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42.視察?



「少年、本当にダイエットしたいのであればコカコーラからダイエットコカコーラに変えたくらいでは痩せんぞ。 せめて、一日1kmでもいいからランニングすることからはじめろ」

「え……。 でも、ランニングとか苦手で……」

「それならば朝の女子高生とかOLとか追いかけとけ。 結構いけるもんだぞ」

「はぁ……」

 聖王教会のバイトを辞めたのが二日前。 現在の俺は、ミッドでバイトを転々としているのが現状である。 日給はその店によって決まっており、給料が高い店もあれば微々たるところもある──が、聖王教会のときとは違い、自分を隠すことなどせずにバイトできるので結構楽しい。

「まぁ、というわけでこのコーラは没収だ。 お前は水でも飲んどけ」

 そういって、カゴに入っていたコーラを取り出しそれと引き換えに“おいしいみず”を入れて、金額を表示し、金をもらい、おつりを返す。 少年はなにか釈然としない顔ではあるものの、俺が手を振ると振り返して店を後にした。

「ふっ……また一人ミッドの少年を救ってしまったか……」

「営業妨害だ馬鹿者。 なんで店側のお前が営業妨害してるんだ。 いい加減、ちゃんとしねえて目ん玉抉るぞ」

 今日のバイト先はコンビニ。 そこで一日中レジ打ちをしている。 レジ打ちは高校時代に散々やってきたので慣れたものだ。 もう一秒間に12万連打くらい余裕である。 今回はヴィヴィオをスカさん宅に預けてます。

 流石にコンビニはヴィヴィオには早すぎる。 なんせ18禁本が平然とあるのだから。 ヴィヴィオの教育的に、俺の生命的に、二つの意味で二人から殺される。

「それにしても……コンビニって儲かるのな。 チラっと帳簿みたけど、結構金あったぞ」

「なんでお前はそうやってすぐに人の帳簿とかみるかなぁっ!?」

 金髪ドレッドヘアーのコンビニ店長、|餡貝善々《あんがいいい》さんがワナワナ震えながら叫ぶ。

 あ、そろそろポテト揚げる時間だ。

 ポテトを油の中にいれて、時間を計りながら餡貝さんとお喋りを続ける。

「しかし、アレですね。 ほんとありがとうございます。 バイトの件」

「……まぁ、動機がなんにしてもお前が働こうと思ったのなら、手伝いくらいはしてやるさ。 それに、お前がバイトしてくれるならその分ミッドも平和になるだろうしな」

 俺はミッドの負の親玉かよ。

「ところで、お前はどれくらい金がいるんだ?」

「え〜っと……10万ほどですかね」

「それはまた結構な大金だな。 一か月じゃ無理じゃねえか?」

「そこが問題なんですよね〜……」

 あんまりバイト期間が長いと二人に勘付かれる。 (というか、既に二人は疑惑の目を俺に向けているのだ。 近々、なにかアクションを起こしてくるかもしれないな) これ以上、時間をかけると俺のビックリドッキリプレゼント大作戦が泡と消えてしまう。 それだけは避けないと。

「一気に稼げるバイトがあればいいけどさ」

「キャサリンの所で稼げば?」

「いや、キャサリンはちょっと……。 俺が喰われかねない」

 キャサリンまじで恐ろしいから。 リアルで怖いから。 キャサリン見た後だと並の犯罪者とかマジで可愛くみえるから。 可愛い女性がちょっと部下に怒ったくらいで魔王とかマジ甘いから、そんなの魔王じゃねえから。 そんなのゴブリンもいいところだから。

「まあ……確かにキャサリンはねえな」

「万単位で給料くれるなら考えるけどさ。 流石にキャサリンも万単位では出さないだろう」

「いや……わかんねえぞ? もしかしたら……なんてこともあるかもしれん」

 う〜ん……確かにありそうでこわい。

 ヴーヴー!

「ん? メールだ。 誰だろう」

「裏で弄ってこい」

「裏でオ○ニーしてこいとかアンタ最低だな!」

「お前の考えのほうが最低だ!?」



           ☆



「まったく……バイト中にメールなんてKYな奴だな」

 バイト中に携帯持ち歩いている俺が言えた義理じゃないのだが、というより俺はこのメールの送信者を1%も怒ることができないわけだが。 とはいうものの、俺にメールをしてくる人物なんて限られてくる。

 知り合いは人外が多いし、変態共はあまり携帯をもたないし、管理局の本部の奴らは仕事だろうし、ミッドの市民は俺がバイトということを知っているので、このメールの送信者はきっとおそらく六課の誰かだと思う。 そして六課の面々で俺にメールを送る人物なんてなのはかフェイトしかありえないわけで、きっとその内容は甘いものだと──

 送信者・はやえもん

 内容・ちょっと話があるんやけど

「さーて、バイトバイト」

 開いた携帯をパタンと閉じる。

『おーい、ひょっとこー! 飲み物の補充たのむー! 倉庫から取ってきてくれー!』

「うーい!」

 餡貝さんからの指示に返事を返し、裏の倉庫にいき飲み物のダンボールを取る。

 ヴーヴー!

 ポケットにいれた携帯がバイブ音と振動で俺の股間のすぐそばで暴れまわる。 とんだじゃじゃ馬ファンシーベイベーだぜ。

 一応、携帯を取り出して確認することに。

 着信あり・はやえもん

「さーて、飲み物を運んでいれればいいんだよな」

 大き目のダンボールを三箱取り出して、店内に戻る。

 そこで待っていたのは、受話器片手にレジをみている餡貝さんの姿であった。

 餡貝さんは俺に受話器を差し出しながら言った。

「おー、ひょっとこ。 お前の友達が呼んでるみたいだぞ。 どうでもいいけど、店にまでかけてくるような彼女とは……お前も案外ラブラブじゃねえか。 ただ、店までかけてくる奴は面倒だからな。 店を巻き込まないでくれよ〜?」

 俺は黙って受話器を受け取ることに。 餡貝さんは仕事をしに、裏へと引っ込む。

「……はい、ひょっとこだけど」

『お、やっと出たか。 どした? なんか声が暗いで?』

「お前のせいだよっ!? 昨日メールでバイト中はメールしないって約束しただろっ!?」

『だから電話してるんや』

「意味わかんねえよっ!? どんな理屈だよっ!? それに店長にお前が俺の彼女だと誤解されてるんですけどっ! どうしてくれるんだっ!?」

『なんなら、本当になったげよっか〜? 料理もできて、気立てもいい、管理局でも一目置かれてる、こんなに可愛いお嫁さんそうそうおらんで〜?』

「確かにお前は料理もできて、おだてもよくて、管理局でも一目置かれて、可愛いけど、俺にはなのはとフェイトがいるんで他を当たってくれ! それに俺は彼女と言ったはずだ、なんでお嫁さんにランクアップしてるんだよっ!?」

『責任……とってよね……?』

「なんの責任っ!?」

 受話器越しに、はやての笑い声が聞こえる。

『それで? なんで出てくれなかったん? ちょっと傷ついたで。 真面目なところ』

「うっ……すまん。 いや、俺もお前とは例え電話越しだとしても、文面のみの会話だとしても、お前とならいつまでもしていたいけど……」

『……けど?』

「その……聖王教会のことで……さ。 若干ながら罪悪感が」

 おっさんは気にしなくていいとは言ったけど。 やはりはやてには申し訳ない。

「とある人に“気にしなくてもいいんじゃないか?”とは言われたけど、やっぱり罪悪感はあるわけよ」

『まだそんなこと考えてたん? それについては昨日話したのに』

 ええ、確かに話したとも。

『聖王教会側も、“申し訳ない”って謝ってるし、こっちは大丈夫や』

「そっか……。 それじゃ、なんで電話してきたんだ?」

『……暇だから』

「仕事しろ」

『え〜……いやや』

「子どもかお前はっ!?」

 なんでこんな奴が魔導師ランクSSなんだろうな。 世の中狂ってやがる。

『いや、私もね? 仕事しようと思ったけど、そもそも仕事がないんよ。 ほら、六課って基本的に遊んでるし、その分他の、主に上層部の方達が頑張っているわけだから』

「聞きようによっては、お前らの部署最悪の部署だな」

『人間最悪のアンタに言われたくないで。 まあ、そんなわけで暇なんよ』

「ふ〜ん……、まあ俺は暇じゃないから。 そろそろ切るぞ?」

『え〜! もう切るん!? もっとお喋りしよーや! じゃないとアンタが私の純潔を奪ったってなのはちゃんとフェイトちゃんに言いふらすで!』

「なにその限定仕様っ!? 俺が死ぬからやめて! そしてデマをこれ以上言わないでくれっ!?」

『それじゃ、もっと喋ろうよー』

「う〜ん、まあ客が来るまでの時間だけなら融通利くと思うけど。 それまででいい?」

『オッケーオッケー。 それじゃ──』

 はやてが話を振るところでトビラが開き、客が入店してきた。

「あ、悪い。 客来たから切るな」

『はっ!?』

 ガチャン──と、受話器を置いたところで、タイミングを見計らったかのように客がカゴと一緒に商品を提出する。 俺はそのカゴにはいっていた商品名を口に出しながら、はやてには悪いことしたな〜、なんて考えるのであった。



           ☆



 電話の向こうから、あいつの冷静な声が返ってきたと思ったら、つぎの瞬間には電話は切られていた。

「…………」

 携帯をじっと見つめること1分。 どうせ見ていても折り返してかかってくることはないので、そっと閉じることにした。

「……おもしろくな」

 あいつがバイトだってことはわかっている──わかっているけど、こっちは暇なんだから少しくらい遊んでもええやん。 いつもはあっちがひっかきまわすのに。

「はやてちゃーん。 書類ここにおいときますよー?」

 シャマルが書類をわたしの机に置く。 うへぇ……丁度いいタイミングで仕事が……。

 目の前の書類に辟易する──が、ふと頭の中にあることを思いついた。

「なぁシャマル」

「はい? なんですか?」

「あいつのバイト先って、あそこのお巡りさんに聞いたらわかるかな?」

「う〜ん、そうですね〜。 たぶんわかると思いますけど」

「そっかそっかー」

 ポケットに入れた携帯を取り出して、電話帳から魔導師ランクSSSだろうと名高いあの人を選びコールすることに。

 2コールのあと、電話に出た人物に挨拶して、さっそくあいつの明日のバイト先を聞きだした。

 明日はちょうど、蕎麦庵というお食事処みたいやし……昼休憩にでもいこうかな。

「どうしたんですか、はやてちゃん? なんだか嬉しそうですけど……」

「んー? なんでもあらへんよー」




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