06.おっさんで遊ぼう
「さて、俺の予想だと今頃なのはが電凸してきて留守電と会話したあげくノリツッコミをしている頃だと思う」
なんでわかるかって? だってなのはだもん。 バタなのなめんなよ、小さいころなんか手足バタバタさせてダダこねてたんだからな。 そのたびにアメ玉あげて黙らせてたけど。
昔はね、愛玩動物みたいで可愛かったんだよ? いや、いまも可愛いけどさ俺のこと殴ってくるもん。
「まあ、それを見越して俺は携帯を置いてきたから問題ない。 帰ったら怒られそうだけど俺のトークスキルでなんとかしてみよう。 まずは遊びにきたんだから精一杯遊ぶぞ」
少し大きな広場にきていた。 中央には噴水、そこから東にちょっといくと大きな芝生の遊び場があって、噴水の近くには他より一段高いへんな面積がある。 いまは大学生のあんちゃんたちがダンスの練習中である。
俺はそれらを横目にみながら持ってきたサッカボールでリフティングを開始する。 コ○ンくんにも負けないぞ!
「しかしこのままリフティングというのも悲しいものだから、ここはひとつゲームをしようと思う。 ストラックアウトというものをご存じだろうか? 9つのマスを野球ボールやサッカーボールを使ってぶち抜くゲームである。 一昔前に流行ったような気がする」
かくいう俺も中学校時代にしたものだ。 いまだ6枚抜きの記録は破られていないらしい。 いまの俺なら9枚抜きいけそうな気がするぜ。
しかし残念ながらここにはマスとなるものが一切存在しない……。 いったいどうしたものか。
「しょうがない、この前を通った人にぶち当てよう」
俺の餌食になった者は運がなかったということだ。 顔がバレないようにひょっとこのお面もつけることに。
一人目……女子高生
「推定膝丈20cm、生足をいかんなく見せており寄せてあげるブラを着用しているな」
俺の透け視力により基本的な情報を得る。 高校生というものは一生のうちで一番のブランド品であり人生の中でも輝けるときだと思っている。 現役という肩書が大事なのだ。 高校を卒業してしまうとどうしてもコスプレにしか見えなくなる。
そう……なのはやフェイトのように。
女子高生とはいわば熟したリンゴなのだ。 アウトかセーフかギリギリのラインにいるからこそ、輝きを放つ。 それはまさしく線香花火のごとく、消え去る一瞬を華やかに彩るのだ。
「こう書くとなのはやフェイト、はやてたちがババアだと言っているみたいに感じるがそんなことはない。 線香花火が終わったあとにやってくるのが打ち上げ花火だからである。 いろんな人と出会い、好きな人と結婚し子どもを産み、育児をして子どもを成人になるまで責任をもって育て、その子どもの孫を抱き、孫の成長をめじりにシワを寄せながら見守り孫の成人を見届ける。 それが終わったあとに彼岸の川で待っているであろう夫の元へと逝く。 お別れのときには沢山の人が涙を惜しんで泣くまいと上をみる。 それはまさしく打ち上げ花火と同じじゃないか」
此処になのは達がいたのなら感涙しながら俺に抱きついてくるはずだ。 残念なことをした、その一瞬ならば胸を揉みしだくことができたというのに。 あ、ちなみにフェイトの胸ね。
「しかしながらさすがに女子高生に向かってサッカーボールをぶつけるのはためらわれる。 もっとこう……ぶつけても怒られなさそうな人はいないものか。 ん? あそこにいるのおっさんじゃね? いい的発見したぜ」
女子高生より右におっさんを発見した。 なにやら書類を手に持っているぞ。
いや、まてよ? おっさんって管理局員だよな、日本でいう警察官みたいなものだろ? そのおっさんに向かってぶつけるということは、すなわち現行犯逮捕につながってしまうのではないだろうか。
ただでさえブラックリストにのっている俺だ。 こんなしょうもないことで捕まるのはいただけない。 それにおっさんには何かとお世話になっているはずだ、そんなおっさんにサッカーボールをぶつけることなんてできるのだろうか?
「それでも──男にはやらなければいけないときがある。 こんなことしたくないけど、食らえおっさん! 死にさらせ!!」
『うおッ!? なんだいきなりボールが──』
「ゴオオォオオオオォォオオオオオオオオォォル!!」
全力で蹴ったボールは吸い込まれるようにおっさんの顔面へと熱いキスをしにいった。 おあついねえお二人さん。 ひゅーひゅー
俺はそのままダンス練習をしていた大学生の中に突っこんでいく
「ついに全国制覇だぞ、おまえら!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
「次は国際大会だ! てめえら、気合は十分かッ!!」
『よっしゃあああああああああああああ!!』
「おい! そこの中学生、胴上げするからちょっとこい!」
「えっ!?」
ノリのいい大学生に捕まって胴上げされる中学生。 なんか忘れているような気がするがいまはこの幸せな気分を味わっておこう
「みんなありがとう! みんなのおかげで俺はここまでこれた! 本当、おまえらは最高の仲間だったよ!」
「……そうかそうか、よかったな最高の仲間ができて。 大切にしろよ?」
「うん!」
「いい返事だ。 ところで、なにか重要なことを忘れている気はしないか?」
「いや全然!」
「そうかそうか、それなら教えてやろう。 ──貴様の現行犯逮捕の瞬間だ、ひょっとこ!」
振り向くと鼻血を垂らしながら怒りのあまり角が生えたおっさんが立っていた。 おっさんいつの間に人間の皮を脱ぎ捨てたん?
「ごめんなおっさん、足が滑って」
「嘘つけ! 貴様のセリフは聞こえとったわぁ!!」
「きゃあああああああああ! おっさんが俺のケツ穴を狙ってくるううううううううううううううう!!」
「逃げながらお前は何言ってるんだっ!?」
そこからはじまるおっさんと俺の追いかけっこ。 残念だったな、おっさん。 これでも俺は50m走で5.7を叩きだした男だぜ?
「待てといっておるだろうがああああああああッ!!」
アメンボ走法で走ってくるおっさんに恐怖を感じた瞬間であった。
ヘ( `Д)ノ
≡ ( ┐ノ
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