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77.ヴィヴィオの冒険A



灯台の下、黒のコートを着込んだ男性はヴィヴィオのほうをみて唸っていた。

「うーん……やっぱオリヴィエ嬢とは少し違うような……。 でも容姿はそっくりだしなー……」

そんな男をみながらヴィヴィオは隣にいるガーくんに男を指さしながら聞く。

「ガーくんしってるひと?」

「シラナーイ。 ヴィヴィオシッテル?」

「ううん、ヴィヴィオしらない。 パパにしらないひとに声こえかけられたらこえあげなきゃダメだ、っていわれたけど……やっぱりあげたほうがいいのかな?」

ヴィヴィオが首を傾げながらガーくんと話し合いをしていると、男は“ヴィヴィオ”という単語を聞いた瞬間に顔をあげてガーくんたちのほうをみる。

「ヴィヴィオ……? ということは、なのはちゃんとバカ息子の子どもというのがお嬢ちゃんか。 あ、けど髪色が違うし……フェイトちゃんという子のほうとの子どもなのか? けど士郎からはなのはちゃんとの子どもって聞いたし……」

「パパとなのはママとフェイトママをしってるの?」

「んあ? あぁ、知ってるさ。 といっても、俺が実際に会ったことがあるのはなのはちゃん一人なんだけどな」

 ヴィヴィオのクエッションマークを消すかのように男はそう快活に笑いながら答えた。 シルクハットを取りながら、丁寧にお辞儀する男。

「はじめまして、ヴィヴィオ嬢。 常識外れの魔法使いでございます」

 そうお辞儀をした男は、ヴィヴィオの前に片膝をつき指を鳴らす。

 男が指を鳴らした瞬間、ヴィヴィオの足元には青や赤や緑や黄色の水玉模様のカラフルなシートが設置され、ヴィヴィオの後ろにはオレンジジュースやリンゴジュース、トロピカルジュースなど各種飲み物と、クッキーやポテトチップスやポッキーやアメなどの大量のお菓子が突如出現した。

 その光景にヴィヴィオとガーくんは目を輝かせながら食い入るように見つめる。 そして男に振り返ると、男は笑いながら口にする。

「おじさんも休憩の仲間にいれてくれないかな?」

 ヴィヴィオとガーくんは目を合わせ、笑いながら男に言う。

「うん! いいよー!」

「イイヨー!」

         ☆

「なぁ、なのは。 一つ思ったんだけどさ……。 べつになのはと手錠されてても不自由なく動けるよな」

「うん、確かに手錠してても問題ないね」

 なのはに手錠されてからというもの、べつにそこまで普段と変わらない行動をしている男です。 まぁ確かにちょっと右手が使いにくいな〜、とは思うけど……とくに支障はないかな。

「手錠をしても普段と変わらない行動ができるのは当たり前だよ。 わたし達が何年一緒にいると思ってるの? できて当たり前」

「……言われてみれば、当たり前だよな」

 ……世の中の幼馴染同士で手錠してるのかどうかは別として。

「これの目的は俊くんが小さい女の子、俗にいうロリっこに近づかないようにするためだよ」

「だから俺はロリに興味がないと──」

 俺の反論をあいているほうの手──すなわち右手で塞ぎながらなのはは生徒を可愛く叱る先生のような感じで言う。

「いい? 俊くんは年上も年下も対象外ということにわたしの中ではなってるんだからね? そして幼馴染萌えで魔法少女萌え。 幼馴染だけでも脅威なのに、魔法少女萌えにロリ萌えが加わったら勝ち目がなくなっちゃうよ。 絶対にロリに目覚めたらダメだからね? わたしとの約束だぞ?」

 それに俺はただ頷くことしかできなかった。

 口を塞がれて苦しいと思うより、客を待たせてるということも忘れ、ただただ目の前にいる女の子を可愛いと思ってしまった。

 なのはは俺の頷きを確認すると、笑いながら手錠をじゃらりと鳴らしてみせた。

「ほら、早く次の料理運ぼうよ」

 あ、うん。 そうだな──ん?」

 なのはの言葉に自分たちが配膳をしている最中だったのを思い出し、片手でもっていたトレイに次の軽食を置くために士郎さんの所に帰ろうと進路を向けたところで、ヴィータが俺のエプロンを掴んでいた。

 ヴィータは俺の顔をチラリと見た後、ほんとうに申し訳なさそうな顔で

「すまん、ひょっとこ……。 あたしの伝え方が悪かった……」

 そう謝ってきた。

 まさかこいつ、まださっきのこと気にしてたのか? 俺は逆にいい思いをしているというのに。

「気にしてないよ、ヴィータ。 って、なのはさん? なんで目隠ししてるんですか?」
 
「えっと……、なんとなくかな……?」

 ヴィータをマジマジとみようとすると、隣にいたなのはが俺の目を手で隠してきた。 前がまったく見えません。

「まぁ、あれだ。 そんなに気にすんなよ。 俺はなのはと手錠で繋がってて嬉しいぞ? 意外と快適なライフを送れてるさ」

「どう考えてもペットライフだろそれ」

 うん、いつものヴィータに戻ってくれた。

「それより、早く仕事しようぜ。 ほら、なのは。 俺らも運ぼう」

 なのはを促して厨房に入る、すると──

「あら、フェイトちゃんケーキ作りの才能あるわよ! 俊ちゃんを超えちゃうかも」

「ほ、ほんとですか!?」

 桃子さんの歓声と、フェイトの驚きと嬉しさが混じった声が聞こえてきた。

 何事かとみてみると──そこには綺麗に装飾されたショートケーキがおかれた。 一目見ただけでわかる。 これ絶対うまい。 そして器用なフェイトは、そこにアルフの砂糖菓子をイチゴの横に可愛らしく配置していた。

「あ、俊! えへへ、桃子さんに褒められちゃった……。 って、どうしたの?」

「あ、うん……。 その……」

 ツインテールに結んだフェイトとケーキを交互に見る。

「その……ケーキもってるフェイトは似合うなー、って思ってさ。 なんつーか、可愛らしい」

 頭を掻きながらそうフェイトに告げる。

 フェイトは一瞬驚いた顔をしつつも、すぐにいつもの優しい笑顔に戻って傍に置いてあったフォークを手に取り一口大の大きさにケーキをすくうと、俺の口にもってきた。

「はい、あ〜ん」

「えーっと、あ〜ん」

 ついついフェイトの声と口に合わせて俺も口を開ける。 するとそこにケーキがはいってきた。 甘い甘い、とろけるような──そんな甘さだ。 そしてかすかに苦味があるのか、口にいれてから数秒してビターな味が刺激する。 成程、これはうまい。 ほんとうに俺を超えるんじゃないか?

「おいしい?」

「うん、おいしい」

「ふふっ、よかった。 これで『おいしくない』と言われたら頑張って作ったものが全部水の泡になるところだったよ」

「バカいうな。 フェイトのケーキを『おいしくない』なんていう輩は俺がぶん殴ってやるよ」
 
 そういうとフェイトは俺の鼻をつんと触って舌を出す。

「なにいってるの? 私がケーキを作るのはキミにだけだよ。 それ以外には作らないよ」

「そうなの? 勿体無い」

「そうだよ」

 フェイトは俺にずいと近づく。 昨日までの距離感はもはやない。

 そしてフェイトは俺の頬についていたクリームを舌で舐めとり、ケーキのイチゴを食べながらいった。

「私のケーキは俊が独り占めしていいよ」

 俺は萌え死んだ。

 いつも思うことなんだが、どうしてフェイトは俺の心をこんなにも荒らしていくんだろうか。 どうしてこんなに俺の萌えポイントを刺激してくるのだろうか。

 俺はどうしたらいいんでしょうか。

 そのままフェイトは、俺の口にもう一回ケーキを運んでくる。 それに抗うことなく食べる俺。

 ぎゅむ

「あいたっ──!?」

 足元からくる強烈な痛みに思わず声が出る。 そして犯人であろう人物に声をかけた。

「なにすんだなのは! 痛いじゃないかっ!?」

「ふーん、わたしは悪くないもんねー」
 
「お前が悪いに決まってるだろ!?」

「いーや、悪くない。 これは俊くんが悪い」

「あん?」

「それより早く運ぶよ」

 なのはが左手を引っ張る。 俺となのはの手は現在手錠で繋がっているわけで、なのはの引っ張ったほうが左手だから俺も引っ張られるわけである。

「ちょっ、わかったってば。 ちゃんと歩けるから──」

「俊、あーん」

「あーん」

 フェイトが差し出してくるケーキをついつい食べてしまう。 もう生きている中で、フェイトがこんなことしてくれる機会なんてないと思うし、この状況を満喫せねば。 例え世界が滅亡することになろうとも、俺はこの場を動かないぞ。 俺を動かすことなどできはしない!

「しゅーんーくーん? 誰がキミのご主人様か忘れちゃったのかなー?」

 ──右手の一本くらいくれてやるよ。

 俊がなのはとフェイト──地獄と天国の板挟みにあっているのを遠くからみながらヴィータとシャマルが話す。

「なんだろうな。 フェイトがアイツにケーキ食べさせてる場面が、あたしには餌付けにしか見えないんだけど」

「奇遇ね。 私も餌付けにしか見えないです」

「どう考えてもアイツが二人のペットにしか見えないよな」

「ペット以外に表す言葉が見当たり──」

 カランカラン

「あ、おかえりなさい。 どうでした?」

「うーん、意外と人が混んでたなー。 って、あれ? なんで俊がおるん?」

 ドアを開けて入ってきた八神はやては、シャマルの言葉に返答しながら、この場にいて当然なはずの俊の存在に疑問を投げる。

「え、俺って翠屋に居ちゃいけない存在なの……?」

「へ? いやそういうことやないんやけどな? さっき浜の灯台でヴィヴィオちゃんとガーくんが男の人の隣で楽しそうに喋ってたから、てっきりあんたかと──」

 はやてが何かを言い切る前に、店の中で大きな音がして、後方のドアが壊された。

 やがて遅れてはやての頬に伝わってくる風。

 それは本当に一瞬で、誰も反応できず、誰も視認することができないような反応と速さであった。

 誰もが疑った。 誰もが目を丸くした。

 そんな中、はやてだけが声を発することができた。

「……え? いまのはなんなん……?」

 それに続くようになのはも声を上げる。

「手錠……引き千切って行っちゃったね……」

 自分の左手を目線の高さにまで掲げ、引き千切られた手錠をみながら呟く。

「あの状況で動くとは……」

 フェイトがケーキをもったまま、茫然とドアのほうを見つめる。

「って、そんなこと言ってる場合じゃねえだろ! お前らの娘が誘拐されるかもしれないぞ!」

『そうだった! 早く行かないと!!』

 茫然と動くことなく、ただただドアのほうをみていたなのはとフェイトに大声を上げるヴィータ。 そのヴィータの声によって覚醒した二人は顔を見合わせてエプロンも脱がずに駆け出した。 その数秒の後で、はやて達も駆け出した。

           ☆

「それでね? パパはなのはママとフェイトママがだいすきなんだよ! でね? なのはママとフェイトママもパパのことだいすきで、パパをしかるんだけど、ママたちとってもやさしいめをしているの! ヴィヴィオもね、そんなパパとなのはママとフェイトママがだいすきなの!」

「ほー、成程ねー。 アイツはなのはちゃんだけじゃなくフェイトちゃんとやらも大好きなのか」

「ううん。 パパはね、みんなのことだいすきなんだよ! それに、パパはまいにちパソコンでにっきをかくの!」

「なに? あいついつの間にそんな可愛い趣味を持ちやがった。 日記を書くのはいいことなんだけどな」

 男は隣にいるヴィヴィオの口の周りについているお菓子のカスを拭きながら、楽しそうにヴィヴィオの話を聞く。

「それにしても……、てっきりなのはちゃんとくっつくかと思いきや、なんか変なことになってるなぁ。 刺されないか心配だぞ。 ちゃんと三人で生活できるだろうか」

 男は溜息を吐きながら、お菓子のカスを拭きとった紙を消滅させる。

「さんにんでせいかつぅ? ちがうよ、ヴィヴィオとガーくんもいるからごにんでせいかつしてるんだよ?」

「ん、あぁ……そういえばいまはアイツも家族で頑張ってるんだったな。 まったく……こっちの問題がもう少しで終わりそうだってのについてないぜ」

「もんだい? どんなもんだい? ヴィヴィオもね、ふたけたのさんすうがちょっとだけできるようになったんだよ!」

「ほー、それは偉いねー。 問題ってのはちょっとお子様には難しいことなんだけどな。 えーっと……エスプレッソウィルスだったかな?」

 男は後ろに振り向きながらそう問いかける。

 男が問いかけた先には、綺麗な女性がちょっと呆れたような顔でたっていた。

「エクリプスウィルスですよ、あなた。 まったく、自分が担当してるというのになんで名前を間違ってるんですか?」

「いや、担当はしてないさ。 俺は局員じゃないしな。 ただ──この問題を愛しの息子に片付けさせるわけにはいかないだろ? あいつはあいつでやるべきことがあるしさ。 だから息子のために片付けることにしてんの」

 女性の呆れ声に男はちょっとむっとしたように返答する。

「おねえさんだーれ?」

「うふふ、だーれでしょ?」

「うぅ〜、わかんない」

 男のそばに歩み寄る女性の顔を見ながら疑問符を浮かべるヴィヴィオに、女はそう切り返す。 その切り返しを受けて、ヴィヴィオは少し考え放棄した。

「それじゃ、私は謎の可愛く可憐な少女ということで」

「……少女ではないかな」

「なんですって?」

「いえ、なんでもないです」

 男の呟きを女は敏感に聞き取り、男のほうを睨みつける。 男はすかさず謝罪の言葉を口にした。 その二人の一連の行動をみて、ヴィヴィオは目の前にいる男性と女性に自分のパパとママの姿が重ねて見た。

「なんだかパパとママたちみたい。 ね、ガーくん」

「ソウダネー。 ニテルカモー」

 クッキーを食べながら隣に控えていたガーくんに声をかけるヴィヴィオ。 その声には嬉しさを混じらせていた。

「むっ、なのはちゃん達と同じような感じか。 そりゃまた照れるな」

「あの子があなたと同じで碌でもない子に育たないか心配ね……」

「なのはちゃんがいるから大丈夫だろ。 それにしても──ありがとな、ヴィヴィオ嬢」

 男はそういってヴィヴィオの頭を撫でた。

「あいつも──俊にもようやく守りたい子が出来たみたいだ。 なのはちゃんとの関係は、守り護られの関係だからな。 その点、ヴィヴィオ嬢は違うようだし」

 男はクッキーを一つ摘まんで、立ち上がる。

「ほんとはあいつに会いにきたんだが……今日のところはやめておこう。 あいつの顔を見ると──全てを投げ出して、三人で生活したくなるしな」

「そうですね。 それにいまの俊には家族がいますから、ちょっと無粋かもしれませんね」

 女性はクスクスと笑いながら、ヴィヴィオとガーくんの二人を抱擁する。

「ヴィヴィオちゃん。 俊のことお願いね? あの子、泣き虫だから心配なの。 それにガーくん? かしら。 ヴィヴィオちゃんをよろしくね。 私達の可愛い孫を守ってあげてね?」

「マカセロ」

 女性のお願いにガーくんは大きく頷いてみせた。

 それを確認して、女性は笑顔で離れる。

「いっちゃうの?」

 ヴィヴィオは名残惜しそうに男のコートをキュッと掴む。

 それに男は苦笑しながら、ヴィヴィオの目線までしゃがみ込み、

「いつか会えるさ。 あぁそれと、キミにこの言葉を送ろう。 いつかきっと、この言葉の意味を体験する日がくると思うからな」

 男はそう区切り、凛とした透き通る声で言った。

 ──子を心配しない親はいないさ

        ☆

 右手からぽたぽたと血が垂れてくる。 どうやら手錠を引き千切ったときに裏側の柔らかい部分を裂いたようだ。

「はぁ……はぁ……! ヴィヴィオ……! まってろよ……! パパがすぐに行くからな……!」

 自分でも驚くほど足が回転する。 息こそ切らすが、だからといって立ち止まるような気分にはなれない。 それよりもなによりも、一刻も早くヴィヴィオの無事を確かめたい。

 全速力で浜を一直線に進み、灯台のほうに向かうと──そこにはヴィヴィオが海を見つめて立っていた。 その後ろ姿に声をかける。

「ヴィヴィオーー!」

 俺の声が聞こえたのか、ヴィヴィオは振り向き姿を確認して、笑顔で手を振ってきた。 隣にはガーくんも手を振っている。

 そして訪れる安堵の疲れ。 いまになって、ようやく疲労感がドンと押し寄せてきた。

 しかしそれでも、だからこそ、俺はヴィヴィオに近づいて思いっきり抱きしめた。

「わぷっ!? パパー、いたいよー!?」

「よかった……! 本当によかった……!」

 ヴィヴィオを両手で離さないように抱きしめながら辺りを見回す。 はやての情報によれば、このあたりに俺の娘にハレンチな行為をしようとした輩がいたそうだが……。

「ヴィヴィオ、ここに誰かいなかったか?」

「えっとね……、さっきまでおはなししてたの! それでね、クッキーとかジュースとかたくさんだしてくれたんだけど……きがついたらなくなってたの! ね!? ガーくん!」

「ウンウン! フシギダヨネー!」

 ……えーっと、どういうことだ?

「つまり……どういうことだってばよ」

 もう一度ヴィヴィオの全身と衣服の乱れをチェックする。 もう念入りに、それこそスカートをめくって下着が汚されてないかまで確認した。

「……何もされてないみたいだ……。 よかった……」

 どうやら相手はロリコンでも、性的なことをしたわけではないらしい。

 してたら見つけ出して殺してるけど。

 ふとヴィヴィオのほうに視線を向けると、なんだかもじもじと俺のほうをみていた。

「パパ……スカートめくっちゃ……や」

「え? あ、ごめんごめん。 悪かった悪かった」

 顔を赤くして怒っているヴィヴィオを宥めようと抱っこして考える。

 ヴィヴィオが立っていた場所には、クッキーやジュースどころか、人がいた気配さえない。 普通、そこに人がいたのならば気配というか、残滓が残っているはずなんだけど……。

「はやてに限って見間違いってことはない──とは言い切れないな。 はやてだし」

 それともあれか? 魔法で消したとか?

 ……いや、そっちのほうがありえないか。

「ねぇパパ?」

「ん?」

「しんぱいした?」

 だっこした状態のまま、ヴィヴィオは小首を傾げながら聞いてくる。

 俺はその質問に、ヴィヴィオの頭を撫でながら答えた。

「当たり前だろ。 子を心配しない親などいないさ」

 遠くのほうで、なのはやフェイトの呼ぶ声が聞こえてくる。

「ほら、ママ達も心配してるだろ? ヴィヴィオは可愛いからな、へんな男が寄ってこないか心配なんだよ。 きっと小学生になったらモテるんだろうなぁ……」

 皆の声のする方向に歩きながらヴィヴィオに話しかける。

「だいじょうぶだよ、パパ。 みんなにねしょうかいするの! パパはヴィヴィオのおむこさんだって! パパはなきむしさんだからヴィヴィオがそばにいないとダメなんでしょ?」

「泣き虫って……まぁ……若干当たってはいるけど……」

「えへへ、パパかわいい」

 ヴィヴィオは俺の首に腕を絡ませ抱きつきながらそう言ってくる。

 うーん……嬉しいけど、ちょっと複雑だ。 どうせなら『パパ、カッコイイ』と言ってほしいかも。

 前方からなのはとフェイトが駆け寄ってきて、俺ともどもヴィヴィオを抱きしめる。

 その勢いが強すぎて、四人とも砂浜に倒れてしまったが──なんだか笑いがこみ上げてきて、その場にいる皆と大いに笑ってしまった。

 そして俺はヴィヴィオを抱きしめたままその場で笑いながら誓う。

 ──今日はヴィヴィオと一緒に寝よう、と。




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