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10.白パン大好き スカリエッティ



 仕事が終わり就寝前ののんびりタイムをなのはとフェイトは女性雑誌を眺めながら楽しんでいた。 これでも花も恥じらう19歳。 いろいろと思うところがあるのだろう。

「あ、なのはの恋人はすぐ近くにいるかもだってよ?」

「フェイトちゃんこそ、ずっと傍にいた人だってよ?」

「けど私たちの近くにそんな人いたっけ?」

 フェイトの疑問によってなのはは考える。 すぐに浮かんできたのは神様が人類に苦しみを与えるために生み出した存在であろうひょっとこのお面を被った男だった──のだが

「うん、ないよね」

「そもそもあれって人間なのかな?」

「分類上人間に入るかな。 残念ながら」

 ずっと傍にいた……というのもあるのかもしれないが、彼は恋愛対象にはいらないのではないだろうか。 だって無職だし、頭おかしいし。

「けど意外に高校のときとかモテてたよね。 バレンタインのチョコとか女子全員から貰ったって聞いたよ?」

「そのうちの9割が至近距離からチロルチョコ投げつけられたという結果だけどね。 あのときは別の意味で鼻血だしてたよ」

「残りの1割は?」

「遠くからアンダースローでチョコパイ投げられてたよ」

「……それバレンタインを口実に日頃の恨みを晴らしてるだけなんじゃないのかな?」

 少しだけ不憫に思うフェイト。

 トントントンッ

 そんなとき、2階から彼が降りてくる音がした。 あとは就寝だけであるがまたゲームでもするのだろうか?

「ご機嫌な蝶になったから、きらめく風にのって彼女の元へといってくる」

「はいはい、捕まらない恰好でお願いね」

「まかせろ」

 なのはは六課の猛攻撃によって疲弊しており、うんざりした顔で手を振った。

 彼も19歳だ、さすがにへんな恰好で深夜徘徊なんてしないだろう。 そう思って振り向いた先に文字通り蝶がいた。 黒の触覚に黒い|翅《はね》。 鱗粉を真似ているのだろうかところどころラメがはいっている。 口には曲げたストローを咥え、足には黒のニーソ。

 どっからどう見ても360°全方位で変態である。

「なんで自信満々に返事したのっ!? 捕まる気満々じゃんっ!? というかそれ私のニーソだよねっ!?」

「なのはだけだと不公平だと思ってフェイトの髪を結ぶリボンで蝶ネクタイを作ってみました。 蝶だけに」

「そういう問題じゃないからっ! いまので一気に不機嫌になったよっ!」

「それお母さんに買ってもらったのにぃ……。 ひどいよ! あんまりだよ! もう捨てるしかなくなったじゃないのっ!」

「そこまでいくのっ!?」

 流石のひょっとこも驚きのあまり声を上げる。 フェイトは泣き目でなのはによしよしされている。

「もういいもん! 二人が構ってくれないから遊びにいくもん! このペチャパイ!」

「それ個人攻撃してるよね!? 二人じゃなくて一人に言ってるよねっ!? というかペチャパイじゃないもん! ちゃんとあるもん!」

「つ、捕まっても引き取りにきてあげないんだからねっ!!」

「はっはー!! そこらの二流と一緒にするではない!」

 そういってひょっとこは勢いよく玄関から飛び出したのだった。



           ☆



「とはいったもののすることはないんだよな、これが」

 深夜の道を一人で歩く。 歩くたびに翅がヒラヒラ、鱗粉パラパラ、触覚フヨフヨ、うざいことこの上ない。

「ん? あそこにいるのは誰だ?」

 ひょっとこからみた真正面の家の周辺で黒コートを着て天狗のお面を被った男がウロウロとしていた。 じきにその男は家へと侵入し、白のフリルつきパンツを手に取って頬ずりする。 どっかみても変態である。

 やがて何かに気付いたかのように男はそっと家を出てひょっとこのほうへと歩いてくる。

 すれ違う二人

 その瞬間、ひょっとこは声をかけた。

「まちな、あんた」

「……なにかね?」

 男は足を止める。 その手には白パンツ

「白パンツをとるとはいただけないな。 何故その横にある縞パンを取らなかった。 白と水色で可愛かったはずだ」

「ふんっ、縞パンだと? 君は何をいっているのかね? そんな前時代的な遺物にまだ未練を感じているのか?」

「なんだと……!」

 ひょっとこは思わず距離を詰める。 蝶ルックスで

「君のような者がいるから時代は足を前に出しあぐねているのだよ」

「ほう……その言い方。 まるでお前が時代を先取りしているかのような口ぶりじゃないか」

「当たり前だよ。 これでも私は天才なんだ。 時代を読むことなんて動作もないよ」

 黒コートの男は一歩詰め寄る。 白パンツを手に持ったまま

「何を言ってるんだ。 縞パンはその人自身を若干幼くさせロリに魅せる効果があるんだぞ。 白パンごときができると思っているのか?」

「甘いね、君は白パンの凄さをわかっていない。 純白な白から生み出される染みがどれほど興奮するものなのかわかっていないようだ」

「ふんっ、まだそんな段階とはな。 その段階ならば俺は5歳のときに幼馴染がおねしょをしたことによって到達しているぞ」

「幼馴染……だとッ!?」

 男の目の色がかわり、体をプルプル震わせる。

「……君には幼馴染がいるというのか。 それこそ人類が生み出した究極にして至高の存在である幼馴染がッ! モーニングでは勝手に自分の部屋にはいってきて寝顔を見ながらクスリと笑う幼馴染がッ! 一緒に登下校したりお弁当を食べたりして、ちょっと可愛い子に目がいってると膨れっ面になって怒ってくる幼馴染がッ! 夜には夕食を作りに来てくれ、そのまま夜の営みまで逝っちゃう幼馴染が君にはいるというのかねッ!」

「はっはっは、うらやましいか?」

「うらやましい!!」

 なんとも素直な男である。 しかしながら、この男が彼の現状を知ったらどんな顔をするのか……それもまた興味深いものがある。

「しかしなんだね……、ここらへんにも君のような若者がまだいるとは、世界もなかなか捨てたものじゃない」

「それは俺も思うよ。 あなたのような人がいるとは、あなたとなら趣味が理解できそうです」

「ふむ、まったくもって同感だ」

 およそ人類の底辺のような二人がまるで人類の代表者かのように話す姿はみていて頭が痛くなってくる。

「そういえば、あなたのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「私の名前は、ジェイル・スカリエッティだよ。 みんなからはアンリミテッドデザイア、無限の欲望と呼ばれているよ」

「なるほど、無限の性欲ですか」

「君の欲望は性の一方通行なのかい?」

 およそ正解といっていいのではないだろうか。

「して、君の名前は?」

「俺は正義のヒーローですからね。 名前は伏せています、みんなからはひょっとこと呼ばれていますね」

「ひょっとこくんか。 それではひょっとこくん、ともに道を極めていこうとではないか」

「ええ、あなたとなら極められると信じています」

 そういって、二人は固い握手を交わす。 決して途切れることのない、消えることのない、男と男、変態と変態が交わした約束であった。

「よかったな、ひょっとこ。 お前にも友達ができて」

「それに趣味も合ってるからな。 さて、今日は思いもよらない収穫もあったし俺は帰ることにするよ」

「そうかそうか、なら──ちょっと交番でお茶でもせんか?」

「おっさんって忍びの家系だったっけ?」



           ☆



『はい、もしもし。 高町ですけど』

「あ、なのは? 俺だけど……」

『ん? なんで家の電話? って、携帯置いていったのか。 それでどうしたの?』

「いや〜……うん。 大変言いにくいことなんだけどさ、交番まで迎えに来てくれないかな?」

『さよなら』

「まってええええええええええッ! お願いだから電話を切らないでええええええ!」

 深夜の交番にひょっとこの声が木霊する。

 どうしてだ……一流の俺が二流のような失敗を犯すとは……!
 
 隣にいる友、スカリエッティに目を向けると

「あ、ウーノかい? そう、そうなんだ。 管理局の人に捕まってしまってね。 え? いやいや指名手犯だからとかじゃないんだけどさ。 えっと……白パンツを盗んじゃって。 あ、待ちたまえっ! ウーノ、これには深い訳があるんだっ!」

「パンツを盗むのに理由もなにもないだろう」

「そして俺が捕まったのにも理由はないんだがな」

「お前は存在するだけで理由になるからいいんだよ」

「……世界が俺の敵というわけか」

 そんなこんなでおっさんとお茶を飲みながらまったりと過ごすことに



           ☆



「どうもうちのバカがご迷惑をおかけしました」

 高町なのはは目の前にいる男性に深々と頭を下げた。 連絡がきてから1時間。 本気で来たくなかったのだがもしこなかったら交番の人にどれだけ迷惑をかけるか分かったもんじゃないので、嫌々ながらも引き取ることに。

 ちなみに水色の短パンに白のTシャツ姿である。

「いやいや、こちらも慣れたもんですからね。 ただもう少しおとなしくなってくれればこちらとしてもありがたいものですよ」

「とか言っちゃって、本当は俺と遊ぶの嬉しいんだろう?」

「黙ってて」

「ぐふぅっ!?」

 なのはのヒジがひょっとこのミゾに入る。 体を前に傾けながら必死に酸素を取り込んでいる幼馴染を冷たい目で見ながらもう一人捕まっていた人物の所へと向かう。

「あの〜……すいません。 私の幼馴染がそちらを巻き込んでしまったようで……」

「いえ、こちらもドクターがそちらに迷惑をおかけしたようで……本当にすいませんでした」

「まともだっ! まともな人にやっと出会えたような気がするっ!」

「?」

 女性の対応になのはは感動して手を取る。 目にはすこしだけ涙を浮かべていた。

「あ、あの……何があったのかわかりませんが、その……頑張ってください。 えっと、これも何かの縁ですし、お互いの連絡先でも交換しますか?」

「是非!」

 嬉々として携帯を取り出し互いの連絡先を交換する。

「え〜っと、ウーノさんですか。 なんだか知的な名前ですね」

「ふふ、そちらもなのはとは可愛らしいお名前ですよ。 あなたにピッタリな名前ですね」

「当たり前ですよ、なのははコイの王様になるほどの素質をもっていますからね」

「話に加わってこないでよっ!?」

「いや、さびしいじゃん」

「後で付き合ってあげるからっ!」

「そんな……こんなところで告白なんて……」

「どんな思考回路してたらそうなるのっ!?」

 いっきにペースを乱され憤慨するなのは

「それよりスカさん大丈夫なんですか? なんかひどく打ちひしがれてるんですけど」

『……せっかく取ったパンツなのに……ウーノ、なにをしてくれるんだ……』

「気にしないでください。 それとパンツのほうはこちらで弁償することになりましたので」

 スカリエッティは泣きながらその場に立つ

「ひょっとこくん……今日はもう立ち直れそうにないから話はまた後日にしよう……」

「お……おう」

 ひょっとこが軽く引くくらい意気消沈しているスカリエッティはウーノと呼ばれた女性に手を引かれながらその場を後にした。

「それじゃ俺らも帰るか」

「とりあえずニーソは弁償してよね?」

「わかったよ。 それじゃこのニーソは俺が責任をもって処分しとくよ。 ……なのはのニーソ……ハァ……ハァ……」

「もう嫌だよ、この幼馴染っ!?」

 きっかりニーソを回収しながらなのはは交番の前で叫ぶのだった。




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