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93.小休憩3



「お〜! すごいよシャマル先生! みるみる体が軽くなっていく! ありがとう!」

「それでも今日はちゃんと安静にしておかないとダメですよ? 確かに市販の薬よりは効果はありますが、完全に治ったというわけではありませんので」

 シャマル先生が人差し指を立てながらしっかりとした口調で告げてくる。 俺はそれに何度も何度も頷きで答えた。

 ふと、沢山の気配を感じて起きたのが10分ほど前のことであり、部屋にはヴォルケンや嬢ちゃんが俺の漫画やゲームを好き勝手に使っている光景が広がっていた。 そこでシャマル先生が俺が起きたことに気が付き、あれよあれよという間に風邪クスリを飲ませてくれたのだ。 市販の粉よりも飲みやすい、いかにも効果がありそうなクスリを飲んで数分が経ったいま、俺はクスリの効果は体で体験していた。

「あれ? そういえばはやては?」

「あ? はやてなら玄関先でなのはにつかまってるんじゃねえの?」

「ふ〜ん……。 ちょっと様子でも見てくるか。 風邪も大丈夫そうだし」

 ベッドから降り、部屋を出ようと腰を浮かした瞬間、ロヴィータちゃんが俺の腕を掴んできた。 そのまま、強引に仰向けに倒される。

「止めろ。 お前が行くと面倒なことになる。 それにいきなり活動をすると体に悪い」

「ロヴィータちゃん……、結構大胆なのね……。 優しく……してね?」

「聞いてたか? いまのあたしの話ちゃんと聞いてたか? 復唱できるか?」

 バカを見るような目でこちらを見てくるロヴィータちゃん。 幼女からそんな目を向けられるなんて、僕ゾクゾクしちゃう。

「それに、大胆さならお前に負けると思うぞ。 お前あんなことできたんだな」

「え? なんのこと?」

「……いや、覚えてないならいいや」

「え? なに? なんなの? 俺何かしたの? なんで皆してヒソヒソ話してるの? ねぇっ!? ちょっと怖いんですけど!?」

 焦る俺の肩にシグナムが優しく手を置く。

「ま、主はやてに手を出さなければそれでいい。 後は高町あたりに刺されてれば大丈夫だ」

「それ絶対大丈夫じゃないよね? プログラムと生身の人間を一緒にするな」

 釈然としない思いを抱きながらも、シグシグからナイフを受け取りロヴィータちゃんが持ってきてくれた果物を切っていく。

 それにしてもこの果物。 かなり高価なもののようだが……、

「ロヴィータちゃん、これいくらした?」

「お前の小遣いよりは少ないぞ。 だがお前がおいそれと買えるほど安くはないぞ」

「…………」

 予想より万単位で高くて手が止まってしまった。

「ロヴィータちゃん、金大丈夫だった……?」

「収入ゼロのお前と一緒にするな。 これくらいわけないに決まってるだろ」

「ロヴィータちゃんマジイケメン。 それにくらべて──」

 チラリと横を見ると、嬢ちゃんとスバルが必死に俺のプライベートパソコンのロックを解除しようとしていた。 なにやってんだあいつら。

『あ、あれ……? 絶対に『なのフェイラブ』だと思ったんだけど』

『うーん、『なのはたんちゅっちゅ』だと思ったんだけどな〜』

 ……こいつら、かなりニアミスしてやがる……!?

「なあひょっとこ。 あのパソコン解除してきていいか?」

「やめて! あいつらには知られたくないから!」

「まぁ、私たちにパスワードが知られている現状を鑑みると、貴様のパソコンのロックなんて無意味に思えるのだがな」

「そもそも誰だよ、俺のパスワード流出させた奴。 しかもめちゃくちゃ規模が狭いし」

 いや、規模が狭いのはいいことなんですけどね? でもあの中には日記も入れてるわけで、それを知られたら確実におちょくられること確実なわけで。

「……まぁ、いっか。 アレに辿り着くには10回ものパスワードを入力する必要あるし大丈夫だろ。 あ、
シグシグ、りんご食べる?」

「いや、私はバナナをもらおう」

「やだっ! この子ったらこんなに人がいるところでバナナを口に含みたいだなんて! やっぱりピンクは淫乱なのねっ!」

「バナナでそこまで反応できるお前は間違いなく変態だろうな」

 ごめんシグシグ、カマ口調が気に入らなかったのなら謝るからレバ剣をこちらに向けるのは止めてください。

 シグシグが見舞い品の籠の中からバナナを一本取り器用に皮を剥きながら食す。 なんでこいつはいちいち騎士っぽいんだろう。 緊張でトイレ直行する子なのに。

 しょうがないからロヴィータちゃんにあげよう。

「はいロヴィータちゃん。 あ〜ん」

 新婚バリのいちゃいちゃ雰囲気を出しながらロヴィータちゃんの口元にりんごを持っていくと見事に手を叩かれた。 ここまで嫌われてるとそういうプレイかと思ってしまう。 でもベッドに落ちたりんごに謝罪しながら食べるロヴィータちゃんはめちゃくちゃ可愛いです、はい。

 あ、咽喉が乾いてきた。

「ひょっとこ、病人は水分を沢山とり汗を流すことも仕事だ。 ほら、水分を取れ」

「…………」

「ん? 何故お前はそんなに悲しそうな顔をしているんだ?」

「いや……なんでもない」

 なんでザッフィーが水差し取ったの? ザッフィーとフラグ作れってか? ぶっ飛ばすぞ。

 とはいえ、素直に感謝を述べながら水を飲むことに。 うん、清涼感が体に染み込んでくる。 頭もスッキリしてきたような気もするし。

 ザッフィーにもう一度お礼を言って水差しを渡すと、キャロとエリオが漫画を抱えながらこちらにやってきた。 いったい何事か? エロ本は隠してあるから見つからないと思うんだけど……、だから探しても無駄だぞそこのバカ二人。 なんでさっきからこいつらは俺の部屋を荒らし回ってるの? 俺に恨みでもあんの? やめろ! そこのフィギュアには触るな!

「あの、ひょっとこさん」

「あ、ロヴィータちゃん。 そこの珍獣二人を俺のフィギュア棚から遠ざけて。 というか、こっちに連れてきて。 ──それで、どうしたのよキャロにエリオ。 俺の見てる目の前でその漫画引き裂く気? それはもうなのはさんの必殺技だからネタ被りになるので使えないよ?」

「いや、えっと……そうじゃなくて」

 キャロがモジモジとしながら漫画に目を落とす。 持っている漫画は日常系漫画ですか、ほのぼのしてて割と好きな漫画です。

「それ気に入った?」

「あ、はい! とっても面白いです! そ、その……出来ればお借りできないかと……」

「いいよー。 ある分だけ取っていいよ。 いま20巻まで出てるし」

 本棚を指さし、一列に並べてある箇所を示すが、エリオとキャロは二人して首を振った。

「いえ、今回は4冊で大丈夫です」

「あ、そう。 んじゃ、電話さえくれれば六課に持っていこうか?」

「い、いえ……。 ここまで取りに行きます。 その……ご迷惑じゃなければなんですけど……」

「オッケーオッケー。 深夜でも早朝でもいつでもいいよ。 基本ガーくんが人の気配で起きるから大丈夫」

「ひょっとこ、それガーくんは大丈夫じゃないだろ。 アレほんとにアヒルか?」

「きっとロストロギアだから大丈夫」

「基準がわからん」

 エリオとキャロの頭を撫でながらロヴィータちゃんと会話する。 成程ねー、そりゃエリオもキャロもまだ子供なんだし、この家にもっと遊びにきたいよな。 もっとこっちからも誘っていくか。

「ひょっとこさんひょっとこさん! これ借りてっていいですか!?」

「流石にプレステ3は無理だ。 諦めてくれ」

 小脇にプレステ3を抱えたスバルが嬉しそうな顔して聞いてくるが、バッサリと切り捨てる。 現在進行形でやってるゲームがあるし、流石に無理だよ。

「ひょっとこさん、この梨食べていいですか?」

「どうぞー、嬢ちゃん剥こうか?」

「あ、お願いします」

 嬢ちゃんから梨を受け取り剥いていく。 半分ほど剥き終ったら一口大のサイズに切り分け、シャマル先生が持ってきてくれた皿に乗せていく。 嬢ちゃんはお礼をいいながら受け取り、ぱくぱくと食べていく。 うん、食べる姿が可愛いから先ほどのフィギュアの件は不問にしておこう。

 皆も梨を食べることに夢中なので、全部剥いてから一息つくことに。

「ふぅ……。 体調管理も満足にできないなんて、士郎さんになんて言われるだろうか……」

 バレなければいいけど、なのはは絶対に喋るだろうし。

 それに桃子さんから何か言われるだろうなぁ。

 微妙にへこみながら、りんご剥きを再開しようとした矢先、どたどたと階段を上る音が聞こえてきた。

 何事かと思いドアのほうを眺めていると、金色の髪にオッドアイ、アリス風の服に身を包んだ愛娘のヴィヴィオが心配そうな顔を見せながら顔を覗かせた。 俺の顔を見るなりヴィヴィオは駆けだそうとするが、何故か部屋に入ろうとした瞬間に不安になった顔でこちらを見てくる。 そして部屋にいる全員を見て、横にいるガー君を見て、最後に俺をみて、

「ヴィヴィオはいっても……パパはだいじょうぶ?」

 胸の前に手を置きながら聞いてきた。

 はい死んだー! いまの俺は萌え死んだー!

 心の中で歓喜の声を上げながら、表情は優しく父親らしく優しく笑いかけながら「おいで?」そう声をかけ手を広げながら答えた。 心配そうな顔から一転、ひまわりのような笑みで俺にダイレクトアタックを決めてくるヴィヴィオ。

「えへへ……、パパもうだいじょうぶ? もうへいき? きょうヴィヴィオとねれる?」

「うんうん、もう大丈夫だよ。 今日はヴィヴィオと一緒に寝れるよ」

「やたー! パパだいすき!」

「俺もヴィヴィオ大好きだよ」

 ヴィヴィオを抱きしめながら優しく頭を撫でる。

『ロリコンきめえ』

『しかも自分の娘だぜ? こいつ絶対に手を出すぞ』

『成程、だから高町達にもあまり前に出ないんだな』

「なんでお前らはこの光景を素直に微笑ましそうな目で見ることができないの?」

 全員腐りすぎだろ。

 ヴィヴィオは俺の評判が下がっていることに気が付くことはなく、「よいしょ……よいしょ……」と言いながら俺の膝にすっぽりとおさまってしまった。 下からこちらを見上げながら恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑うヴィヴィオにこちらも堪らず笑みを浮かべる。

「そうだヴィヴィオ、りんご食べるか? ガーくんも」

「たべる! ヴィヴィオねー、ウサギさんがいい!」

「ガークンハドラゴン!」

「ドラゴンはまた今度ねー。 きっと食べる所がなくなると思うから」

 それにあれはちょっと時間かかるし。

 今回はヴィヴィオを優先しようということで、りんごをウサギに剥くことに。 手元はヴィヴィオが見える位置に移動させ、肩にはジャンプしてきたガーくんが乗っかる。 しゃりしゃりしゃり、剥くこと数分、綺麗に盛りつけられたウサギをヴィヴィオとガーくんが美味しそうに食べている光景が広がっていた。

 それにしても、なのはもフェイトもはやても何してるんだろうか?

              ☆

 家の玄関には高町なのはと八神はやてが立っていた。 いまだに靴を履いているはやてをなのはが見下ろす形である。

 両者笑顔で会話する。

「なのはちゃん、そろそろ通してくれへんかな? 親友やろ?」

「人の男を横取りしようとする親友をわたしは持った覚えはないかな」

「いややわ〜、なのはちゃん。 ただの幼馴染を自分の男みたいにとらえとるん? あー、だからわたしと俊とのイチャラブにも突っかかってくるんやな」

「いちゃらぶ? あれははやてちゃんが一方的に俊くんを食べようとしているだけであって、まったく全然違うと思うんだけどな〜。 あ、もしかしてはやてちゃんってそういう風にしか俊くんと接することができないのかな?」

 ビキビキ……!

 なのはとはやての頭に怒りマークが浮かび上がる。

 表情で笑顔であるが、その内面にどんなことを思っているのか?

 そんな折、後ろから声をかける者が現れた。 体からは湯気が立ち上り、シャワーによる赤くなった頬が可愛らしい、なおかつ魅惑なプロポーションがより一層艶めかしく見える、フェイトであった。 フェイトはタオルで金色の髪から水分を吸いだしながら二人に声をかけた。

「何してるの? ヴィータたちはもう俊の部屋にいるけど?」

「あれ? フェイトちゃんシャワー浴びたんだ。 お気に入りの下着履いてたのに?」

「う、うん。 ちょっとね」

 曖昧に笑うフェイトだが、自分の手が知らず知らずのうちに下半身に伸びそうになることに気が付き一瞬体が固まった。

「? フェイトちゃん?」

「な、なんでもない! なんでもない! ほんとなんでもないから! それよりはやて、いつまでそこにいるの?」

「なのはちゃんが入れてくれへんねん」

「ダメだよなのは。 はやてだけ仲間外れはよくないよ?」

「うっ……。 フェイトちゃんは甘いよ……、もうわたしが先に襲うもん……。 逃げられないようにするもん」

 フェイトにまで怒られいじいじしだすなのは。 そんななのはをフェイトは抱く。 抱きながら頭をよしよしと撫で続ける。

「(やっぱ、なのはちゃんとフェイトちゃんはその組み合わせのほうが似合っとる気がする)」

 なのはとフェイトが抱き合っている様子を見て、はやてはそんな感想を抱きながら階段を上る。 と、そこに丁度いいタイミングで先に家に上がらせてもらっていたメンバーが降りてきた。

 その先頭にはヴィヴィオがいた。

「あっ! はやておねえちゃんだ! あのねあのね? パパはもうすこしねるからはいっちゃダメだよ? それにね、よるはヴィヴィオとおねんねするの!」

「そっかー、よかったなーヴィヴィオちゃん。 それじゃ、わたしはちょっとなのはちゃんとフェイトちゃんの部屋に用があるから2階に行くで。 ほんならヴィータ、皆をよろしく頼むで?」

 ヴィヴィオと手を繋いでいたヴィータが頷くのを確認して、2階へと上がったはやては一目散に俊の部屋へと向かった。

 ノックなしに部屋へと入ると、俊が何かの資料に目を落としている最中であった。 はやての気配に気づき顔を上げた俊は、はやてを笑顔で招く。 はやてはそれにため息を吐きながら、一冊のあらかじめ懐に忍び込ませていた資料を手渡した。

 それを受け取りぱらぱらとめくる俊。 資料に目を落としながら、俊ははやてに問う。

「不正局員これだけ? たったの40人?」

「元が少ない上に、レジアス中将の件でかなりの人数が手を引いたから、それだけやな」

「まぁ、手を引いた奴らは行動を起こすことができない奴ばっかりだからな。 流れに乗せられる連中ばかりだろ。 きっとこいつらは集団心理で、自然とホワイトなほうに行くだろうな。 まぁ、管理局を変えることができればこの手のタイプは問題ないさ」

 俊の問いに答えるはやては、床に転がっていた雑誌を拾い上げ読み始める。

「それにしても、俊の言った通りそこにリストされているほとんどが疑心暗鬼に堕ちいってたで」

「そりゃそうだろ。 レジアス中将は不正の中心人物みたいな立ち位置だったしな。 なにせバックが最高評議会だし。 そのレジアス中将が墜ちたんだ。 “次は自分かもしれない”“もしかしたら誰かが自分のことをバラしたかもしれない” そう考えるのが普通だろ。 そうして精神も体も疲労させ、そこにこちらがアクションをかける。 まぁ、予定通りだな」

「だからレジアス中将を墜とした後に、一週間から二週間、何もアクションを起こさないっていうたん?」

「その通り。 だからしばらくは、ここにリストしてある人物に軽く接触しておくだけでいいかもな。 あくまで軽く、挨拶を交わす程度でいい」

「それで? 俊はどうするん? 不正局員相手にどう行動していくん?」

「俺? そうだな〜、まぁそれなりにしていくさ。 不正局員なんだし、別に気遣うこともないしな。 クズを相手にするときは、こっちはそれ以上のクズになることが大切だぜ、はやて」

 ごろんと寝転がりながら答える俊は、薬のせいなのかわからないが大きな欠伸をする。

「ほんと心配なんやで? あんたのこと」

「大丈夫さ。 俺は勝ち目のある勝負しかしない主義なんでな」

 はやてはそんな俊を見て、肩を竦めながら結婚式の雑誌を眺めるのであった。




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