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6部分:06.掴んだその手



なんどでも握ってやるさ
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 わたしにとって世界とは脆いものだ。

 この世界には力を加えれば破壊できる「目」というものが存在している

 わたしの能力はその「目」を自分の手の中に移動して強く握ることで破壊するものだ。

 どんな屈強な妖怪だろうと私にかかれば一瞬で終わる

 その手を握ることで目の前のものが破壊される

 妖怪・人間・神様・世界

 そこに例外は存在しない

 握ることで砕かれる

 それが当たり前で、かわることのない絶対的な事実

 しかし……もし握っても壊すことのできないものがあるならば?

 この頃、そんなことを考えることがある

 そんなものありもしないのに……だ。

 わたしに勝った白黒の魔法使いにだって、「目」はあった。

 お姉さまにだって「目」はあった。

 これが真実だ

 いくら私が考えたところで答えなど、とうに出ている

 わたしが握ることで壊れる

 わたしのこの手は壊すために存在する



           ☆



「どうしたの、フランちゃん」

 その声でわたしは目の前にお兄さんに目を向ける

 このまえ会ったときとは違い、どこか自信に溢れたその目がわたしをまっすぐに射抜いている。 手にはかわった形のものを持ちながら。

「ねぇ、その手に持っているものは何?」

 わたしの問いかけているものが分かったのか、お兄さんは左手に持ったものを掲げて答えた

「これか?これは、装飾銃って言ってね、こうやって……相手に向かって撃つんだよ?」

 お兄さんの言葉と共にわたしの頬の横をなにかが通り抜けた。

「あれ……?この距離でも当たらない俺の腕って……」

 お兄さんがぶつくさ言っているが、そんなことよりもわたしは、いまのお兄さんの行動で胸の内より広がってくる衝動をゆっくりと噛みしめていた。

 あぁ……壊したい……

 わたしの胸の中でその衝動が激しくなっていく

 頬に垂れる赤い雫を一舐したわたしは、手にもったレーヴァテインを大きく振りかぶりお兄さんに向かって突撃した。

「あんまり早く壊れないでね?お兄さん」



           ☆



「え……?」

 俺の気付いたときには、その剣は目の前まで迫っていた

 地獄の炎を思わせるそれは、いきなりのことで一歩も動けずにいた俺の身体を喰らっていく

「まったく……何しにきたんですか、あなたは?」

「え……?」

 ふいに後ろから放たれた言葉

 死を覚悟して閉じていた目をそっと開けると

「登場するだけ、登場して死ぬなんて何しに来たか分からないわよ?」

 メイド服が破けているものの、怪我はしていない咲夜さんが馬鹿を見るような目で見ていた。

「あ、咲夜さん。 というか、口調変わってません?」

「いまのあなたに敬語なんて馬鹿みたいじゃない」

「あ、そうですか……」

 傍から見れば登場してそのまま死んでいくモブそのものだったしな……

 俺が咲夜さんの理由に納得していると、もう一人の人物がこちらに駆けよって来た

「彼方さんっ!? なんでこんな所に来たんですか!? 屋敷でじっとしてくださいよっ!」

「いやいや、美鈴。 そういう訳にいかないんだよ」

 駆けよって来た門番こと美鈴に指を左右に揺らしながら答えた。

「だって俺、フランちゃんと遊ぶ約束しちゃってるし」

 美鈴は俺の言葉を聞いて訳が分からないという顔をしている

 それはそうだろう。 今の俺は自殺志願者といっても問題ないことをやろうとしているのだから。

 立ち上がりながら装飾銃をしっかりと持つ。

「さってと……やりますか」

「まちなさい」

 歩く寸前、咲夜さんが後ろから声をかける。

「なんですか? 帰れって言われても帰りませんよ? こっちだって、霊夢を怒らせてまで来たんですか」

「帰れなんて言うわけないでしょ? ただ───」

「私達もその遊ぶにかかてくれませんか?」

 咲夜さんの言葉に美鈴が続ける。

「しょうがないな……。 ほんとは俺とフランちゃんで、きゃっきゃうふふやる予定だったのに……」

「あなた一人では数分で死ぬのがおちよ。 言っとくけど、あなたが一番弱いんだからね」

「まあまあ咲夜さん。 そこは私達がフォローしましょうよ」

 俺の隣に咲夜さんと美鈴が並ぶ。

 一方はナイフを構え、もう一方は拳を軽く握る。

「というわけで……フランちゃん。 やろうか?」



           ☆



 風が四人の間を駆け抜ける

 一人は歪んだ笑み

 一人は自信の笑み

 二人は真剣な顔で

「それじゃ……先手必勝でいくわよっ!」

 咲夜がナイフを投げる

 手から放たれたナイフは吸いつくようにフランの元へと

「あははっ……残念でしたっ!」

 フランはその手に持っているレ?ヴァテインでナイフを焼き切る

「こっちですよ。 妹様」

 フランが振り切った瞬間、背後から美鈴が襲う

「おしいよ、美鈴」

 しかしその拳は空を切るだけに終わり当たることはなかった

「今度はこっちから行くよっ!」

 禁忌『クランベリートラップ』

 紫と青の綺麗な弾幕が三人を襲う

「うわっ!?」

 彼方はそれを頭を屈めて避け、そのままフランに突っ込む

「彼方さんっ!?」

 隣で必死に避けていた美鈴が叫ぶ

 その叫びを無視してフランに近づき、銃を構える

 捕えた!!

 そう思ったのもつかの間、フランは片手を彼方に向け弾幕を発射する

「どきなさいっ!!」

 喰らう寸前、咲夜が彼方を突き飛ばす

「あ?あ……避けられちゃった……」

 セリフこそ残念がっているもののフランの顔は楽しそうである

「まったく……何考えてるのあなた!!」

 彼方が突き飛ばされた先に、時間を止めて先に到達していた咲夜が彼方の胸倉を掴んで叫ぶ

「いや?……だって、当たらないんだもん……」

 バツが悪そうに頭を掻く彼方に、咲夜は握った拳を振り下ろすか本気で迷う

 そんな咲夜の気持ちを知ってか知らずか、彼方は咲夜の手をどけながら話しかける

「しっかし……フランちゃん強いなぁ」

「もしかしたらお嬢様より、強いかもしれないわね」

「え゛っ!? マジで?」

 紅魔館の主より強いかもしれないフラン

 以前霊夢から聞いてはいたが、この戦いを通してその凄さを再確認する

「悪いことは言わないわ。 もう引き返しなさい。 後は私と美鈴でなんとかするから」

 優しい口調で帰宅を促す咲夜

 普通ならそれが正しいのだろう

「(でも……でも俺は)」

 ──フランちゃんの笑顔を見ると決めたから

 それこそが彼方がこの地獄を体現しているかのような場所を動かない理由

「咲夜さん。 一度だけ……俺のわがままを聞いてくれませんか?」

 そう咲夜に話しかける彼方の目は、何かを決心したような目をしていた。



           ☆



 咲夜と彼方が話している一方、美鈴は一人でフランを受け持っていた

 しかし力量の差は歴然

 次第にボロボロになっていく美鈴と、先程とかわらない姿をしているフラン

 どちらが有利かは明らかであった

「あははっ!美鈴も頑張るねっ!!」

 嗤いながらもその攻撃の手を休まないフラン

「当たりまえ、ですよっ!!」

 拳に気を込め、フランの攻撃をかろうじて弾く

 しかし、いくら美鈴とて限界というものは訪れる

「はぁ……はぁ……」

 額に伝う汗をぬぐう

「美鈴、よく頑張ったわね」

 その瞬間、美鈴の後方から無数のナイフがフラン目がけて飛んでいく

「咲夜さんっ!!」

 慌てて後ろを振り返る美鈴

「そろそろ終わりにするわよ……。 この遊び」

 両手に10本のナイフを構える咲夜

「あれ……?もう終わりなの?」

 咲夜のナイフを全て焼き尽くしたフランが問う

「えぇ、そうです妹様。 もうこんな時間ですし、明日の仕込みもありますから、ねっ!!」

 言い終えると同時にナイフを投げる咲夜

 その咲夜のナイフと同時に美鈴が駆ける

 対するフランも狂気を浮かべて突進する

 先に手を出したのは美鈴だった

 ナイフと合わせるように回転蹴りをお見舞いし、そのままもう片方の足で顎を撃ち抜こうとする

 それに臆することもなくフランは突貫し、その代償として片手を失う

 あぁ、楽しい

 その感情だけが身体を支配する

 千切れ飛んだ腕など気にも留めずに、美鈴の腹に弾幕を叩き込み、吹き飛ばし、後方に控えていた咲夜を襲う

「咲夜さんっ!?」

 弾幕を受け地に倒れながら、咲夜の名前を叫ぶ美鈴

 そんな美鈴を安心させるかのように片手を上げて、咲夜は呟いた

「頼んだわよ、彼方」

 その瞬間、咲夜の立っていた場所に彼方が現わる。それと同時にレーヴァテインに飲み込まれていく

 炎に飲み込まれる身体

 遠くのほうで美鈴が叫ぶ

「お兄さん……なにしにきたの?」

 いきなりの彼方の行動にフランは思わず、目が点になって呟く

 その時、炎の中から声が聞こえてきた

「それはね……。 ──君の手を掴みにきたんだよ」

 その声と共に彼方の手はレーヴァテインを握っているフランの手を強引に掴んだ

「やっとできたぞ。 あの時できなかった握手」

 不敵に笑いながら不知火彼方はハッキリと聞こえる声でフランに告げた



           ☆



 訳が分からなかった

 ただの人間であるお兄さんがレーヴァテインを喰らって生きていることもそうだし、何より何故そこまでして握手をしようと思ったのかも分からなかった

 わたしは思わずレーヴァテンを消してお兄さんに話しかける

「ねぇ……。 どうして握手なんてしてるの?」

「どうしてって……ほら、まえは握手断られたからさ。 今度こそはと思って」

 笑みを浮かべるお兄さん。 この人はいまの状況が分かっているのだろうか?

 握手ということは、わたしと手を握っている状態。 人間と妖怪は力からして違う。 それは握力だって例外ではない。 わたしが強く握ることで、お兄さんの手を砕くことができるのだ。

 なのに───なのに、それができない自分がいる

 その事実にわたしは驚いた

「お兄さん、その手を離してよ……」

「断る」

 なんで?なんで、わたしはこの手を砕くことができないの?

「わたしの能力知ってる? 『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』っていってね? この世界には力を加えれば破壊できる「目」が存在するんだよ。 そしてわたしはその「目」を動かし強く握ることで破壊できるんだ」

 そういいながら、わたしはお兄さんの「目」を手に移動させる

 あとはこの手を強く握れば終了

「なぁ……それってどんなものでも壊すことができるんだよな?」

 わたしが握る瞬間、お兄さんが話しかけてくる

「うん。 それに例外はないよ」

 あぁ……なんで動かないんだ

「だったらさ……」

 ────俺とフランちゃんが友達だって事実も壊せるのか?

「え……?」

 それはわたしにとって思いがけない言葉だった

「だからさ、あの時俺達は友達になっただろ? 例え俺という存在をフランちゃんが壊そうがこの事実だけは壊せはしないだろ?」

 なに馬鹿なことを言ってるんだろう?

 わたしに友達なんていないのに、いらないのに

 不愉快だ、はやく壊しちゃえ

 そう思えば思うほど、わたしの手は動かなくなっていく

「霊夢から聞いたよ。 フランちゃんの能力」

 動いて───動いてよ!!

 何故だがわたしの目から涙が零れてきた

 悔しいのだろうか? それとも情けないのだろうか?

「確かにおっかない能力だよな」

「他人事みたいだね。 お兄さんが握っているこの手だって、そのために存在している手なんだよ」

「そのためだけねぇ……。 俺はそうは思わないけどな。 ───君のこの手は誰かとこうやって繋がるために存在している。 俺はそう思っているよ」

「え……?」

 わたしは思わず顔を上げる

 涙で視界が霞むなか、お兄さんは優しそうな目でこっちを見ていた

「そう考えたほうが素敵だろ?」

 見上げたお兄さんの顔はとても優しそうで、その笑みに釣られて思わずわたしも笑顔がもれた

「お兄さんって馬鹿だね」

「あぁ、大馬鹿ものだな」

 なにがそんなに楽しいのか、わたしの皮肉にも笑って答えるお兄さん

「ねぇ……お兄さん。 わたしが遊んでほしいって言ったらいつでも遊んでくれるんだよね……?」

「あぁ、一年経とうが十年経とうが、フランちゃんが俺との遊びを望む限り、俺はいつでも相手になるよ」

 あぁ……ようやくお兄さんが壊せないわけがわかった。 涙が零れてきた訳もわかった

「じゃぁ……今夜はわたしの負けでいいかな……」

「おっ!お兄さんに勝ちを譲ってくれるわけか」

「うん。今回だけだよ」

 だって──友達を壊すことなんてできないから。 そして、お兄さんの言葉が嬉しかったんだ

 そう思った瞬間、わたしをお兄さんの砲撃が襲った



           ☆



「あ? 身体が動かねえ。 フランちゃんどいてくんない?」

「ダメだよ。 お兄さん。 友達のお願いなんだから」

 夜の道を少年が女の子を頭に乗せて歩く

 その足取りはどこか重そうだった

「ぜってー霊夢に怒られるよ。 お守りも壊しちゃったし……」

 理由は実に単純だ

「あぁ、紅魔館が見えてきた……」

 紅魔館が見えると、少年の足はもっと重くなり、動きスピードも遅くなっていた

まったく……。 フランはそう心の中で呟きながらも少年の動く足に合わせて揺れることを楽しんでいたりもした

「そういえば、フランちゃん」

「ん? な? に?」

 あと数メートルのところで少年がフランに呼びかける

「俺、フランちゃんは一人だと思っていたけどさ……。 実はそうじゃなかったんだね」

「どういうこと?」

 ? マークを浮かべるフランに少年は門を指さした

 フランが指のほうを向くと

「「おかえり、フラン」」

「「「おかえりなさいませ、妹様」」」

『おかえりなさいませ、妹様』

 そこにはレミリアをはじめ、パチュリーに小悪魔、咲夜に美鈴、そして妖精メイド達が笑顔でフランを出迎えていた

「よっ! 彼方。 生きててよかったな!」

「魔理沙、洒落にならないから」

「彼方。 後で覚えておきなさい」

「霊夢さん。 できればお手柔らかに……」

 早々に絡まれる彼方

 そんな彼方の頭から降りたフランは、皆の前で最高の笑顔でいった

「ただいま、みんな」



           ☆



 わたしにとって世界とは脆いものだ。

 この世界には力を加えれば破壊できる「目」というものが存在している

 わたしの能力はその「目」を自分の手の中に移動して強く握ることで破壊するものだ。

 どんな屈強な妖怪だろうと私にかかれば一瞬で終わる

 その手を握ることで目の前のものが破壊される。

 妖怪・人間・神様・世界

 そこに例外は存在しない

 握ることで砕かれる

 それが当たり前で、かわることのない絶対的な事実

 しかし……もし握っても壊すことのできないものがあるならば?

 この頃、そんなことを考えることがある

 そんなものありもしないのに……だ。

 わたしに勝った白黒の魔法使いにだって、「目」はあった。

 お姉さまにだって「目」はあった。

 これが真実だ

 いくら私が考えたところで答えなど、とうに出ている

 わたしが握ることで壊れる

 わたしのこの手は壊すために存在する

 そう思っていた自分にさようなら。

 そして────

 大切な友達と家族をみつけた新しい自分に───こんにちは




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