01.俺、無職



「時というものは残酷なものである。 9歳でロリロリでツインテールで天使のような幼馴染も昔は“魔法少女”といわれみんなに可愛がられたものだ。 バリアジャケットだって小学校の制服を参考にしたらしく9歳という年齢も相まってそれはそれは可愛らしいものであった。 しかしどうだろう……10年の歳月が過ぎ、その幼馴染も随分とかわってしまった。 あの純粋無垢だった幼馴染はいまは19歳にもなるのにいまだに“少女”と信じて疑わないらしい。 本当に俺と3年間高校に通ったのかと疑いたくなってくるほどである。 髪型にしてもそうだ、いつもはサイドテールにしているのにここぞというときにはツインテール。 確かにツインテールはかなりの萌えポイントであるがいかがなものかと思う。 極めつけはあのバリアジャケットである。 あれっていまだに小学校の頃の制服をモデルにしているみたいだし正直コスプレにしかみえない。 いいのか、管理局。 おまえらのエースこれでいいのか?」
「ニートの人には言われたくないんだけど……」

 一人さびしく家でゲームをしながら、幼馴染のことについて考えているとどうやら口から出ていたらしくたったいましがた帰ってきたであろう高町なのはに聞こえてしまった。 ここ、俺の部屋なんだけど……

「というか、この家は私とフェイトちゃんが一緒に借りたんだからね。 あまり変なことしないでね?」
「変なことって、なのはやフェイトの下着を洗濯すると見せかけて実は俺の部屋に隠してるとかのこと?」
「ちょっとまって、いまの議題について3時間ほど話し合おう」
「オーライオーライ、まずはその魔力弾を消してくれ」

 ちょっとした冗談のつもりだったのだが、意外になのはは怒ってきた。

「もう……そういう冗談は禁止だって言ったでしょ? まったく、高校を卒業してもかわらないんだから……」
「19歳にもなっていまだにいちごパンツ履こうとする奴に言われたくないよ」
「ちょっとなんで知ってるのッ!?」

 なんかすんごい勢いでこちらに近寄りその情報を流したのは誰かと問い詰めてくる。 地味に首が絞まって痛いのですが……。 それにいちごパンツの件なら桃子さんが嬉しそうに話してましたよ。

 みなさんお察しかと思いますか、この可愛らしい女性、高町なのはと俺は幼馴染である。 俺の親となのはの親──士郎さんと桃子さんがとても仲がよかったのである。 その関係上、小さい頃から二人でよく遊んだり、なのはで遊んだりしていていまもそういった関係が続いている。

「そういえばなのは、何しに来たんだ? 今日は19時に帰ってくるとメールがきたのを覚えているんですが」
「うん、その予定だったんだけどちょっと帰りが遅くなりそうだからそれを伝えようと思って」
「そんなことでここまで? あいかわらずやることがすげえな。 え〜っと、帰りが遅くなるっていうとあれか、はやてが設立した部隊のこと?」
「そうそう、機動六課だよ。 ようやくスタートしたし少しの間だけバタバタしそうなんだよな〜」
「いつもバタバタしてるじゃん。 俺からバタなのなんて愛称で呼ばれてるし」
「うるさい。 まあ、そういうことからだからちょっとの間だけ遅い帰りが続きそうなんだ。 ごめんね! 夕食用意しようとしてたんでしょ?」
「べ、べつにあんたたちのために作ろうなんて考えてないんだからねッ!?」

 申し訳なさそうな顔でなのはが謝ってくるもんだからとりあえずツンデレ系で返してみることにした。 恐ろしいほどに無表情でこちらを見返している。 ゾクゾクするぜ……!

「まあ、事情はわかったよ。 ほんじゃ、夜に食べても次の朝に胃がもたれないような夜食置いておくから適当にフェイトと食べておいてくれ」
「ふふっ、ありがと。 それじゃ私行ってくるね」
「あいよー」

 なんだかわからないが笑顔でお礼を言われたあと、なのはは手を振りながら俺の部屋をあとにした。 そして丁度、玄関が開いて閉じられる音を確認する。 さてさて……スーパーにでもいって食材買ってこようかな。 俺の分は適当にカップ麺でいいや。 一人分って作るとなるとどうもやる気が沸いてこないんだよな。

 10畳ほどのフローリング部屋に、ベットや本棚、クローゼット、机、パソコン、テレビなどの生活感あふれるものが並んでいる。 クローゼットから適当に服を着てサイフをジーンズのポケットに突っこんでから部屋を出た。

「あ、そうだ」

 部屋を出たところでとあることを思い出して戻る。 机に置いてある写真立ての中で静かに微笑んでいる女の子に向かって優しく挨拶をした。

「行ってくるぜ、ミクちゃん」

 ミクちゃん、無職だけど頑張るからね




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