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A's16.休日(後編)



「俺の記憶がない間に何が起こったんだ」

「えっと……なのはとはやてが二人っきりにしてほしいとお願いしてきたから、私が気を利かしてヴィヴィオと俊を連れて家の中でゆっくりしてたくらいかな?」

「そうか……。 こいつらは殺し合いでもしようと考えてたのか?」

 目の前に座っている二人の魔法少女はお互いに頬を膨らませて、そっぽを向いている。 俺が作った昼飯はしっかりと食べながらであるが。 場所は既に玄関からリビングに移っていた。 俺がはやてのパンツ鑑賞しようとした瞬間から意識がなくなり、気が付けばフェイトとヴィヴィオの抱き枕になっていたからサッパリわからん。 なんで二人ともこんなに空気がギスギスしてるんだ?

「パパピーマンたべる?」

「う〜ん、パパもピーマンあるからいいかな。 ほら、ヴィヴィオもピーマンたべて──」

「そっかぁ。 フェイトママたべる?」

「おーいヴィヴィオちゃんパパを無視しないでくれー」

 フォークで刺したピーマンを俺の隣にいるフェイトに向けるヴィヴィオ。 このピーマン嫌いもなんとかしないととは思うけど、どうやって克服させていこうか。

「フェイトママもピーマンあるから大丈夫だよ。 というかヴィヴィオ、今日のおかずはピーマンの肉野菜詰めチーズ入りなんだからピーマンあげたら──」

「はいガーくん」

「アーン」

「もしもーしヴィヴィオー?」

 フェイトもピーマンを食べないと分かった途端に捨てるのか。 子どもってこういう所が恐ろしいところだなぁ。 というか、お願い一つ聞く約束でもピーマン食べるの嫌だったのか。 それとも目の前に置かれた実物を見て、約束なんて忘れたのかな?

 フェイトの席は俺の隣だ。 というよりも、フェイト・俺・ヴィヴィオ・ガーくんの順に並んでいる。 対する向かい側はなのは・はやてだけである。 明らかに場所がおかしい。

「そういえば、今日は元々庭で昼食を食べる予定だったんだけど、皆室内でいいのか?」

 ビクッ!

 庭という単語を聞いて肩を震わせた魔法少女が約2名。

「い、いや、庭より室内のほうが情景よくて気持ちがいいんじゃないのかな? ね! はやてちゃん!」

「そ、そうやな! なのはちゃん! やっぱ庭より室内やな!」

 先程とは打って変わった表情で息を合わせて野外食事を拒否するなのはとはやて。 明らかにおかしい、絶対に俺がノビてる間に何かがあったんだろうな。

「……フェイト? なにかした?」

「えっと……ヴィヴィオと遊んでたらうたた寝しちゃって、気が付いたら鍵開けるのをすっかり忘れてて……」

「うぅ……玄関の外に放置されるのがこんなに怖いことだなんて……」

「最初の10分はまだよかったんや……。 その後の50分間がもう涙が出てくるほど情けなくて……」

 二人とも放置されたときの心境を思い出したのか、瞳にハイライトを消して沈んだ表情で昼食を食べる。 ……正直物凄く可哀想になってくる。 思わず抱きしめてあげたくなるほどだ。

 チラリと横目でフェイトを見る。 フェイトもフェイトで反省というか後悔というか、しゅんとした表情をしていた。 いやまぁ、フェイトが悪いとは限らないし、元々なのはとはやてがモメにモメたのが原因かもしれないしなぁ。

「パパー、ヴィヴィオおかわりー」

「おー、はいはい。 ちょっとまってねー」

 差し出したヴィヴィオの皿に俺の皿の手をつけていない部分を分ける。 むろん、ピーマンもだ。

「…………」(固まったまま俺を見つめるヴィヴィオ)

「いや……そんなに悲しそうな表情でパパをみてダメだぞ? ピーマンさんだってヴィヴィオに食べてほしいって泣いてるぞ?」

「ピーマンさんはパパだからダメ」

「こらヴィヴィオダメでしょ。 ピーマンは変態じゃないんだからパパと一緒にしちゃダメ」

「まってフェイト。 いまさらっと俺のこと変態にしなかった? 否定はしないけど、別に否定は出来ないけど」

「そっかぁ。 ピーマンさんはパパじゃないのかぁ。 フェイトママたべる?」

「ぎゃくに食べさせてあげよっか。 はい、あーん」

「やっ」

 手を交差させて嫌がるヴィヴィオ。 明らかな否定のポーズだが、そこまでしてピーマンを食べたくないのか。 お前は哲学する柔術家か? ちょっとこのままじゃ心配になってくるぞ。

「うぅ……俊ヴィヴィオが私のピーマンを食べてくれないよぉ……」

「ま、まぁまぁ、ゆっくり克服させていけばいいからさ」

「うぅ、じゃあはい。 とりあえずあーん」

 ヴィヴィオに断られたのがショックだったのか、フェイトはヴィヴィオに食べさせる予定だったピーマンを俺の口に運んでくる。 なんと役得なんだろう。 差し出されたピーマンを咀嚼しながらそう考えていると、

「「…………」」(何も言わずに黙ってピーマンを差し出す向かい側の二人)

 ……俺だってピーマンはそこまで好きじゃないんだけどなぁ。

「浮気は絶対に許さないからね、俊くん?」

「わたしは分かっとるで、俊?」

 断る術は持ち合わせていなかった。

          ☆

 昼食を食べ終えた俺達はなんとなく携帯ゲーム機片手にデザートを食していた。 今日のデザートはあんみつである。 円形に並んだ俺達はあんみつをぱくぱく食べながら、どこか遊びに行かないかと計画を立てていた。 遊びに行くことには全員賛成したが、今回はヴィヴィオもいるのでヴィヴィオが退屈しない遊び場ということで揉めた。 俺のアダルトショップ巡り案は反応すらしてくれなかったです、まる。

 大人しくヴィヴィオを膝に座らせてヴィヴィオの髪を編み込みしていると、なのはが勢いよく手をあげた。

「わたし久しぶりにボウリングに行きたい! わたしと俊くんとヴィヴィオペア対フェイトちゃんはやてちゃんガーくんペアで対決しようよ! ねっ!? ねっ!?」

「ちょーっとまつんやなのはちゃん! そのペアの組み合わせには疑問を感じるで!」

「そうだよなのは! 此処は私と俊とヴィヴィオとガーくんと二人ということで!」

「残念でしたー、俊くんはわたしと一緒が一番嬉しいもんね! それに、二人とも今日は超ミニスカでしょ? そんな姿でボウリングなんてしたらどうなるかなぁ?」

 にやにやと極悪っぽく笑うなのは。 なのは自身が可愛いから全く怖くないのだが、それは言わないでおこう。 しかしそうか……ボウリングかぁ、確かに体を動かすのはいいかもしれん。 それに──合法的にパンツ見放題だしな!

『いや、べつにそれはかまわへんけど。 むしろこの恰好は見せるためにしてるもんやしなぁ』

『わ、私ははやてみたいな考えじゃないけど、俊が見たいっていうのなら別に隠さなくてもいいかな……。 それに今日は攻めるって決めてたし』

『う、うぐぅ……っ! ふ、二人ともずるいの! なのはもミニスカにする! 二人のミニスカよりきわどいミニスカがあるもんね!』

『『はぁ……』』

 思わずこれから訪れるであろう桃源郷を考えながら拳を握りしめると、編み込みのため大人しくしていたヴィヴィオが顔だけこちらに向きつつ聞いてくる。

「パパー、ぼうりんぐってなーに?」

「んーっと、10本の棒を大きなボールを転がして倒すゲームのことかな。 ちょっとゲームで練習してみよっか」

「うん!」

 携帯機ゲームのカセットを入れ替えて起動する。 ヴィヴィオの目の前にそれを持っていくと、ガーくんも興味があるのかヴィヴィオの横にピッタリとくっついて画面を凝視しはじめた。

 ヴィヴィオとガーくんにとっては初めてのボウリングか。 こういうのは一番初めが肝心なんだよなぁ。 最初が楽しければその後もその遊びを楽しく続けることが出来る。

「おー! これたのしい!」

「ガークンモ!」

「きょうはこれをみんなでするのかー。 ヴィヴィオたのしみ!」

 画面を見ながらきゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐヴィヴィオとガーくんを見ながら思う。

 今日がヴィヴィオとガーくんにとって最高の休日になるように頑張ろう。

 それが親の務めなのだから。

             ☆

 ─某ボウリング場─

「いや、お前らが出かける準備に1時間もかけるからおかしいとは思っていたよ。 なんせ素材が抜群なんだから化粧なんてほとんどしなくていいし、服もセンスいいから全部可愛いからな。 そんなお前らがなんでこんなにも時間をかけているのか考えていたが──なるほど、こういうことか」

 今日来たのは車で20分移動した場所になるボーリング場だ。 ボーリングってのは遊びでやる分には性別も年齢も考えないスポーツだから休日になると混むんだよこれが。 俺らも学生の頃行ったけど混んでて遊べないってこともあったもんだ。 とくにカップルとかな。 あいつらイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャしやがってッ! なんどパチンコと改造モデルガンで店を追い出したことか! 俺への当てつけか! バカッ! はッ!? 危ない俺としたことが取り乱してしまったようだ。 まぁなんだ、つまり何が言いたいかというとボウリングってのはそれくらい人気の娯楽なんだ。

 だというのに──

「にゃはは……だってふと考えたらわたし達管理局の看板娘たちが全員ミニスカで下着が見えるようなスポーツしちゃったらとんでもないことになっちゃうからね。 上の人に相談したらすぐに此処を貸切にしてもらうことが出来たんだー」

 それでいいのか管理局上層部。 それ完璧に職権乱用だろ。 管理局の体制壊した俺がいうのもなんだけど、君ら頭大丈夫か?

「それに……わたしも俊くん以外の人に下着見せるのは嫌だったし……」

 もじもじとさせながら黒のアダルトチックなミニスカを摘まむなのは。 やばい、とんでもなく可愛い……。

「はっはっは、何を言ってるんだよなのは。 そんな、なのはが俺以外の男に下着を見せるなんてそんな俺はぶっ殺さないといけなくてコロコロしながらも金玉もコロコロしちゃってでもまんまんだってコロコロしたいし──」

「俊くんっ!? 俊くん冗談だから! わたしは何があっても俊くん以外には見せないから落ち着いて!? ね!? そっちの世界に行かないでっ!」

『でもなのはちゃんのバリアジャケットって構造上パンチラ具合が激しいとおもうんよ』

『大丈夫だよ、はやて。 なのはレベルの魔導師になると鉄壁のスカートスキルが発動して見えないから』

『流石なのはちゃんやな。 萌え系魔法少女の極意をしっかりつかんどる。 まぁ年齢的にもう萌え系は厳しいかもしれへんけど』

『でも俊のお宝の中では20後半でもロリ系って表現を使う女性が沢山いたから私達もまだまだ萌え萌えは使えるよ。 それになのはは萌えの天才だから』

『あー……確かになぁ』

「なんか嬉しいような悲しいような……。 ま、まぁでも大丈夫だよ俊くん。 わたしには俊くんだけだから!」

 ぎゅっと誰かが抱きついてくる。 この胸の感触、この形──紛れもなくなのはのおっぱいだ!

「ありがとうなのは。 キミはやはり天才だ」

「……最低」

 ぼそりと呟くなのはの声が妙に冷たい。 何故だろう?

「ま、俊くんだからしょうがないか。 ほら、俊くんさっさと登録しよ!」

「お、おうそれもそうだな!」

 さーて、またとないパンチラ量産舞台だ! 本気出すぞ!

        ☆

「ねぇおかしくない? なんで三人とも別のレーンにいて全員俺の名前入れて登録してるの? お前達別居中の夫婦なの?」

 どうしてこうなったのか。 僕にはまるでわからない。 後ろから三人のパンチラをニヤニヤしながら鑑賞し、あわよくば嬉し恥ずかしハプニングとか手取り足取り腰とりの指導とか想像してたのに三つのレーンを行ったり来たりじゃ落ち着いて座ることもできないぞ……。

「はい俊! がんばって!」

『俊くんはやくー!』

『俊ー!』

『はやてちゃんもフェイトちゃんもやめてよー! 俊くん困ってるでしょー!』

『そういうなのはちゃんだって──』

 ギャーギャーッ!

「なんか鳥が騒がしいね。 あ、もうちょっと投げる速度落としても大丈夫だと思うよ?」

「ふぇ、フェイト胸が当たってるんだけど……!?」

「えっち」

 たったいまはやてのレーンで投げ終えたというのに既にフェイトは俺のボールを持ってスタンバイしていた。 それはもう屈託ない笑顔で。 俺がボールを持つと彼女は隣で腕組みし、投げれないように体を寄せる。 まるで彼氏とデートに来たイチャイチャカップルのような気分だ。 しかしそれは後の二人も同様であった。 なのはもはやてもニコニコとした笑顔で自分の番のときも俺が来てからしか投げないし、本当に幸せそうだ。

 だからこそ、俺も口では悪態をつくけど止められない。 彼女たちが幸せそうなら俺はそれでいい。 自分が頑張ればいいだけの話だから。 自分が体動かして彼女達が笑顔を浮かべてくれるなら。 でもどうしてだろう? 自分の中が何かが引っかかる。 いまにも地雷を踏みそうな──

「ヴィヴィオつまんない!」

 その言葉で全員の動きが止まった。 俺はゆっくりと振り返る。 なのはのレーンにじっと座ったまま、いまにも涙をこぼしそうな5歳の幼女を見つめる。

「えっと……ヴィヴィオ?」

「ヴィヴィオもうかえる!」

「ど、どうして? もしかしてボウリングつまんなかった?」

 隣にいたなのはがしゃがみ込み、ヴィヴィオの目線と同じ高さで語りかける。 対するヴィヴィオは涙が溜まっていた目を袖で拭きつつ答えた。

「だってなのはママもフェイトママもはやておねえちゃん、みんなばらばらだもん。 パパはずっとはしってるしヴィヴィオつまんない……。 ヴィヴィオもうぼうりんぐきらい……」

 ぎゅっとなのはに抱きついたヴィヴィオ。 そりゃヴィヴィオにとっちゃ楽しくないよな。 折角皆で遊べると思ってきたボウリング場なのに、蓋を開けてみれば全員とも違うレーンで遊んでるんだもんなぁ。 ヴィヴィオの想像してた未来予想図とはかけ離れた図だろうな。

 ボウリング場にはヴィヴィオの鼻をすする音だけが聞こえていた。

 既にはやてとフェイトも俺の隣に来ていたが、二人ともバツの悪そうな顔でおろおろしているだけである。 非は完全にこちらにある。 その非はなにもなのはとフェイトとはやてだけじゃない。 俺にもある。 俺だってこのレーンの組み合わせになった瞬間に反対するべきだった。 俺の身体能力をもってすればスライディングしながらパンツを鑑賞することができるのでこの状況に甘えていたんだ。 目先のパンチラに目がくらんでしまったのだ。 いわば好きな相手のパンチラが俺の思考判断を狂わせた。 そしてその結果、ヴィヴィオは──

「ごめんねヴィヴィオ。 なのはママ達が悪かったよ。 自分たちのことばかり今日は考えちゃってごめんね……」

 なのはがあやすようにヴィヴィオを抱っこし頭を撫でる。 ヴィヴィオは胸に顔を埋めたままこくんと小さく頷くだけに止めた。 ヴィヴィオが泣いているのかどうかは定かではないが、最悪の休日になったことだけは確かである。 完全に俺の失態だ。 三人ともすっごい暗い顔してるし、娘は泣くし。 俺もなんだか泣きたくなってきた。

 もういっそこのまま失禁でもしようかと考えていた直後、隣にいたフェイトの横を風のように通り過ぎ、なのはの胸に顔を埋めていたヴィヴィオに声をかける人物がいた。

「小さくて可愛らしくて愛らしいお客様。 申し訳ございません。 私のほうで手違いを起こしてしまいました。 先ほどまでのレーン分けなのですが、あれは昨日の合コンでのレーン分けを見間違えて組んでしまったものです。 長年この業務に努めていますがこのような失態をしたあげく、あなたのような小さくて可愛らしいお客様に嫌な思いをさせてしまうとは……恥ずかしい限りでございます。 正しくはこのようなレーン分けでした」

 そう言って深々と頭を下げた店員は機械を操作する。 何回かの電子音の後、レーン分けの表示は、なのは・しゅんから、なのは・フェイト・はやての一組目としゅん・ヴィヴィオ・ガーくんの二組目に分かれていた。

「席もバッチリ隣通しでございます。 お若い夫婦とそのご友人にもご迷惑をおかけしまして、なんとお詫びしたらよいものか」

 店員はオーバーリアクションを取りながら悩みだした。

 そこにヴィヴィオの小さな声が聞こえてくる。 胸に顔を埋めたままだが、ヴィヴィオの要求はバッチリ聞こえていた。 その要求に店員は笑顔で応える。

「わかりました。 それでは少々お待ちください」

 深々と頭を下げた店員はすぐに要求されたものを取りに奥へと引っ込んだ。

 それと同時に、ヴィヴィオの明るい声が聞こえてきた。

「えへへ、パパといっしょ! なのはママといっしょ! フェイトママといっしょ! はやておねえちゃんといっしょ! ガーくんといっしょ!」

「そうだよー、もう誰も離れたりしないからね」

「せやでヴィヴィオちゃん。 まぁ今後離れることがあるとしたら……その人の命が絶たれたときやな」

「ふぇ……」

「ちょっとはやてちゃんっ!? いまのヴィヴィオは泣き虫モードなんだからやめてよ!」

「ヴィヴィオー、フェイトママがだっこしてあげるからおいで」

「うん!」

 なのはの胸からフェイトの胸に飛び移るヴィヴィオ。 やはり巨乳のほうがいいもんな。 わかるぞ、その気持ち。

「俊くん……?」

「うひゃぁっ!?」

「いま失礼なこと考えてなかった?」

「め、滅相もございませんッ!」

 瞬時に背後に周りこみ頸動脈を確実に押さえてくるなんて管理局のエースオブエースは化け物か!? あ、でも胸は気持ちいい……。

 俺の考えを見抜いたのか、なのははすぐに飛びのき胸を隠す仕草を取る。

「……変態」

「およびでしょうか?」

「なんか悲しくなってくるから返事するのやめて!?」

「でも名前を呼ばれたから……」

「キミの名前は上矢俊でしょ!?」

「ふッ、懐かしい名だ。 その名をまた聞くことになるとはな……」

「いやいや、現役で使ってるでしょ。 また厨二病でも再発したの?」

「な、なわけないわい!」

「はいはい……。 ほら、早くお礼言うよパパ」

「ですなママ。 すいませーん! ──って、あれ?」

 スタッフが引っ込んだスタッフルームを尋ねると、そこには先ほどヴィヴィオが要求していたストロー付きカルピスと手紙がぼんに添えられていた。 なのはの方に首を向けるが、こちらの言いたいことが分かっているなのはも首を横に振ることで応えた。

「……奇術師か何かか?」

「いやいや、わたし達Sオーバー3人に勘付かれない人物なんて早々いないよ。 これでも魔導師だよ? 平時のときでも察知する能力を下げることはないよ」

「その割には俺の覗きに気づかないときもあるよな」

「…………まぁ見てほしくないわけじゃないし……」

 いきなり小声になったので聞き取れなかったが、まぁ殺すという単語はなかったっぽいし大丈夫だよね? 家に帰って殺されないよね?

 ちょっとだけ幼馴染の小声の声に心臓をバクバクさせながら、ぼんにカルピスと一緒に乗っけてある手紙を取る。 隣でなのはが覗き込んでいるのを確認して、俺も声に出して読み上げた。 長文ではないが、あまり意味のわからない文章であった。

 曰く、『その他のレーンにも順次振り分けておりますので、今日はこころゆくまでご堪能ください』 とのことだった。

 なのはも意味が分からなかったのか、首を傾げてこちらを見てくる。 しかしながら、俺だってこれは理解できない。 そうやって二人で首を傾げていると、ふいになのはが体をビクンと跳ねさせた。

「……バイブ?」

「違うよバカ! はぁ……今日は折角楽しい休日になると思ったのに……」

 ため息を吐きながら天を仰ぐなのは。 いったいどうしたというのだろうか?

 もうなんか俺の手を握りしめてここから一歩も動かない姿勢を取るなのはに懐疑的な視線を投げかけていると、階下から聞き覚えのあるバカの象徴の声が聞こえてきた。

『なのはたんの髪の毛発見! やはりなのはたんはここにいますよ!』

『いやそれは分かったからお前らは訓練に戻れよ。 もう期日迫ってんだろ、昇進試験の』

『根詰め過ぎるとよくないからって息抜きに犬の散歩に連れて行ってくれたのはヴィータさんじゃないですか! 最後までお供しますよ!』

『ふむ、ボウリングか。 そういえば家にヴィヴィオ君がいた頃は諸事情によりこういう場所に連れていくことはできなかったので、本当に彼らに預けてよかったと思えるよ』

『主はやてッ!? 主はやては何処にッ!?』

 バカの象徴を筆頭に、毎日毎日耳にしている奴らの声が集まってくる。 成程な、いまようやくなのはが後ろに隠れたのか合点がいった。 そりゃ今日のなのはは気合の入った服装だもんな。 あいつらからしたら恰好の獲物ってわけか。

 スタッフルームから階段場所を覗く。 うひょー、皆いるじゃん。

『あ、スカさんにヴィータちゃんだ! わーい!』

『よおヴィヴィオ。 ボウリング楽しんでるか?』

『いまからすきになるとこ!』

『お、じゃあまだしてないってことか。 ってあれ? パパとなのはママは?』

『パパとなのはママ? んーっと……あれ? ヴィータちゃん、パパとなのはママがまいごになっちゃった……』

『まぁそんなに涙目になるな。 ティアがいるから──』

「ギャーッ!? やめて!? 下着脱がそうとしないで!?」

「なのはたーん!」

「ぺろぺろー!」

「なのはタソー!」

「なにどさくさに紛れて俊くんもまざってんの!?」

「まぁ着衣派の俺もノーパンまでは認めるよ。 スカートは絶対に脱がすなよ?」

「「あいあいさー!」」

「セーットアーーーープッ!!」

「撤退だ! ちょっと悪ふざけが過ぎたようだぞ!」

「コホーッ! シュコーッ!!」

 言語を失ったなのはの攻撃は、一切の手加減がなかったので怖かったです。 もう絶対になのはのパンツを脱がすことはやめようと思いました。 本日2度目の臨死体験でした。

     ☆

 ボウリング場には黄色い声が至るところで聞こえてくる。 元々六課は女性の人数が圧倒的に多いというのに、今回はスカさんの娘も全員参加。 花園にまで発展している。 そして俺の膝の上にはヴィヴィオがおいしそうにカルピスを飲んでいる。 先ほどとは打って変わったほくほく笑顔で、なんとも幸せそうな表情だ。

「パパ?」

「ん? どうした?」

「ぼうりんぐってたのしいね!」

「あぁそうだな」

 ヴィヴィオの頭をなでなでしつつ、先程についての反省会を頭の中で行う。 はぁ……なんか落ち込むわ。

「おーいヴィヴィオ。 ほら、投げ方のフォーム教えてやるよ」

「おー! ヴィータちゃんおとなだー!」

「いや、見た目がロリなだけで実際にめっちゃ大人なんだけどな」

 ロヴィータちゃん、お前はロリと共存する道を歩むのか。 俺にとってはいいことだ。 生涯ロリっ娘がそばにいることになるんだからな。

 膝からロヴィータちゃんの元へと移ったヴィヴィオは、幼児用の5本指ボールを使いながらロヴィータちゃんの真似事をする。 ロヴィータちゃん真剣そのものである。 いやー絵になるなぁ。

 自身で買ったお茶を飲みながらヴィヴィオとロヴィータちゃんの様子を見ていると、両隣に挟み込むようになのはとフェイトが腰をおろす。

「俊くん楽しんでる? あ、お茶ちょうだい」

「楽しんでるぞー。 はいどうぞ」

「今日は失敗しちゃったね、色々と」

 なのはにお茶を渡しつつフェイトの言葉に頷く。 完全に俺らの大失敗だよ。 ヴィヴィオが漏らして以来じゃないか? ここまで大失態を犯したのって。

「はぁ……ちゃんとママやってるつもりだったんだけど……ついつい自分のことに走っちゃったよ」

「私も。 今日はどうかしてたかも」

「「はぁ……」」

 肩を落として暗い影を落とす二人。 これは結構重症かもしれない。

「あー……そこまで落ち込む必要もないさ。 そりゃ今日は全員暴走してさ、結果的にはヴィヴィオを泣かすことになっちゃったけどよくよく考えてみると今日の失敗はいい失敗だったのかもしれないぞ」

「何言ってるの……可愛い娘が泣く姿みてわたしの心はバラバラ寸前になっちゃったんだよ?」

「私なんて9歳の頃の自分と重ねちゃったよ……」

 相当重症だった。 もうなんか二人の周りだけ負のオーラが半端ない。 はやての方を見ると、はやてははやてでシャマル先生に暗い顔して何かつぶやいてるし。 すんません、シャマル先生そっちは頼みます。 俺はこっちをなんとかしますから。

 落ち込む二人をそっと抱きしめる。 両肩にビクリと体を跳ねる感触が伝わってくる。 さらにぎゅっと抱きしめる。 決して自分から逃げることが出来ないように。

 抱きしめられた二人が上目使いでこちらを見上げている気配を感じながら、俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。 慎重に言葉を選び、二人に優しく伝える。

「よくさ、失敗の先に成功があるって言葉聞くじゃん? あれってさ、失敗をしてから初めて成功が何なのか判明するって意味だと俺は捉えてるんだ。 まぁ、本当は違うかもしれないけど少なくとも俺はそう捉えている。 失敗をしないままの人生も悪くないが、きっとその人生にベストと呼ばれるものは存在しないと思うぜ。 だって判別する材料が存在しないから。 『きっとこうなんだろうな』そんなあやふやな答えを持って進んでいく道ってとっても怖くないか? 俺なら怖い。 怖すぎるな。 だから今回のことは自分達にとっていい経験になったんだと思う。 俺もなのはもフェイトも間違いを犯した、失敗した。 だから今後はその教訓を生かしていけばいいじゃない」

 大丈夫、大丈夫だから。

 そう二人に言い聞かせながら、そして自分に言い聞かせながら。

「って、どうしたんだ二人とも? 下ばっかり見てないでカッコイイこと言った俺を見惚れてもいいんだぞ?」

「「………(いやいやいやっ!? いまは絶対に無理! バレる! 絶対にバレる!)」」

 俯いている二人の頭をぽんぽんと撫でつつ、俺のことを呼んでいるヴィヴィオの元へ行くために腰を上げる。 さて、俺もヴィヴィオと遊ぼうかな! 今日は死ぬまで遊びつくすぞ!

「ひょっとこ、賭けボウリングしようぜ久しぶりね」

「いいぜロヴィータちゃん! じゃあ俺が勝ったら処女頂戴!」

「あたしが勝ったらギロチンな。 ちなみにさっきは全てストライク出したぞ」

 ……今日で本当に死ぬかもしれない。

            ☆

 結局、俺達が家に帰ってきたのは夕方近くになってしまった。 何度かローテーや人数シャッフルしてトーナメントや団体勝ち抜き戦したりと大盛り上がりだったのでしょうがない。 まぁそのせいでヴィヴィオは終盤ねむねむモードでなのはとフェイトと俺を中心に皆で抱っこしたりおんぶしたり。 そのくせ『ヴィヴィオまだかえりたくない』って駄々はこねるし。 まぁ可愛いし、最終的にヴィヴィオがボウリングを好きになってくれたからよかったよかった。

 いまヴィヴィオはソファーの上でガーくんを枕にしてすやすや夢の中に旅立っている最中だ。 疲れちゃったんだろうな、今日はお疲れ様。 夕食までゆっくりおやすみ。

 ヴィヴィオの髪を撫でていると、後ろからなのはが声をかけてきた。

「お疲れ様、俊くん。 はい、紅茶」

「サンキュー。 あれ? フェイトは?」

「あぁ、フェイトちゃんはいま部屋でティアに勉強教えてるよ。 執務官試験は鬼畜だからね。 今日は元々ティアはフェイトちゃんに教えてもらおうと思ってたみたいだし。 皆も察してティア一人にしてくれたしね」

「ティアたん頑張ってるじゃん。 受かるといいな」

「俊くんたん付けはやめようよ、きしょいから。 まぁ受かればいいけど……実際のところは微妙かなぁってのがわたしとフェイトちゃんの意見。 一回じゃ決まらないかもしれないね」

「厳しいな教導官」

「厳しいというか現在の力量を見るとそういった判断を下さなきゃならないんだよぉ。 わたしだってティアには受かってもらいたいよ」

「ということは、あの年で受かったフェイトってとんでもなく凄いんじゃね?」

「とんでもなく凄いんだよ。 わたしもフェイトちゃんもはやてちゃんもね。 はぁ……こんなに長いこと面倒見るのは初めてだから胃がキリキリするよ……」

 ヴィヴィオのソファーに座ったなのはは、ヴィヴィオの髪を撫でながら部下を思いつつ胃をさする。 心優しき教導官は色々と大変だなぁ。

 二人でヴィヴィオを黙ったままわしゃわしゃわしゃわしゃと弄る。

 わしゃわしゃわしゃわしゃすること数十分、流石に俺も夕食の準備をしなきゃならん時間になってきたので席を立つ。

「あ、俊くんちょっとまって。 今日はわたしも一緒に夕食作るよ」

「やめて」

「ふぇ……」

「さぁ一緒に夕食作るぞ! まるで新婚さんみたいだな!」

 流石に一日に二人も泣かれると困る。 それも未来の嫁と娘ときたら精神がもたん。

 台所で一緒に買ったエプロンを装着しながら鼻歌を歌うなのはを見ながら、ふと想像する。

 結婚指輪をはめたなのはと自分が二人揃って台所に立つ姿。 そしてそこに自分達の母校の制服を着たヴィヴィオがガーくんと一緒にやってくる。 そこに指輪をはめて女教師スタイルのフェイトが笑顔でやってくる。 そんな、妄想のような幸せな想像。

「ははっ」

「? 俊くんどうしたの?」

「いや、なんでもないさ」

「あー、怪しい。 なのはさんのセンサーにピンってきたよ!」

 頬を膨らませてこちらを睨みつけるなのは。 可愛く睨みつけるためまったく怖くない。 そんななのはのほっぺたを摘まんで口から空気を吐き出させる。

「ほんと可愛いなぁーなのはは」

「はぐらかさない!」

 そんなやり取りを繰り返しながら夕食の準備をしていく。

『あふ……ぱぱ〜? なのはまま〜?』

「あ、はーい! ここにいるよー!」

 ヴィヴィオの寝ぼけた呼びかけに答えるなのはを横目に思う。

 休日はまだ終わらない。 きっと夕食後も楽しい休日が続くんだろうな。

 それはそれとして、いったいあのスタッフは何者だったんだろうか?






こちさな


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