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A's21.球技大会C



 二回戦、試合は完全に投手戦にもつれ込んでいた。 二回の裏、すずかとフェイトがバッテリーを組んで2年体育専攻科を捻じ伏せる。

『審判! いまボールが分身して飛んできましたよ!?』

『初戦で頭部死球でも受けましたか?』

『審判!? いまボールが直下で落ちてきたんですが!?』

『月村さんは素晴らしいボールを投げるみたいですね』

 体育専攻科の奴らが一打席ごとに審判に抗議してくるも審判はほとんどこんな感じでスルーしてくれている。 そりゃそうだろう、ボールに仕掛けなんてないし、そもそもピッチャーだってお前らが丁度打ちごろのボールを提供するピッチャーなんだからな。

 ただちょっと──キャッチャーが最強クラスの魔導師だけのこと。

 野球部部員のむさくるしい声が空に響く。 これでチェンジなので、ずっと俺の背中で指を這わせていたなのはとアイドルポーズの練習をしているはやて、そして一人だけスカートを抑えて赤面しているアリサを連れてベンチへと戻る。

「おつかれさん、フェイト。 飲み物いる?」

「うん、貰おうかな」

 少し前に金を払ってスポーツドリンクを買ってきてもらったので、それをそのままフェイトに手渡す。

 フェイトは礼を言いながら、こくりこくりとのどを鳴らす。

「はい、ありがと」

 それが当たり前であるかのようにスポーツドリンクを手渡すフェイト。 俺もそれが当たり前かのように渡されたペットボトルを舐めまわす──直前でフェイトに取られる。

「顔がキモい」

「イケメンに向かってなんたる言葉を投げかけるんだ」

「はぁはぁ言いながら私が口をつけた部分に舌チロチロさせて近づく男の顔がキモくないわけないでしょ?」

「大丈夫、浮気はしないって」

「まっていま俊だけ次元の狭間に行かなかった?」

「次元の狭間に迷い込んでもすぐにキミの元に戻ってくるよ」

「ありがとう。 でもこのペットボトルは渡さないからね?」

 差し出す手を振り払うフェイト。 どうも淫乱ボディの癖にこういうシチュエーションには照れるみたいだ。

 それにしても、そう前置きしてフェイトは眉をハの字にして問いかける。

「これって不正というか反則にならないのかなぁ……」

「反則? どこが?」

「だって……もろ魔法使ってるわけだし……。 それに管理局にバレたら怒られるし……」

 この二回戦、俺はフェイトに一つだけ指示を出した。 それはフェイトにとっては至極簡単な行為であり、それでいて完全勝利で二回戦を終わらせることが出来る指示である。

 ようはキャッチャーのフェイトに魔法でボールを操作してもらおうということだ。

 ピッチャーが投げたボールをフェイトが適当に軌道変えてミットにおさめるだけの簡単なお仕事。 ピッチャーは1回ごとに変わるから文句なんていいようもないし、そもそも女子に男子がそんな情けないこと出来るわけがない。

 俺らは1点加えればそれでこの試合は勝ちも同然なわけだ。

「まぁアレだ。 管理局になんか言われたら野球漫画持参して『この漫画にある必殺技を真似しただけです』っていえばなんとかなるだろ。 人が考えたことだ。 人に出来ないわけがない。 それに、あっちもフェイト達のチアガール姿を間近で見られてるんだ。 既に勝ち負けなんてこだわってねえよ」

 チラリと視線を相手チームのベンチと守備に向ける。 全員ともこちらを凝視しつつ前屈みなっていたり地面に頬を擦りつけていたりする。

「……ねぇ俊、これ生徒指導のゴリ先生呼んだほうがいいんじゃない?」

「案ずるな、既に我が下僕がゴリを呼んで待機している。 試合終了と同時にゴリがあいつらを殺す予定だ」

 そう言われてフェイトもゴリの気配に気づいたのか、軽く頷いた。

 フェイトが頷いたその瞬間、二回のラストバッターであるすずかが見逃しの三振でベンチに戻ってくる。

「お疲れすずか。 どんな感じ?」

「うん、俊君なら余裕で打てるかな。 後は綺麗に合わせられるか、かな?」

「タイミングなら太鼓の達人で鍛えてるから自信あるぜ」

 グラブを手に取りマウンドへ。 お次のピッチャーはアリサだな。

 現在のアリサはエロコス着用のため正直チンコにくる。 高校生にも関わらず、ツーサイドアップのあの髪型と金髪が相乗効果を生み出しているんだろうなぁ。 それに──赤面しつつ顔を伏せるアリサに萌え死ぬ。

「俊く〜ん」

「痛い痛いッ!? 眼球押さえないで!? 失明する失明するから!」

 後ろから可愛らしい声と共に可愛くない暗殺術で俺の眼球を潰しにかかるなのは。 あ、なんか瞳の中に浮いてる。 へんな生き物が浮いてるよ、これ。

 パッと離された手から体を逸らし後ろにいるなのはを見る。 チアコス姿で頬を膨らませているなのは、そして横にはバットを持ったまま笑顔でこちらを見つめているはやてが静かに立っていた。 ……なんでバットを振りかぶっていたかは聞かないでおこう。

「アリサちゃん見るの禁止! というか、そもそも俊くんのせいなんだからね。 アリサちゃんがあんなに困ってる姿なんて早々拝めないよ」

「う〜ん……確かにな。 まぁ可愛いからいいんじゃね?」

「あのねぇ……」

「まぁ確かにアリサちゃんがかわええのは賛同するけど──あのボールの軌道はどういいわけするん?」

 はやてがアリサの方向を指さす。 正確にはアリサの投げたボールを指さしていた。 下着が見えてるのにもかかわらず、必死にスカートの端を抑えるものだから足も上げない上に、手も振りかぶらない。 したがって必然的にボールはすぐ下に落ちる──寸前で地を這うようにバッターへ向かい手元で急激にホップしストライクゾーンへ穿つ。

『す、ストライーク!』

 ここからでも分かる、めちゃくちゃ困りながら宣言する野球部、明後日の方向を見る教師、冷や汗を掻くフェイト。

 誰もがおかしいと思いながら、アリサの泣きそうな表情を見ては何も言えずに次の動作に入ろうとする。

「で? どう責任とるん?」

『なによあいつ! さっきとはまるで球筋が違うじゃない! それにボールがあんな動きするわけないでしょ! 不正よ不正!』

 初戦で負けた雑魚がなんかわめいてるし、フォロー入れておくか。

「アリサー! それがさっき言っていたライジングキャノンか! 守君もビックリなホップだな!」

「流石やでアリサちゃん! この回で終わりやなんて勿体ないくらい!」

 はやても俺の作戦にのってくれたのか、声を出して騒ぎ立てる。

『お、おいマジかよ……。 あれが女帝の本気だと……!』

『あんなボール打てるわけねえだろ……』

「そもそもそんなボール投げれるわけないのにな」

「まぁ男なんて可愛い女の子が笑顔向ければすぐに騙されるバカな生き物なんやから、いまのを信じたって別に驚かんよ」

「たまにお前のことが怖くなる。 まさか俺も騙されたりしてないよね?」

 はやてならなんかやりそうで怖い。 そう感じていると、隣に立っていたはやてがそっと俺の胸に頭をこつんと預けた。

「体育倉庫でのアレは本気だからしたんよ……?」

 ……まってくださいはやてさん。 体育倉庫でのアレってなんですか? 俺と貴女は体育倉庫でナニかしましたっけ!?

 困惑する俺をよそに、はやては甘えるように体全体を摺り寄せてくる。 知り合いの中でロリを除いて一番身長が低いはやて。 上から甘えるような潤んだ瞳を向けられて落ちない男なんてまずいない。 俺だって──すぐ横でなのはが爪を右腕に食い込ませていなければ落ちたかもしれない。

「なぁ俊? 今日は打ち上げわたしの家にきいへん? 手料理ごちそうしようとおもってるんやけど」

「ふんすっ!」

 ぐいっと横にいたなのはに引っ張られる。 その拍子にはやてと密着させていた体が離れる。 胸に当たっていたはやての感触が途切れ、代わりにいつもの優しい感触が体全体に伝わってくる。

「残念でしたー! 今日の打ち上げは翠屋でやるもんねー!」

 ふんすなのはがはやてにあっかんべーをする。

「ふーん、まぁ料理が出来ないなのはちゃんは場所を提供するくらいしか出来ないもんなぁ」

「「……」」

 なのはとはやてが互いに暗殺者の瞳を向ける。 ヤバイよヤバイよ、こいつらが本気でバトると学校壊れるよこれ。

 龍虎があいまみえるその間際、審判からの交代が告げられた。 どうやらフェイトが空振り三振で3人とも終わらせてくれたらしい。

 ほっと胸を撫で下ろしながらベンチへと戻る。 いや、二人を宥めながらベンチへと戻る。

 右隣にはやて、左隣にはなのは。 そんな状況の中、フェイトが満点の笑顔で俺の元へとやってくる。

「俊―みてくれたー? 私頑張ったよー!」

「おーうフェイト! ナイスキャッチ!」

 手を振りながらフェイトは俺の膝の上に腰を下ろした。 しかも正面で正座位の体勢で。

 なのはとはやてが睨みあいをしているこの場。

 それが当たり前かのように腰を下ろしたフェイトは、

「ねぇねぇ、二回戦終わったらお昼ご飯だよね? 今日は二人でのんびり食べない?」

 なぁんて可愛らしいことを言ってくる……ッ!

「ちょっとフェイトちゃん! いま俊くんはわたしが──」

「あ、なのは。 打席が回ってきたよ?」

「ふぇ? わわっ! ほんとだ! はやくいかないと!」

 わたわたと慌てながら打席に向かうなのは。 一礼した後、打席へと入っていった。

 そしてすぐに帰ってきた。 もうなんというか……なんていえばいいんだろうか……。

           ☆

 試合はなんの面白みもなく4回の俺のホームランで決した。 その後はフェイト、なのはの
絶対に打たれない投球で、終わってみれば完全試合という結果で2回戦を終えた。 雑魚共には可哀想なことをしたけど、次の試合のためだ、許せ。

 そしてそのまま昼食へ。

「ったく! 今度あんなことさせたら首の骨捻じ曲げるわよ!」

「まぁまぁアリサちゃん、アリサちゃんのチアコス評判よかったんだしそこまで怒らなくても……。 あ、写真もらったけどいる?」

「いらないわよそんなの! ウキー!」

 体操着姿のアリサが烈火のごとく怒る。 顔を赤くして、コックが愛情いっぱいで作ってくれた弁当(重箱)を食べながら箸を振り回す。

「あぶな!? 箸を振り回すなよ危ないなぁ!」

「うるさいうるさいうるさーい!」

 女帝アリサ様ご乱心である。

 現在俺達は二回戦を終えて昼食タイム。 レジャーシートを広げて、なのは・フェイト・はやて・アリサ・すずか・そして俺の6人で弁当を広げながらのんびり昼食を満喫中である。 中央にははやてが多く作りすぎたらしい弁当箱も置いてある。 なのはとフェイトが強制的に置かせたのだが、これ思いっきりハートマークが描かれてるんだよなぁ……。

「それにしても相変わらずはやての弁当はおいしそうだよなぁ。 それ骨付き鶏肉のさっぱり煮?」

「そうやでー、お酢をきかせてあるから運動した後に丁度ええし。 一個たべる?」

 そういいながら、自分の箸で骨付き鶏肉をつまんで俺の口元まで持っていく。

「はい、あ〜ん」

 自分の小さな口を開けながら促す。 俺がそれにあらがえるはずもなく、はやての口の動きと連動するように口を開け、そこにはやては優しく骨付き鶏肉をいれた。

 もぐもぐと咀嚼する。 醤油をベースにした味付けに、思わず白飯をかきこみたくなる。

「うまい! めちゃくちゃうまいなこれ!」

「せやろ〜! これヴィータも好きなんよ! あの可愛らしい口でもぐもぐと食べるんよ!」

「確かにこれはロヴィータちゃんもばくばく食うわな……」

 うんうんと思わず頷く。 だってそれほどうまいもん。

「あ、そうや! 明日あたりわたしの家に泊まりにきいへん? 二人でまたご飯作りながらまったり──」

「俊は明日私の家に泊まるんだよね? ずっと前からその話をしてたんだし」

 はやての話を遮るような形でフェイトが間に割り込んでくる。 フェイトの今日の弁当はリンディさんが作った愛母弁当だ。 ちなみにリンディさんの弁当はフェイトが作っている。 もうリンディさん仕事してないのになぁ。

「あー確かにそれ言ってたな。 二人でゲームでも買って徹夜でクリアしようって話だったよな」

「そうそう! ホラーゲームにしよっかって話しをしてて」

「どのホラーゲームにするかを決めあぐねてたんだよなぁ」

 頭をぽりぽり掻きながら、どうしたもんかと考える。 はやてとの料理作りも魅力だけど、フェイトとは前から約束してるからなぁ。

「すまんはやて。 料理は休日にでもゆっくり泊まりでしよう。 そのほうがお互いいいと思うし」

 両手を合わせてはやてに謝る。

「あっ……そうやな、そのほうが夜存分にできるし。 ただ、流石に子どもは卒業してからがお互いにええとおもうんよ」

「まって! いま一足飛びに跳んでいった! 驚くべきものが飛んでいった!?」

 冗談だと分かっているけど目が笑ってない分怖い。

 球技大会終了後の予定を続々と確認していると、ふいになのはの顔が視界にはいった。 フグのように頬を膨らませこちらを、む〜っと睨んでいた。 手には俺が作った弁当。 箸はネコのイラストが描かれており、レジャーシートの一番端に座っていた。

 何故だろう。 怒っているんだけど、すごく寂しがっている……ような気がする。 まるでいつも構ってもらえていたネコが急に構ってもらえなくなりスネたみたいな、そんな印象をなのはから感じた。 直感で分かる。 もう10年以上も一緒にいるのだから。

 自然と体が動く。 腰を浮かせ、なのはの横に歩み寄り座る。

「初戦と二回戦よく頑張ったな」

 頭を撫でると、為すがままの状態になるなのは。 目を細めてくすぐったそうな表情を見せる。

「でもわたしフェイトちゃんやはやてちゃんみたいに活躍できなかったよ?」

「いやいや、それでいいんだよ。 エースにしょっぱなから活躍されても困るしな」

 なのははたまに無邪気で無防備に男女を虜にする。 いまがその状態だ。 さっきまで喧嘩していたはやてやフェイト、暴れていたアリサにそれを抑え込んでいたすずかだって、いまのなのはの状態を見てはその行動を停止させていた。

 女の人生はベリーEasyとはなのはのためにある言葉だ。

 俺にエース扱いされたなのはは顔をほころばせて喜ぶ。

「へへっほんと? 嬉しいなぁ」

「ふっ、相変わらず扱いやすい女だな」

「まって俊くん聞こえてるから!? せめてわたしのいない場所でそのセリフは言ってよ!?」

 表情をころころと変えるなのはの仕草に自然と笑みがこぼれる。

「まぁでも確かになのははもうちょっと頑張らないとねー。 このままじゃ気になるあいつにいい恰好魅せられないまま大会が終わっちゃうわよ?」

「あぅ……ひどいよアリサちゃん。 だってなのは運動苦手なんだもん……」

 両手をもじもじさせてしゅんとするなのは。

 そんななのはの仕草は可愛いと思うがちょっとまて、

「誰なんだ!? なのはは俺と一生離れないって約束したじゃないか!? 浮気か!? 浮気なのか!?」

 誰!! 俺のなのはたんをたぶらかしているボケナスは誰なんだ! ぶっ殺してやる!

「落ち着いて俊くん怖い怖い!? 顔が般若になってるから! いまにも刺殺しそうな表情でわたしに詰め寄るのはやめて!?」

「あぁっ! 体が滑って顔が胸の谷間に!」

 ──谷間がなかった

「いや……その……ごめん。 ついフェイトやはやてと同じことをしたばっかりに……。 まぁなんだ……揉めば解決するから」

「離してフェイトちゃんッ! 鼻がヴォルデモートになるまで殴るからッ!」

 怒りがヴォルケーノしているなのはをフェイトが後ろから羽交い絞めでとめる。

 百合妄想がはかどるぜ!

 なのはの暴れっぷりを安全地帯(はやての後ろ)でスポドリ片手ににやにや見てた俺の肩を誰かが叩く。 優しく触れるように叩かれたその手に合わせて後ろを振り返ると、そこには思わぬ人物がにこにこと孫を見るような表情で立っていた。

「こんにちは上矢君。 ちょっとよろしいですか?」

 俺の名前を呼んだのは、我らが校長先生その人であった。

           ☆

 校長先生に連れられ辿り着いた場所は体育館裏。 カーネルみたいでサンダースな校長先生は誰もいないことを確認した後、俺に驚くべき内容を話し始めた。

「その年でアナル開発ですか……」

「上矢君が私の話を聞いてないことはよくわかりました」

 ごくりと唾を飲む俺とは対照的に、校長先生は足軽兵を倒す武将のように軽くボケを流した。

「いやまぁちょっと校長先生の話した内容があまりにもバカバカしくて……。 それほんとなんですか?」

「業者が気持ち悪い笑みで言ってきたのだから間違いないでしょう。 はぁ……今後学校としてはあの業者と縁を切ろうと考えています」

「それがいいと思いますよ。 なんせ──学校行事の賞品のチケットにラブホテルを強要させるようなバカな業者なんですから」

 なんてバカバカしい話なんだろうか。 球技大会のMVPに選ばれたら夢の国の招待券がもらえるのは全校生が知っているところ。 しかしその夢の国の招待券の実態は夜遅くまで遊ばせて、あちら側が勝手に予約しているラブホテルへゴールイン。 そんな内容だ。

「大方、うちを毛嫌いしている周辺の学校の仕業でしょうね。 うちは運動においても文化活動においても優秀な人材が揃っているのですべての賞を総舐め状態ですから。 それに生徒の容姿レベルも高いのも反感を買っているのでしょう」

「まぁよくあることです。 少子化が進んでいるこの現在、どの学校も生徒獲得のために必死になりますからね。 ただ──そのために生徒を傷つけるのであれば私も黙ってはいません。 とにかく、このことは私の方で片をつけたいと思っています。 そこで上矢君には──」

「さっさとMVPを取って夢の国のチケットを手に入れろってことですよね」

 校長先生の言葉を遮る。

「はい、よくできました。 それでこそ私のお気に入りの生徒です」

「どーも。 校長先生には幾度となく退学を取り下げてもらってますからね。 それくらいお安い御用です」

 いつもとなんら変わらない、校長先生のお願いだ。

 キンコンカンコンと学校の鐘が鳴る。 昼食終了の合図だ。

「んじゃ俺はもう行きますね」

 一礼した後、手を振ってみながまつテントへと向かう。

 その背後、校長先生は声をかける。

「上矢君、君の退学に待ったをかけるのは何も私だけではありませんよ?」

 私よりもあなたのことを思っている先生が近くにいるんですよ?

 後ろからかける校長先生の言葉に、俺は誰だか理解できないまま曖昧に頷いた。

           ☆

 クラスの待機所に行くとゴリが仁王立ちしていた。

「あ、すいません。 ゴリラが学校内に侵入してきたので射殺してほしいのですが」

「俺なんてバカが学校にいるせいで毎日撲殺したい気分に駆られて困ってる」

「ぶさいく天使ー、顔面事故だよゴリラちゃん♪」

「ぬうぅぅぅぅおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 こいつは本気で殺しにくるから焦る。

 地面にめり込んでいる木刀を見ながら早く管理局に逮捕されないかと切に願う。

「ほんでどうしたんすかゴリ」

「どうしてお前は年上を敬えないんだ。 まぁいいか。 単刀直入に述べる。 上矢、お前次の対戦相手だった3年野球部組と3年のこのクラスに何かしたか?」

 ゴリが手に持っていた対戦表を見せながら話しかけてくる。

 ふむふむこの野球部チームはハニトラで強請をしようとしたチームか。

 目線を自軍の男衆に向ける。

 親指を立てる男衆。 成程、やはりあいつらはエロ猿だったか。
 
 ほんでこっちは俺らでボコる予定だったチームか。

 これも……成程、ついでにやっといたか。 お前らアサシンに格上げしといてやろう。

 まぁそれはそれとして、ゴリが聞いたのは俺が何かしたかってことだよな。 うんうん、それなら──

「何もしてません」

「嘘を吐くな」

 どうしてこいつは生徒を信じるという教師として当たり前のことが出来ないんだッ……!

「一年の頃からずっとお前を見てきたんだ。 お前が嘘をついてるかどうかなんて一目でわかる」

『まさかのゴミ×ゴリかよ……』

『薄い本がゲロまみれになるな……』

「「いま喋った奴前に出ろ」」

 顔面交通事故の刑に処する。

 ゴリは木刀を、俺はバットを肩に担ぐ。

 そこに体育服に着替え終えたなのは達5人娘が笑顔を向けながらゴリを止めにきた。

「ま、まぁまぁ先生! 俊くんはわたし達と一緒に試合をしてたわけですし、皆も一生懸命応援してくれてたので、先生が思っているようなことはないとおもうんですけど〜」

 なのはが冷や汗だらだらで管理局で鍛えた営業スマイルをゴリに向ける。 後ろにいる他の4人も営業スマイルでうんうんと頷いた。

「ぬッ、そうだったのか……すまない高町。 まぁ確かにお前達が交代交代でピッチャーをやって頑張ってたのは俺も確認していたしな。 まぁこの2チームとも腹痛が原因なのだからお前らがどうにか出来ることでもないか」

 ……あれ? 先生、なんか俺のときと態度が違いすぎませんか?

「そうやで先生! もうせっかちなんやから〜! ほら、先生達はわたし達と違って3回戦セミファイナルがあるんからこんな所で油売ってる場合やないで!」

「お、おう! そうだったな! すまんすまん、それじゃちょっと行ってくるか! お前らも決勝でな!」

『ういーっす』

 ゴリは先ほどとは打って変わった表情でこの場を後にした。

「なんだろう、この理不尽感」

 最高の結果に終わったはずなのに、なんかもやもやする。

「まぁあんたとあたし達とじゃ先生の対応も違ってくるわよ」

「あのエロゴリラめ、決勝で殺してやる。 というかお前らよく2チームともしとめたな」

『まぁ決勝はあのゴリだしな』

『出来るだけ力は温存させたいし、何より5人娘が俺らのエロ本のために頑張ってくれてるんだから、これぐらいはしないとな』

「ちょっとまって皆、わたし達皆のえっちな本のために頑張ってるわけじゃないからね!?」

『フォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

「えっ!? なにその盛り上がり!? いま盛り上がる要素なかったよね!?」

 きっとなのはのえっちな本の言い方に萌えたんだろうな。 なんせ俺の股間も盛り上がったんだから。

 しかしまぁ、これはいまの俺にとっては嬉しい誤算であることは変わりない。 戦力を温存し、最終兵器を見せることなく決勝までこぎつけることが出来たのだから。 よし、こちら側は最高の形で決勝を迎えることが出来る。 後はそうだなぁ……あっちの戦力でも確認しとくか。

「よーし、皆で教師チームをバカにしにいくぞー!」

『おー!』

 意気揚々とクラス全員で教師チームの試合を観戦に行くことに。 負けるつもりはないが、少しでも試合を見て勝率を上げておきたいからな。

 教師チームvs2年チーム

 ピッチャー・ゴリ バット6本を折り完全試合

 俺達はフリスビーで遊び始めた。




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