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91.小休憩1



 “イベント”から一夜明けた朝、俊は相も変わらず自分のベッドで寝込んでいた。

「うーん、39.8度か……。 もう、なんでこんなになるまで黙ってたの?」

「いやー、どうしてもここまではスピードが大事になってくるから休めなかったんだよね」

「まーた訳のわからない言い訳を」

 マスクをしていてもわかるへらへらっとした顔で笑う俊に、体温計で熱を測っていたフェイトはため息を吐く。 顔を赤くし、咳を何度も何度も繰り返す俊。 フェイトは俊に水差しを傾けながらチラと横を見ながら問う。

「で、どうするの? アレ。 間違いなく俊のせいだと思うんだけど」

「いやー……、パパ冥利に尽きるなー」

「ちゃんと現実を見なさい」

 フェイトと俊が話しているのは俊の部屋。 そして、開け放たれた俊のドアの前では──

「いやぁーー! ヴィヴィオもパパとねるー!」

「だーかーらー! パパはごほんごほんしてるから一緒に寝れないの! ヴィヴィオまで風邪になっちゃうでしょ!」

「ヴィヴィオかぜひかないもん!」

「ヴィヴィオくらいの年の子が一番危ないの!」

 ドアの前では俊のベッドに駆け寄ろうとするヴィヴィオと、それを止めるなのはの姿があった。 ヴィヴィオの目には涙がたまっていた。

「パパがしんじゃう! パパがしんじゃうもん!」

「いや、風邪くらいじゃ俊くんは死なないから……。 高校時代、浮気したときにフルボッコにしたけど死ななかったし、大丈夫だと思うよ?」

「む〜〜っ! なのはママはパパのことすきじゃないからそんなこといえるもん!」

「なっ!? わたしほどパパのこと愛してる人はいないもんねー! ヴィヴィオのパパLOVE度より100倍は好きですー!」

 娘相手に大人げない姿を見せるママ(19歳/職業・魔法少女)。 娘は隣にいる自分のペットに目を向け、お願いする。

「ガーくん、なのはママをやっつけて!」

 二人のやり取りを見ていたアヒルのガーくんは、ここで自分に振られるとは思ってなかったのかいささか驚いた顔をする──が、それも一瞬で大好きなヴィヴィオのお願いに快く頷き、なのはの前に立つ。

「へー……、ガーくんヴィヴィオの味方するんだ。 そう……」

「ヴィヴィオ、アイテガワルイ、アキラメヨウ」

「ガーくんっ!?」

 なのはと対峙してからおよさ3秒、ガーくんは素直に負けを認めるのであった。 頼みの綱のガーくんが降参した以上、ヴィヴィオ一人での戦いとなるだろう。

「ヴィヴィオ? パパはごほんごほんで、いまとっても辛いの。 だからなのはママと一緒に下でゲームしてよ。 ね?」

 ヴィヴィオの目線と同じ目線になるように、なのははしゃがみこんでヴィヴィオに諭す。 普段のヴィヴィオならこれで頷き、なのはと一緒に下でゲームをするわけだが今回は違っていた。

 ヴィヴィオは首を横にぶんぶん振った後、

「パパがしんじゃうもん! ヴィヴィオがそばにいないとダメなの!」

 そう主張した。

 これにはなのはも困り果て、後ろでその様子を見ている二人に視線を向ける。

 しかしヴィヴィオのこの行動も、ヴィヴィオの視点に立ってみれば当然のことだろう。 ヴィヴィオにしてみれば、パパである俊はいつでもどこでも元気な人物なのだ。 どんなときでも笑顔で自分をだっこしてくれて、自分のわがままを聞いてくれる大好きなパパなのである。 そんなパパが、ベッドで辛そうな顔をしているのだ。 ヴィヴィオからしてみれば一大事であろう。

「ヴィヴィオがきてから俊くんずっと元気だったし、ヴィヴィオの言い分もわかるんだけどねー……。 ヴィヴィオのことを考えると、こればっかりは譲れないんだよなー」

 そう小さくなのはは呟いた。 目の前には、パパに向かって走り出しそうな娘の姿がある。 正直なところ、なのはは俊に少しばかり嫉妬していた。 こんなにも娘に思われているのだ。 羨ましい限りである。

「でも──ダメなものはダメです!」

「あぅっ……!」

 がっしりとヴィヴィオを前からホールドするなのは。 ヴィヴィオはそれに抵抗しながら、子供特有の言葉をしゃべる。

「なのはママのばか!」

「バカじゃありません」

「なのはママのあほ!」

「アホじゃありません」

「なのはママのとしま!」

「ママはまだ19歳です! ピチピチでいまが一番かわいい年頃です! それに貰ってくれる人がいるからいきおくれにもなりませんー! そうだよね、俊くん!」

『えっ!? も、勿論! なのはみたいな可愛い娘がいきおくれなんかになるわけないだろ! …………まぁ、できれば俺と結婚してほしいなぁー、とは思うけど……』

『…………』

『いたっ!? フェイトさん、俺病人なんですけど!?』

『バーカ……。 ……俊がぼーっとしててよかった』

 二人は二人でなにやらやっているみたいである。 それはそれとして、なのはとヴィヴィオである。 なのはは俊の発言を聞いて、満面の笑みを浮かべながらヴィヴィオに喋る。

「ほーら、パパはなのはママのことが大好きでしょー。 ほら、ヴィヴィオは娘なんだしこれ以上パパに迷惑をかけちゃいけないから下に行くよ」

 何故か微妙に棘のある言い方をしてきた。 娘相手に大人げなさMAXの母親である。 ヴィヴィオはそれでも頬を膨らませながらなのはに対抗する。

「パパはヴィヴィオのことがだいすきだもん! パパはヴィヴィオのおよめさんになるの!」

「残念でしたー。 俊くんはなのはママのお嫁さんですー」

『おめでとう俊。 ついに性別の壁すら越えることができたね』

『時を駆けた少女ですら性別の壁は越えられないという事実を二人はわかっているんだろうか……』

『さぁ? けど、そろそろヴィヴィオとなのはをどうにかしないとご近所さんに俊が女の子だったという新事実が発覚したあげく、5歳に手をあげるレズ女になっちゃうよ』

『俺のことはどうでもいいけど、ヴィヴィオには笑っててほしい。 おーい、ヴィヴィオー!』

 いまだ、どちらの嫁なのかで喧嘩していたなのはとヴィヴィオだが俊の呼びかけによりその喧嘩も終わりを迎えた。 俊に呼ばれたヴィヴィオは、普段のにこにことした笑顔で寝ている俊に抱きついくる。

「パパ、だいじょうぶ? だいじょうぶ? しんじゃうの? しんじゃうの?」

「大丈夫、パパは死なないさ」

 しつこいくらい真剣に質問するヴィヴィオに、俊は頭を優しく撫でながら答えていく。 なのはは指をくわえて羨ましそうに見ていた。

「ヴィヴィオ、夜までには治すからそれまでなのはママと一緒にいてくれないかな? それに、なのはママはヴィヴィオのことが心配だからあんなこといってるんだからな? 嫌われても、疎まれても、それでも娘のことが心配であんな憎まれ役を買ってくれたんだ。 そこはわかるか?」

「……うん」

「よしよし、いい子だな。 ほら、だったらなのはママに言わないといけないことがあるよな?」

「……うん」

 そっとヴィヴィオを撫でる俊の手が止まる。 ヴィヴィオはとてとてとなのはのほうに歩いていき、

「なのはママ、ばかとかいってごめんなさい」

 そう謝った。 なのはは笑みを浮かべながら、

「はい、よくできました。 ヴィヴィオは偉いねー。 流石私たちの自慢の娘! ママもちょっと熱くなっちゃったね。 ごめんなさい」

「ううん、いいよ」

 二人して抱き合い、仲直りのキスをして照れたように笑いあう。 なのははヴィヴィオをだっこすると、様子をみていた俊に手を振った。

「早く治してね。 まってるから」

「ああ、すぐに治すよ」

 俊となのはは手を振って別れた。 ヴィヴィオをだっこしたなのははそのまま階下へと向かう。 フェイトと俊に二人の話声が聞こえてきた。

『よーし、ヴィヴィオ。 パパのためにお昼ご飯作ろっか』

『うん! ヴィヴィオがんばる!』

『ガーくんも手伝ってね?』

『ハーイ!』

「「…………」」

 その話声を聞いて、フェイトと俊は固まった。

「フェイト、二人の調理を止めてくれないかな……? いまの俺の胃ならとんでもないことになる」

「私も俊を死なせたくないし、全力で止めてくるよ。 けどその前に俊──手を離してくれないと動けないよ?」

「……あ」

 無意識のうちに俊はフェイトの手を握っていた。 フェイトはにやにやと笑いながら俊に問いかける。

「一人はさびしいのかなー、俊? さびしんぼうで甘えん坊の俊?」

「べ、べつにさびしくなんかねえよ!」

「あ、そう。 それじゃもう行くね」

「あっ……」

 フェイトと俊の手がするりと解けると、俊はフェイトの服を無意識のうちに掴んでいた。 フェイトが振り向くと、俊は冷や汗をだらだらと流しながら言い訳の言葉を探し──

「えっと……、さびしいのでできればすぐに来てほしいです……」

 観念したかのように、うつむきながら小さな声でフェイトにお願いする俊。 フェイトは、そんな俊を愛しそうに抱きしめると頬にキスをし、そのままドアの前まで移動する。 移動したフェイトはくるりと俊に振り返ると、唇に人差し指をあて

「今日は私が新婚の新妻並みに手厚い看病をしてあげる♪」

 そう宣言し、上機嫌で去って行った。 俊は意識を失うように夢の中へと旅立った。
 
              ☆

 ほんと、なんで病人のときの俊は母性というか、庇護欲をそそられるんだろう……。 けども、ついつい苛めたくなっちゃうし、困ってる姿を見たくなっちゃう。 まぁ、いつもの俊もみたいしやっぱり風邪は治ってほしいかな。
 
 私は俊の部屋からキッチンへと移動するために階段を降りる。 そこに、なのはとヴィヴィオの声が聞こえてきた。

『なのはママっ!? おなべのなかからまものがでてきたよ!?』

『ぎゃぁー!? ガーくんやっつけて!?』

『マカセロ!』

 ……いったい、いつから家は魔界につながるゲートを引いたんだろうか。 というか、なのは。 鍋から魔物を呼び寄せるなんてレベルが高すぎるんだけど。

 自然とため息が出てしまったけどしょうがないよね。

 そう自分に言い訳をし、なのは達がいるキッチンへと向かう

「なのはー、ヴィヴィオー、そんなに食べ物で遊んじゃ──」

「「(´・ω・`)」」

「えっと……」

「「(´・ω:;.:...」」

「あ、うん。 おとなしくゲームしとくんだね」

「「(´:;....::;.:. :::;.. .....」」

 ヴィヴィオをだっこしたなのはがショボンとした顔でてくてくとリビングへ向かっていった。 あ、あんなに落ち込むほどの酷い出来だったんだね……。 どれくらい酷かったのかな?

「……………………」

 はっ!? あ、あまりの酷さに現実逃避してた!?

「ま、まずはキッチンの片づけから始めようかな……」

 スポンジに洗剤をつけ深呼吸をした後、私はこの悪魔たちと戦うのであった。




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