32.ちょっとした違和感
先の異変で怪我を負った俺は、あれからほとんどの行動を霊夢によって制限されていたわけだけど、今日この日をもってようやく解放された。 ごめん、逃げだした間違いだった。
「さて……手引してくれた萃香には後でお礼をあげるとして……。 まずは紅魔館に行かないと。」
スペルカードを考えてくれたパチュリーにお礼を言わないといけないし、あれから咲夜もたまに俺の様子をみにきてくれた……でいいんだよな、なんか俺の怪我の様子をみて心なしか嬉しそうにしていたけど。
「でも……できることなら行きたくない……。 ぜったい、なにか言われそうだし……」
まだ本調子じゃない体に、行きたくない病を発症させながらも俺は博麗神社への石段を降りようと足を階段につけた瞬間、膝かっくんのような状態になり一気に階段を転げおちた。
「いっつ……」
ぎりぎり受け身をとることができた俺は、腕についた小石を払いながら鳥居のほうに目を向けた。
「おかしいなぁ……。 いま誰かに膝かっくんされたような気がしたんだけど……」
気になって周囲に目を向けては見たものの、人影の姿はみえず。 また、俺のほうもいまだに本調子ではないのであんまり考えないようにして紅魔館への道のりを歩くことにした。
☆
「あっ!彼方さん、もう調子は大丈夫なんですか?」
「激しい運動はまだ危ないけどね。 耳のほうはなんとか。 今日は霊夢が萃香と人里で買い物に行ってるからその隙に逃げ……いや、なんでもない」
いつもニコニコ紅魔館の門番は、俺の口から大丈夫だという旨を伝えるとよりいっそう笑顔を深めた。 美鈴は紅魔館の門番という立場から俺の見舞いに来れなかったことを少し悔いているみたいだったが、俺からしてみれば正直な話、美鈴が来なくてよかったと少しだけ思ってしまった。 だって、あんだけ一生懸命に俺に教えてくれているのに、当の俺は鈴仙に手も足も出ずに負けたのだから。 弾幕にしてもそうだ。 幻想郷でも最強格に位置する霊夢に教授してもらっているのに、あんな体たらく。 霊夢は「これからよ。 それに頑張っているのは私がよく知っているから大丈夫よ」なんて優しい言葉をかけてくれたけど……やっぱり申し訳ない。 というか、悔しい。
「ん? どうしたんですか、彼方さん。 門を開けましたよ?」
「へっ……? あ、ああ、悪いな。 それじゃ、お邪魔します」
「はーい!」
手を振ってくれる美鈴に手を振り返して、俺は紅魔館の敷地に足を踏み入れる。 いつみても立派な館だなぁ……。 いや、博麗神社が立派じゃないということではないんだけどね。 それにあそこには亀がいて餌やりとかも面白いし。 家主が霊夢なだけあって結構行動に制限されているというわけでもないし。 って、なんで俺は博麗神社のフォローみたいなことしてるんだろう?
とりあえず紅魔館の屋敷内に入った俺は、地下への入口を探す。 あいかわらず広い場所なので迷いそうだ。 たしか、こっちでいいはず……。
「……あれ? あそこにいるのは咲夜じゃん」
角を曲がったところに、咲夜がモップを片手に床を掃除している姿が目に入った。 こうしてみると、咲夜もほんとにメイドしてるんだなぁ……。 …………あれ? そういえば咲夜なら俺が屋敷に入って来たことくらい知ってると思うけど……。 もしかしてそんなことも忘れるくらい掃除に集中してたのかな。
☆
今日は博麗結界が新しく構築される関係で花がどこもかしこも咲き乱れ、自然そのものである妖精たちも活発化する。 それでなのかわからないが、家のう妖精メイドたちもいつにもまして騒がしい。 ほんと……壊してばっかりでろくに掃除をしないんだから。
「花が綺麗だから、今夜はテラスで食事なんてのもいいかもしれないわ。 お嬢様と妹様、パチュリー様に小悪魔。 あぁ……美鈴も特別に呼んであげてもいいかもね」
あらかたモップがけを終えた私は、傍に置いていたバケツにつけて一息いれる。 そういえば、彼は今頃なにをしているのかしら。 妹様がよく遊びに行かれていたようだけど……体に触らなければいいけどね。 彼の性格上、こういう日に出歩いてなにかしら事件に巻き込まれるし……。 そもそも、たいして強くない癖に口だけは達者なのよね。 犬みたいによく吠えて。 周りの支えもあってか、なんだかんだいって結果は良いみたいだけどね。
「って、なんで私がアイツの心配をしないといけないのよ……。 こっちだって色々と大変なのに」
この前の異変、たしか永夜異変だったかしら。 その異変のときにお嬢様は永遠亭の医者と弾幕勝負をしたのだけど……決着がつく前に相手がその場を離脱。 本気のお嬢様を前にして逃げおおせたことも凄いのだけど、それよりもなによりも……それからというものお嬢様は大変月に興味を示したみたいで、なにやらパチュリー様と計画を立てている始末。 その計画に合わせて、私も幻想郷の中を動き回ることに。 お嬢様のためなら、喜んで動くのだけどね。
「誰か肩でも揉んでくれないかしら」
丁度、横にいる妖精メイドが首を傾げたがそれを、半ば無視する形で私はバケツとモップを持ってこの場を後にしようとした。 それより、この妖精メイドは虫取りアミなんてもってどこへ行く気なのかしら……。 あぁ……ほんと頭が痛くなってくるわ。
私は頭を押さえながら歩こうとしたが、前方で何かにぶつかり尻もちをついた。
「いった〜……。 こら、妖精メイドっ!って……誰もいない……」
あれ? たしかに誰かとぶつかったんだけど……。 てっきり妖精メイドだと思ったけど、考えてみるとおかしいわね。 妖精メイドは私よりも背が小さいわけだし、そもそも紅魔館の妖精メイドで私に悪戯をしようと思う子なんているはずがないし。
「まさか、侵入者?」
だとしたら、美鈴から連絡ないしは戦闘の音で気がつくはずよね。 ……まさか、また寝てたりなんてことはないでしょうね。
「ちょっと様子を見に行こうかしら。 ……いや、それよりもさっきの場所に何があるのか調べるほうが先決ね」
美鈴の様子を見るのは後回しにして、いましがたぶつかった所に手を伸ばす。 すると手はなにかにぶつかり前進を止める。 私はそのぶつかった所を中心にゆっくりと左右に動かす。 右へ動かすと何か尖った部分にいきあたり、左に動かすと柔らかいものに触れる。 その感触にすこし驚きながらも、私は意を決して手を下へとさげる。 ふと、いままでとは違う感触にいきあたり一瞬手を引っ込めたものの、もう一度ゆっくりと触れる。 それは強く押すと反発でもどってくるようで、ちょっと面白い。
「…………これはなかなか…………」
ちょっと楽しくなりはじめた咲夜は、年相応の可愛らしい笑顔を浮かべ正体不明のなにかをずっと弄り続ける。
「ふむ……押したときの力によって反発する力も変わりますね……」
「あの〜……咲夜さん?」
「ふむ……なぜあなたが私の目の前にいて、私に唇をプニプニされていのでしょうか……」
「いや、それは俺が聞きたいんだけど。 さっきから呼んでたじゃん」
いきなり現れた彼は、およそ常人には理解不能な言葉を喋る。 かわいそうに……、霊夢が外に出さないからきっとストレスでおかしくなっちゃったのね。
「それはそうと、どこから入ってきたのよ」
「いや、美鈴が門を開けてくれてそのまま玄関から入ったけど……」
「ふ〜ん……」
美鈴ったら、また報告し忘れかしら。
「それで? 今日はなんのようなの?」
立ち上がり、スカートを直しながら聞く。
「えっと……パチュリーに用があってきたんだけど」
「そう。 ならこんな所で油を売ってないで早くいきなさい」
置いていた掃除道具を持ち、それだけ言って私はその場から時を止めて後にした。
…………姿はおろか、気配すら気がつかないなんて、ちょっとおかしいわね。 あ、ビンタうつの忘れてたわ。
▽ ▽ ▽ ▽
咲夜からの一方的な別れを済ませたのち、俺はふたたび地下への階段を探しだし自分の力では無理だったので、妖精メイドに案内されて目標地点に到着した。 それにしても、咲夜は本当に俺の姿に気づいてなかったのかな? 声だって何度もかけたのに……無視という様子ではなかった。 う〜む……。 すこしだけドキドキしてた俺が馬鹿みたいだ。 まぁ、そのことは後回しにしていまはパチュリーに会いに行くとしよう。
コンコンと控えめにノックをする。 べつに図書館だし、出入り自由な気がしないでもないのが……ほとんどパチュリーの部屋状態なのでノックをすることに。 ちょっと力が弱かったかな? なんも反応がない……。
「開けちゃえ」
「あ、彼方さん。 待ってましたよ?」
丁度開けようと、前に押し出した瞬間に向こう側からも、小悪魔が同じタイミングで開けたようで、おもわずつんのめる形になる。
「おっとっと……。 やあ、小悪魔。 久しぶり、元気にしてた?」
「元気にしてましたよ。 彼方さんも色々と大変だったと伺っております。 お怪我はもういいんですか?」
さりげなく俺の体を止めてくれた小悪魔は、俺を心配そうにみつめる。 おおよそ、咲夜かフランちゃん辺りから聞いたのかな。 小悪魔は一日のほとんどをここの図書館で過ごすみたいだし。
「う〜ん、身体のほうはまだ本調子じゃないけど、行動するのには支障はないと思うよ。 さすがに弾幕勝負は無理だと思うけど」
定期検査をしてくれている永琳さんによると、みえないところで身体が無理をしているみたいだから、やっぱり休んだほうがいいとのこと。 そしてそれを聞いた霊夢が厳戒態勢を敷き、今日までずっと過ごしてきました。 正直な話、やりすぎなんじゃないかと思うけど、あんなにも一生懸命にしてくれたので言いだせなかった。 いや、これで俺が文句を言おうものなら罰が当たっちゃうな。 それに異変なんてものは、そんなしょっちゅうあるわけでもないし、俺が養生している間はすんごい平和だった。 やっぱり、幻想郷は基本的に平和が日常というか、一番というか、自分でもまとめることができないけど、そんな感じだ。
「今日はパチュリー様に会いに来たんですか?」
「うん。 スペルカードでお世話になったしね。 ……ちょっと怖くて足が若干震えてるんだけどさ」
「あはは……ご愁傷さまです」
困った笑みを浮かべながら、俺に手を合わせる小悪魔。 その可愛らしい笑みに騙されそうになるけど、この子俺を見捨てたよね? 完全に見捨てたよね?
「パチュリー様―。 彼方さんが来ましたよ〜」
そうこうしているうちに結構歩いたみたいで、小悪魔が背中を向けて熱心に本を読んでいるパチュリーに話しかける。 しまったッ……完全に好機を逃した……!
「あ、あのさ小悪魔。 パチュリー一生懸命に読書してるし、今日のところはやっぱり帰るよ」
「あら? そんな気を使わなくてもいいのよ? 丁度いま読み終えたところだったし」
パタンと国語辞書くらいの厚さがある本を閉じ、椅子を回しながら俺のほうへと振り向くパチュリー。 あいかわらずの色白です。
「久しぶりね。 元気にしてたかしら?」
「ええ、あれからの日常は平和そのものでしたよ。」
なんでだろう……普通に会話をしているだけのはずなのに、俺の身体からべたつく汗が噴き出て止まないのだが。
「ところで今日はなんの用事かしら?」
「あ、えっと……前の異変のときにさ、その……パチュリーが一緒に考えてくれたスペルカードが役に立ったから……そのお礼を言おうと今日は来たんだけど……」
長く喋るにつれ、どんどん尻すぼみになっていく俺の声。 しかし流石にこの距離ならパチュリーには全部聞こえていたようで
「役に立った? おかしいわね、私が咲夜に聞いた話だとそのスペルカードを使って盛大に自爆したと記憶されているのだけど」
「う゛っ……!? いや……あの……そもそも『七曜鏡花』って俺の体力と集中力が持続するときじゃないと使えないというか……。 あそこで出したのは間違いだったな〜……なんて」
「それはそんな体力と集中力が持続しない状況に陥ったあなたが悪いの。 それを巣終えるカードのせいにするんじゃないの。」
「……はい、ごめんなさい」
素直に頭を下げる。 それもそうだよな……結局俺の力不足だったという真実しかないわけだよな。
「まぁ……それとこれとは別として。 彼方、“七曜”までつけてあげたのに……ちょっとがっかりだわ」
はぁ……と視認できそうなほどのため息をつくパチュリー。 そのため息が俺の心を抉ってくるのをこの方はわかっているのかな。 たぶんわかってないと思うけど。
「パ、パチュリーさまっ!? それはいくらなんでも……」
「いいのよ」
「はぁ……」
「いい、彼方。 いまや幻想郷であなたは注目の的なのよ。 何故だかわかる?」
人差し指を立て、俺の目の前にその指を持っていきながらパチュリーは真剣な表情で俺に問う。 もちろん、俺にそんなのがわかるはずもなく俺はパチュリーの期待にそえるような解答を出すことができず、黙るより他なかった。 そんな俺をみてパチュリーはゆっくりと話し始めた。
「空を飛ぶことも出来ず、弾幕も少量、とくに秀でている才能があるわけもない。 そんなただの人間がどこまで生き延びていけるのか? あまっちょろい目標をかかげてね。もちろん、そんな貴方が気に食わない者は沢山いるけどね。 ああ、安心して。 私は期待すらしてないから」
最後の一言は余計だと思うが……。
「いまは失笑しかされないだろうけど、頑張って強くなったら、いずれ認めてくれるかもね。 ああそれと、さっさとその妖精たちも連れ帰ってもらえるかしら。 本を汚されでもしたらたまったもんじゃないわ」
満足したのだろうか、パチュリーは喋り切った後、俺に背中を向けそのまま横に積んであった本の中から一冊を取り出し、まるで俺の存在なんて消えたかのように本を読み始めた。
「えっと……彼方さん? あの……どうか気を悪くしないでください、というかなんというか……」
「いや、べつにきにしないさ。 それより今日はお暇するよ。 パチュリーも御覧の通り俺にはもう興味ないみたいだしね」
申し訳なさそうな顔をする小悪魔に、きにしてないとアピールするように笑顔で手を振る。 小悪魔はせめて図書館での見送りだけでもと、わざわざ扉の前で、またきてくれ、との旨を伝えて自分の持ち場へと戻っていった。 さてさて……俺も出るとするか。
☆
咲夜やレミリアちゃんやフランちゃんに会うことなく、紅魔館の玄関から出た俺は真っ直ぐに門へと足を進めて行く。
「あ、彼方さん。 もうお帰りですか?」
「うん。 用事は済ませたしね。 それに本調子じゃないからかもしれないけど、なんだか体が重くかんじるし、たまに声が聞こえなくなるんだよね……」
両耳をトントンと叩きながら首をひねる。 パチュリーとの会話のときも、最後にパチュリーは何か言っていたみたいだけど、俺には音として届いてなかった。 口を開けてたし、その後に小悪魔からフォローがはいってたから、俺が見てる夢とかじゃないんだよな。
「あらら……。 う〜ん、それは危ないかもしれませんね。 またお医者さんに見せに行かれては?」
「う〜ん……。 そうしようかな。 ねえ美鈴。 ところで……今日はやけに妖精たちが活発みたいだけど、なにかあるの? それになんだか花も沢山咲いてるし」
門番をしている美鈴の横に立って、改めて外をみる。 やはり自分の勘違いなどではなく、門の前や、湖の畔には沢山の綺麗な花が咲いており、その花の周りで妖精が楽しそうにクルクルと踊っていたり、おいかけっこをしたりしている。 自分の記憶が正しいのであれば、こういったことは今日が初めてだと思う。
「ああ、そのことですか。 これは60年周期で起こることなんですよ。なんでも、60年に1回の割合で外の世界で発生する幽霊が増加して、幻想郷の花に憑くみたいですね。 妖精は自然そのものですから、嬉しいのかどうかはわかりませんが、いつもより騒いでいるのですよ」
「異変って……。 大丈夫なのかよっ?」
「ええ、死神さんがちゃんと処理をしてくれるので、放置してても問題ないそうです。 それになにかあっても、霊夢さんが解決するでしょうし」
う〜ん……そういうものなのだろうか……。 けど美鈴の口ぶりからすると、何度もこういったことは起こっているみたいだし、俺より幻想郷のことを知っている美鈴が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろうな。 それに霊夢だっているわけだし。
「それよりも、鍛錬は怠っていませんか? そっちのほうが私は心配です」
手を後ろに回して、下から俺の顔を覗き込むようにして可愛らしく首をコテンっと傾ける。
「もちろんだよ。 無理なく頑張ってるよ」
俺の答えを聞いて満足したのか、美鈴は何度も何度もうんうんと頷いた。
「えへへ……。 なんだか嬉しいですね。 私が頑張って練った計画を彼方さんが一生懸命にやってくれるなんて。 教える側としても嬉しいかぎりです。 いつの日か、彼方さんと対決できる日が来るかもしれないですねっ! 期待してますよっ!!」
「いやいや無理だってっ!? 美鈴と対決なんて考えられないよっ! それに期待なんてされても……」
期待なんてされてもほんと困る。 これが物語の主人公とかなら、『まかせとけっ!』なんてカッコイイ台詞が吐けるのかもしれないけど、俺はそんな大層なものじゃないんだ。 よくて村人Aとかそんな配役なんだよ。
「ふむ、たしかにそうですね。 過度な期待は重荷にしかなりませんよね」
ああ、そうなんだ。 だから止めてくれ。
「ではでは、彼方さん。 お詫びにこの異変の時だけの限定スポットを紹介しちゃいますよっ!」
「限定スポット?」
「はいっ! まぁ、三途の川なんですけど。 そこにはいまなら沢山の花が咲き乱れていて、とても幻想的な空間になってますよ。 ずっと神社で過ごしてきたみたいですから、良い息抜きになるのではないかと」
両の手を胸の前で組み合わせ、キラキラとした目で語る美鈴。 自分が門番で行けないから、是非とも俺にいってくれと目で訴えかけているみたいだ。 それにしても花……か。 日頃のお礼も兼ねて霊夢にあげるのもいいかもしれないな。 よしっ! そうと決まれば行くとするかっ!
「ありがとう美鈴っ!! 早速行ってみるよっ!」
かくして俺は美鈴に三途の川までの道を書いてもらい、その足でそのまま向かうことにした。
☆
そんな彼方の後ろを尾行している妖精が三人。
一人は赤いヒラヒラの服を着て、金髪を赤いリボンでツインテールのようにしている妖精
一人はちょっと澄ましたような顔をしながらも、心なしか楽しそうにしている、白い服に黒いリボンを胸につけ、さらに白い帽子をかぶっている妖精
一人は青と白の服を着て、頭にちょこんと可愛らしく青いリボンをのせている黒髪の妖精
そんないかにも悪戯大好きです。 と体からオーラを発してそうな三人組はポケットに手を突っ込んだまま、三途の川へと向かっている彼方の後ろを話しながらつけていた。
「危なかったわね、あそこの魔女。 私が咄嗟に音を消さなかったらバレていたわよ」
「元々バレてたよ……」
金髪で太陽を彷彿とさせるような妖精、サニーミルクが腰に手を当てて、へへんっ!とふんぞり返ると、横にいた黒髪の妖精、スターサファイヤがため息を吐きながら呟く。
「だ、大丈夫よっ!! そこの人間にさえ気づかなければいいんだしっ!」
びしりっ!と空気を裂くかのごとくサニーミルクは指を彼方へ突きつける。
「でもさー、この人間まったく気付かないから面白くない。 膝かっくんの時は反応したけど、それ以外は目立った反応してないし」
「う、うるさいわよっ!ルナ! それに膝かっくんだって、ルナがいきなりやりだしたんでしょっ!? 私だってビックリしたわよ?」
全身を白い服で固めたルナチャイルドがすこしだけ面白くなさそうに彼方をみる。 そんなルナチャイルドにサニーミルクは、ちょっと怒りながらルナチャイルドに視線を向ける。
「まぁ、なんにしても……。 もう少しだけこの人で遊びましょう。 結構弄りがいがありそうだし」
「たしかに。 じゃあ、さっそく肩車して遊びましょっ!」
黒髪の妖精、スターサファイヤがいうやいなや、サニーは彼方の肩に飛びつき、よじ登る。 そんなサニーの行動に二人はあたふたするが、一方の彼方はというと、いきなりきた肩の重みで若干足がぐらついたもののなんとか立てなおし、頭にクエッションマークを浮かべたまま三途の川に向かうのであった。