×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。




27.姫の気持ち/こりない馬鹿



 霊夢と紫が博麗神社を出て異変を調査しに行っていたそのとき、彼方は一人ポツンと先程までいた部屋に取り残されていた。正確には留守番を任されていた。しかしこの男、この前の春雪異変からもわかるように留守番を任されたからといって、その任を忠実にこなす男ではない。本人は自覚がないが、進んで地獄のような道を進む男なのだ。弱いにもかかわらず。

「……さて、俺も行くか」

 ふいに立ち上がり、部屋を出て霊夢から借りている自分の部屋へと進む。

「えっと……パチュリーと作ったスペルカードはっと……」

 自分の棚の中をゴソゴソと探しながら、パチュリー指導の元、作ることとなった新しいスペルカードを探す。

「お、あったあった!」

 そして一枚の札を取り出し、ポケットに入れる。そのときにホルスター越しに伝わるハンドガンの感触に思わず笑みが零れる。 大丈夫だぞ、お前の傍には俺がいるからな。まるでハンドガンがそう彼方に言い聞かせている気分に陥る。

「さてと……いってきます」

 誰もいない博麗神社に向かって小さな声で言う。もちろん返事は返って来ない。

 そして石段をゆっくりと降りて行く。

「(光波動のパワーが安定しないからな、このスペルカードが頼りだぜ)」

 彼方が向かう先は一度足を踏み込んだら、幸運の兎に出会わなければ帰ってこれない。そんな竹林だった。

▽    ▽    ▽     ▽

 夜の帳の中で紅白の腋出し巫女服を着て、異変の解決に乗り出した博麗霊夢。その顔はどこか浮かない顔をしていた。

「あら、どうしたの霊夢。なにか心配ごとかしら?」

「いや……そうじゃないけど。なんか胸がざわつく感じがするのよね。」

 問われる問いに対して首を傾げながら、なんともスッキリしない返答を返す。自分自身でもよくわかっていないのだろう。

「ふ〜ん……。まぁ、貴女がいうのなら何かが起こるのでしょうね。とっても厄介なことが」

「これ以上に厄介なことってなによ……。この異変の時点でだいぶ厄介なんですけど……」

 うんざりとした表情で答える霊夢に、紫はくすくすと笑って見せた。

「それで、どこに向かっているのかしら?」

 霊夢の隣をついていく紫は、霊夢が先程から一切の迷いや躊躇いもみせずにもくもくと前へ進んでいることから異変の元凶元へ進んでいるのだと確信して話しかける

「永遠亭よ」

「根拠は?」

「巫女の“カン”」

 そう言い切る霊夢。普通であるならばカンなんて信じるか?と思わるが異変に関しての巫女の“カン”は異常ともいえる正確性を秘めている。そして紫自身も月に絡んでいることから、今回はあの二人が犯人であろうことは推測できた。遥か昔、妖怪を率いて攻め入ったが、その圧倒的な科学力で負けてしまった相手。月の住民であろうと

▽    ▽    ▽     ▽

「やあ、彼方。どうしたんだこんな所で?」

 神社を出て、いざ竹林に入ろうとした矢先後ろから声がしたので振り返ってみると、俺の仕事場の上司にして人里の守護者である上白沢慧音さんが立っていた。

「あれ?慧音さん。慧音さんこそ何をしているんですか?」

「私か?私は……まぁ、ぶらぶらとな。」

 なんとも歯切れの悪い慧音さん。こうして困った顔をみるのは珍しい。フランちゃんに子供はどうやって産まれるのか聞かれていた時依頼だな、こういう表情をみるのは。

「いいんですか、人里のほうは?今は異変の最中ですから人里の人達も慧音さんが居なくと不安だと思いますよ?」

「いや、それに関しては大丈夫だ。妖怪達が絶対に手を出せない所に皆非難させているからな」

 自信満々にいう慧音さん。……しかし幻想郷にそんな安全地帯なんてあったかな?どこもかしこも妖怪だらけだと思うんだけど……。慧音さんがそういうならそうなんだろう。

「それに君こそなんなんだ。異変の最中に出歩いて、冬の妖怪のときのように死の一歩手前……なんてことになったら今度こそ、色んなところから君は監禁あるいは監視されてしまうぞ。霊夢からもあの時は大目玉をくらったそうじゃないか」

 う゛っ……。そいえばそうだった。あのときの霊夢は怖かったからな〜……。それにこっちは留守番を任されている身だし。また勝手に家を出たなんて知られたらえらいことに……。それだけじゃなく、手前みそな話になっちゃうけどフランちゃんは俺のことを慕ってくれてるみたいだし……。もしも俺がまた危ない目に会ったと分かったら眷属にしちゃうかも……いや、流石にそれはないか。

「あの……このことは内密に……。慧音さんの仕事を手伝うという形で手を打ってもらえませんか?」

「はぁ……。わたしの前で買収か?」

 色々考えた結果、慧音さんには見てないことにしてもらおうとしたのだが、とうの慧音さんはそれが気に入らなかったらしくすごんできた。……めっちゃ怖い。

 慧音さんの眼力をみて、身を震わせる俺。 そんな俺をみて慧音さんはふぅ……。とため息をついた。

「まったくお前には呆れるよ。……今回だけだぞ?」

 そういってそっぽを向いてくれた慧音さん。やっぱり話が分かる人だな。

「ありがとう慧音さん!」

 俺を抱きつきたくなる衝動を押さえながら頭を下げ、竹林の中へと入って行った。

 さてと……あの人に問いたださないといけないことがあるんだ。少しだけスピードを上げよう。

 去っていく彼方を慧音は黙ったまま見送る

「……そういえば、彼方がここに来る理由とはなんだろうか?」

 異変を解決? それは巫女が乗り出している。その他にも色々な奴らが乗り出しているみたいだし、その線は薄いだろう。

 筍でも食べたくなった? いや、流石にそれはないか。

 それともいかがわしい理由とか? いや、その線は……だが彼方も男であることはかわりないし……。

 うーむ……。妹紅も心配だが、彼方はもっと心配だ

「心配だ。隠れて様子をみていよう」

 彼方が視界に消えてからまだ数分も経っていまい。探せばまだ近くにいるだろう。

 私は飛びだした妹紅も探すのを一旦止めて彼方を探すことに専念した。

▽    ▽    ▽    ▽

「ときにお嬢様」

「なにかしら咲夜?」

「先程から色々な所を飛び続けているのですが……目星はついているのですか?」

「う〜ん……とくにないわね」

「……ないんですか」

 先程から異変によって活発化している妖精を倒しては、また次の場所にふらふらと向かい、そこでみつけた妖精を倒してはまた別の場所に赴く。紅魔館の主、レミリア・スカーレットは先程からそんな調子でいる。そしてその後ろは咲夜は黙ってついていく。

「けどそうねぇ……あっちらへんとか怪しいかもしれないわ。行きましょうか、咲夜」

「はぁ……」

 しばし考えたかと思うと、レミリアはいきなり指で方角を示し、その背中の翼を大きく羽ばたかせいった。 そんな主を咲夜は少しだけ気の無い返事をしながらも、ついていった。

 レミリアが指した方角は奇しくも迷いの竹林であった。

 ──同時刻──

 レミリア・咲夜が竹林に向かった頃、魔理沙とアリスもまた迷いの竹林を目指していた。

「はぁっ?満月がなくなったぁ!? いやいや、満月ならあるじゃねえか、ほらっ!」

「だーかーらー、それが違うって言ってるのよ! 魔理沙は人間だからわからないかもしれないけど、私達からしてみればわかるのよ、その違いが。 ただ……今回は巧妙に隠されていて皆、気付かないけどね」

「ふ〜ん……。あぁ、改めてみると、確かにそんなきがしないでもないぜ」

 魔理沙は帽子が落ちないように手で押さえてから、満月を見上げる。道中、暇なので何故、自分を誘ったのか、だいたいどういう状況なのか教えてもらっていたわけだが……。

「なるほどねー。それで、アリスは自分で調査して解決しようと思ったけど自分一人の力だけでは無理があったから、私に助力を頼んだと。」

「う、うるさいわね。 しょうがないじゃない、私だってこの異変は早々に解決したいんだし……。 ってなに笑ってんのよ!? なにか文句でもあるの!?」

 自分の髪を手でいじり、くるくると指に絡めて言い訳気味になりながら、喋るアリスを魔理沙は隣で笑う。 その笑いにアリスが気付き、魔理沙に向かって少し語調を強くする。

「いやいや……、アリスって本当にあたしがいないとダメだな、と思ってさ」

 アリスに向かってウインクを決める魔理沙。 そんな魔理沙にアリスは頭を抱え、嘆息を漏らす

「それはこっちのセリフよ。 本は借りっぱなし、部屋だってゴミゴミしてるし、食事だって摂ってないときはあるし、睡眠だってそうでしょ?」

 早口でまくし立てるアリスに、魔理沙はほんの少しだけ自分との距離を離す。

「それに食事だってキノコばかり───って魔理沙どうしたのよ?」

「いや……どうしてアリスがそこまで知ってるのかな〜、っと思って。正直、少しだけ怖いぜ……」

「なっ!?なにいってんの!べ、べつにあんたが不健康な生活を送って病気にならないか心配でこっそり様子を見に来るとか絶対にないから!」

「あ……うん」

 なにか怒られたけど、さっぱりわからないけど、心配して見にきてくれるってことでいいのか?

 しかし……満月ねぇ……。 あたしとしては、それよりも少し気になることがあるなぁ。

「なぁ、アリス。ちょっと気になることがあるから、そっちを先に調べたいんだけどいいか?」

「? 別にいいけど……そんなに大事なの?」

「まぁ、ある意味な」

 推測の域を出ないけど……まさか……な

▽    ▽    ▽    ▽

「やべぇ、迷った」

 竹林を歩きはじめてどれくらい経っただろうか? さっきから時間の感覚があやふやになってきた。 外の世界ではこういうときは携帯を開いて時間を確認すればいいんだけど……あいにくこっちにきてからはすっかりいらないものになったから、持ってきてないし、電池も切れてるよな。

 それにしても……夜の竹林……にかぎらず森なんかはなんでこうも怖いのか。昼はそうでもないけど、夜となると表の顔を引っ込め、裏の顔を盛大に出してくる。 いまにも襲いかからんとするか、はたまたこの迷路からの脱出を拒むかのように思えてくる。

「なーんてな。そもそも俺は用があるわけで進まずにはいられないわけよね」

 自分の中にある、ひとかけらの勇気を抱きしめ、わざと楽しいことを考えながら俺は歩みを進める。

「にしても……ほんと此処って不気味だよな。いまにも誰か背後から襲ってきそうだよ」

 あるわけないと分かっていながら俺は両手を横にしてやれやれと頭を振った。

「あら、中々の予感的中率をお持ちのようで」

「………………え?」

「フリーズ。夜の散歩はどうだったかしら、不知火彼方?」

 俺の背後から誰かが指を押し付けているのがわかる。 そしてこの声にも俺は聞き覚えがある。

「やあ鈴仙。奇遇だね、こんな所で会うなんて。どうだい、俺と夜の散歩と洒落こもうぜ」

 鈴仙に言われたとおり、俺はその足を止め、無意識に両手を上げながら慣れないアプローチというものをやってみたのだが……

「残念ね。あなたがもう少しかっこよかったらその話に乗ったけど────」

 鈴仙の言葉が途切れるとともに、俺の背中に痛みが発した。

「う……がっ!」

 なにが起きたのか、俺はその疑問を持つ間もなく一気に前に倒れ込んだ。 背中を押さえながら俺はホルスターに差してあったハンドガンを抜き、構える。

「────私、あなたみたいな人間、そもそもタイプじゃないの」

「はは……。それじゃ、俺がどれだけカッコ良くなっても意味ないじゃないか」

 まったく……。恨むぜ? 輝夜さん。 俺と鈴仙の相性は最悪なんだからさ。

▽    ▽    ▽     ▽

 永遠亭の一室にて、向かい合うように八意永琳と蓬莱山輝夜は座っていた。

「動きがありましたね」

「ええ、そうね。まぁいつかは気付かれることだったしいいんじゃない? それよりも向かってくる相手よね。どっちが相手するかしら?」

「そうですね……。では、私が行きましょうか?」

「それじゃ、よろしくね」

 最小限の会話だけで、席を立ってしまう永琳を輝夜は既にみていない。

 すると、何かを考えていた輝夜は盛大にため息をついて、おそよ姫には似つかわしく動作で頭を掻きむしった。

「あぁ……あの子に鈴仙を任したのは少し危険だったかもしれないわ。いまさらになって不安になってきたわ」

 一度はあの子に任せたものの、後から永琳にそれとなく聞いてみたら鈴仙以下の戦闘力みたいだし……そもそもあの新聞の記事を鵜呑みにしたのが間違いだったかもしれないわ。鈴仙もあの子のこと毛嫌いしているみたいだし……。 鈴仙は此処に来る前はエリートの軍人。いくら妖怪と人間が公平をきすための弾幕勝負といっても、地盤が違いすぎるわ。けど……いまは彼に賭けるしかないのも事実なのよね。

「すこし……様子を見てこようかしら」

 カラカラと障子をスライドさせて誰もいない廊下を歩く。

「あの子が此処に来て、何年経つのかしら?」

『助けてください!』

 そういって私の目の前で倒れながらも、懇願した兎。

 “レイセン”という兎。

「あなたはあれから一度も笑った顔をみせてはくれないわ。」

 私はわがままな姫だから、あなたが嫌といっても笑顔をみるまで止めないの。

 本当の笑顔をみるまで、伸ばしたこの手を気付くまで決して止めないわ。

▽    ▽    ▽    ▽

 その頃の幽々子ペア

「このウナギおいしいわー! もっとおかわり頂戴!」

「はい!ありがとうございます!」

「あの幽々子さま……。当初の目的忘れてませんか?」

 偶然みつけたウナギ専門の屋台で舌鼓をうっていた。

 幽々子&妖夢ペア

         離脱




まえへ もくじ つぎへ
なた豆茶 ■物置 ■絵画 ■雑記 ■繋がり ■記録帳