぁ、アレだよ。 ほら、俺ってば、シャイボーイじゃん?」

「ヘタレやな」

「シャイボーイね、シャイボーイ。 ジャリボーイでもいいよ。 俺はなのはとフェイトが好きなわけよ。 けど、どんなに好きでも言ってるだけじゃダメだと思うんだ。 やっぱり行動したほうがいいと思う。 けど俺には金がない。 はじめは銀行強盗も考えたけど、二人に迷惑はかけたくないんでやっぱり地道にバイトしようと思った。 まぁ、モノで釣るのはよくないと思うけど、目に見える形で感謝の気持ちを現したいんだ。 だからこそ、俺はプレゼントを買って二人のお礼を言いたい」

「ほんで?」

「バイト紹介してください」

 はやてが溜息をついた。 後ろにいたシャマルさんも困った顔を浮かべている。 あれ? 二人ともどうしたんだろうか?

「ま、まぁ……少しは成長したみたいですから。 はやてちゃん、ここは協力してあげても」

 お、シャマル先生良いこといった!

「う〜ん……まぁ、そうやな。 こいつがバイトをするだけでも海鳴にいる人も私達も少しは安心するか。 よし! お姉さんが一肌脱いだろ!」

「あ、できるならパンツだけずりおろした状態で、スカートはミニ。 服は下半身が隠れない程度の長さの服を着てくれるとうれしいんだけど──」

「だれが本当に脱ぐっていった!」

 はやて、この頃攻撃力上がってない?

 ズレた顎を直しながら、そう思わざるおえなかった。




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