07.MとMと ときどきSと



「まさかおっさんがあそこまで速いとは思わなかった。 鼻血垂らしながら全速力で走るから余計に怖かったぜ」

 おっさんと嬉しくない青春の汗を流した俺は帰宅早々シャワーを浴びながら先ほどのことをふりかえる。 道行く人が振り返ってたけどこれからのおっさんの信用が下がらないことを祈る。

「さて、シャワーを浴びましたので夕食の用意でもしますか。 今日の夕食はなのはが好きなものにします。 でないと俺の頭からザクロが飛び出してしまうからです。 ごめんねフェイト。 絶対フェイトが好きなものも近日中に作るから」

 案の定、携帯をみると着信が入っておりなのはのノリツッコミがはいっていた。 これはパソコンのなのは専用フォルダにいれておくことにしよう。

 それはともかくまずは夕食作りである。 愛用の地底人エプロンをつけ台所へ

「今日は薄切り肉のゆば巻きとわんこソバと煮物でいこうと思います。 では助手のミクくん、説明を」

「は〜い! まずは材料の説明です! ゆば巻きは豚でもいいのですが折角なので牛の薄切りを使用します。 お酒とお塩に包むための大葉や一緒に食べるためのカイワレ大根を用意します。 あ、べつにカイワレはなくてもいいです。 そしてちょっとしたスパイスとして黒胡椒やわさびをいれるのもありですね。 湯葉巻きはお湯でもしゃぶしゃぶできるのですが、今回は豆乳でしゃぶしゃぶしましょう! 豆乳は美肌効果やダイエットにもいいそうです、それと生活習慣病の予防にもなるみたいですね。 ミクには関係ないですけど!」

「はっはーミクちゃん。 そんなことしなくても君は十分可愛いぜ」

「そ、そんなっ! て、照れちゃいます……」

 もちろん俺の一人芝居である。 あまり料理を作っている最中に喋るのはよろしくないけど勝手に口が動くのだからしょうがない。

「さて、同時並行で煮物もやっていきますが、シンプルに大根だけにしときましょう。 いっそのことふろふき大根にするのもありだな」

 ふろふき大根にするためには米のとぎ汁が必要なんだけどたっぷりの水と少しのお米で代用しちゃおう。

「わんこソバは二人が帰ってきてから作るとして、ゆば巻きも二人が帰ってきてから最終段階にはいればいいからもうやることはないな。 久しぶりに靴磨きでもしよう」

たしか革靴が汚れていたようなきもするし

「というわけで玄関である。 とくになにもない玄関なのだが、靴箱の後ろに年上系エロ本が挟まっていたりする。 正直俺も取ることができなくて焦っているのが現状だ」

 さっさと読んでおけばよかった。

 しゅこしゅこと革靴を磨きながら、ゲームの攻略法を考えていると外からふたり分の話し声が聞こえてくる。 どうやら帰ってきたようだ。

「ただいまー」

「おかえりんこ」

「ただいまん──あっ! 〜〜〜!!」

 フェイトが顔を赤くしながらなのはの胸に顔をうずめる。 フェイト、埋める人選間違えてるぞ。 あまりの可愛さに写メってしまう。 今週の待ち受けにしよう

「あ、そういえばなのは、俺の愛情弁当どうだった?」

「ごめん、嫌がらせしか感じなかったんだけど……、それより今度したらほんとうに怒っちゃうからね!」

「それじゃ明日はもっと愛情こめて縦一列にちくわ並べていくわ」

「人の話聞いてたっ!?」

「ごめん、フェイトの胸見てた。 ほんとムッチリしてるよな」

 見かねたなのはが手に持ったバックで顔面を叩いてきた

「スーハースーハー、いい匂いだ」

「フェイトちゃん! リセッシュ取って!!」

「うん!」

「ちょっ!? なのはかけるとこ間違ってる! 俺じゃなくてバックだろ、そういうときは!?」

 俺の存在をリセットしたいとでもいうのかこいつは。

「わ〜! なのはが好きな料理だ! やったあ!」

「へ、へ〜! あんた、この料理好きだったんだ。 わ、わたしはそんなの知らなかったし……ほ、ほんとうよ! し、知ってたら……も、もっと早くに作ってたわよ……」

「だ、大丈夫? 無理しなくていいんだよ?」

「……うん、僕大丈夫」

 フェイトの優しさが心にくる

「ほらほら! 二人とも早く食べようよ!」

「うん、そうだね!」

「それじゃ手を合わせて、いただきまーす」

「「いただきまーす!」」

 みんなでしゃぶしゃぶすることに。

「そういえば、この豆乳にはなにか隠し味いれた?」

「俺の分泌液」

「「……」」

「いや、冗談だから二人とも咽喉に指つっこむのはやめてくれ」

 おまえら管理局の看板娘なんだろ。

 それから今日一日のお互いのことを報告することに

「絶対おっさんは本部でも活躍できると思うんだ。 犯罪者とかバッタバッタと捕まえれるぞ」

「だから犯罪者の君を毎日捕まえてるんじゃないの?」

「失敬な、まだ予備軍だよ」

「ねえなのは。 私はインタビューでるときなんていえばいいのかな?」

「とりあえず友達未満他人以上の関係ということにしておこうよ」

「なんで俺が報道されること前提で話し合いをしようとするの?」

 報道される奴は俺から言わせれば二流に決まってんだろ。 そんなヘマ犯すものか

「それにしても六課って明らかな人選ミスじゃね?」

「君は人生ミスだけどね」

「そのドヤ顔やめろ」

 湯葉巻きを食べながらキリッとこちらをみてくるなのは。 ちょっと誇らしそうにしてるけど、いま俺の人生否定したということわかってるのか?

「それにしても今日は疲れたからお風呂入ってもう寝ようかなー」

「そうだね、私もちょっと疲れたかも」

「それじゃ俺は二人のベッド温めてくる」

 席を立ったところで二人に袖をつかまれそのまま背負い投げさせる。 疲れはどこいったんだ。

「後片付け、お願いね♪」

「まかせろ、舌で丁寧に舐めとるから」

 グシャ

「なのはが履いているスリッパなら舐めればなのは味がするかもしれない……」

「フェイトちゃん! 変態がいるっ!?」

「こっちに振ってこないでよ!?」

 そんなに力いっぱい手で払わなくてもいいじゃないか。

「まあ、いつまでもこんな恰好だと近所に俺となのはの関係がバレてしまうのでそろそろ足をおろしてくれ」

「どういった関係なの?」

「M・Mプレイをする関係かな」

「それ成り立たないよねっ!?」

「ちなみにフェイトはSね。 自慢のザンバー俺のスイカバーを叩いてくるんだ」

「フェイトちゃん……」

「ちょっとまってっ!? いまの話信じる要素どこにあるのっ!?」

 フェイトがムキーってなってる間になのはが足を引っ込める。 パンツみえた! パンツみえた! 速報! なのはの今日のパンツは水玉!

「それじゃ風呂はいっておいで。 俺は片付けしてベッドの周辺に盗撮カメラ仕掛けておくから」

「片付けだけお願いね」

「ま……まかしとけ……」

「返事頼りなさすぎだよっ!?」

 一歩ごとに後ろを振り返る二人に溜息を吐きながら俺は台所へと向かう

「さて、箸を舐める作業にはいるかな」

 これも立派な後片付けだと思っている。




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