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A's27.なのはスネる



 ティアとスバルの実技が終了してから数分、いまだに結果は出てこない。きっとあの人が関わってるから揉めてるに違いない。まだ落ちたと決まったわけでもないのに、当の二人は敗戦ムードバリバリで落ち込んでる。

「まぁなんだ……ミスったのはショックかもしれんがまだ落ちたと決まったわけじゃないんだから顔をあげろ」

「うぅ……無理だよヴィータちゃん」

「上司に向かってちゃん付けはやめろ」

 流石ヴィータちゃん、二人で落ち込んで下を向いているのにアッパー繰り出すなんて流石すぎる。

「なのはさんだって試験官なら落としますよねぇ……」

「へっ!?う、うーん……そうだねぇ……」

 まぁ確かにあのミスはちょっとなぁ……。

 わたしが二人にどう発言すべきか迷っている間に、無言を肯定と受け取ったのかティアとスバルが二人で肩を抱き合い慰め合いを始めた。

「うぅ……どうせ私達はエースオブエースにつきっきりで見てもらってるのに試験に受からないほどの愚か者なんだ。こうなったらなのはさんに養ってもらうよりほかないよ……」

「そうね……」

「まって二人とも。なにわたしが養うのが当然みたいな流れになってんの。わたしもう子どもが二人もいるんだから無理だよ」

 一人は可愛い5歳児の女の子、一人は犬のようにわたしにくっついてくる19歳児の男。19歳児のほうが手のかかるから厄介なんだよね。

「それにまだ落ちたって決まったわけじゃないから、そんなに落ち込まないの。落ちても昇進試験なんだから受かるまで挑戦すればいいでしょ?」

「でも……落ちたらなのはさんに迷惑かかっちゃいますし、なのはさんの評価も……」

 ……え?もしかしてこの娘たちそんなこと気にしてたの?

「なのはさんは最高の教導官って太鼓判押されてますし、そんななのはさんが一年間面倒を見てくれているんですよ?これで落ちたらなんかもう申し訳なくて……」

 まるで捨てられた子猫のように抱き合う二人。そっか……二人は二人なりでそんなことを思いながらこの試験に臨んだんだ。ほんと、可愛い教え子だなぁ。

 自然とわたしの両腕は二人を抱きしめていた。そっと二人のおでこにキスを落とし頭をよしよしと撫でる。

「大丈夫、わたしはそんなの気にしてないよ。落ちたら落ちたでいいじゃない。受かるまで何度だってわたしが面倒みてあげるから」

「「なのはさん……」」

 わたしからは見えないけど、きっとティアもスバルも安心しきった表情かな?こういう時にこういったケアをするのもわたしの役目だもんね。それにしてもそんな想いで臨んでいたなんて……ちょっとだけ二人に対する考えが変わったかも。

「(二人とも目が血走ってて顔が変態そのものでなのはの髪を舌でテイスティングしてるけど、まぁなのはには知らせないほうがいいな。なんか感動してるっぽいし)」

 訓練終わりのプリクラくらいなら一緒に撮りにいってあげてもいいかな!

 ピンポンパンポーン

『Aランク昇進試験・実技の部の合格者が発表されました。受験者は速やかに確認し、試験官に今後の指示を仰いでください』

「あ、結果が発表されたみたいだよ。さ、いっておいで」

 二人の肩を押して公表されている会場に向かわせる。

「ふぅ……どう思う?ヴィータちゃん」

「試験において誤射は最大のミスだ。それに加えていつも通りの動きが二人ともできなかったからなぁ。ただ、やっぱりなのはが教導しているだけあって他よりは頭一つ分実力が抜きん出ていたことは事実だ。普通の採点ならギリギリのギリギリで及第点。なのはと同じ教導官が試験なら……下手したら落ちたかもな。やっぱ試験で誤射はマズイだろ」

「終盤挽回してたんだけどねぇー……」

 思わずため息がでる。二人にはあんなこと言ったけど、こっちだって責任は感じるんだよね。やっぱメンタルトレーニングをもっと取り入れるべきだったかな……?

 自分自身の反省点を探していると、ポケットにいれていた携帯が振動する。ヴィータちゃんに断って携帯を開くとフェイトちゃんの名前がディスプレイに表示されていた。通話ボタンを押して耳にあてると、わたしの癒し100%であるフェイトちゃんの困った声が聞こえてきた。

『もしもしなのは?いま大丈夫?』

「うん、大丈夫だよ。どうしたのフェイトちゃん?」

『いや……ちょっと俊がなのはの声を聞きたいらしくて……』

「へ?俊くんが?」

 な、なになにいきなりそんなわたしの声が聞きたいだなんて!ほんともう俊くんったらわたしがいないと何もできないダメダメさんなんだから!まったくこまっちゃうなぁ。甘えん坊なんだから。

「いいよ。そんなに俊くんがわたしの声を聞きたいくらい寂しがってるならしょうがないなぁ。忙しんだけど、仕方ないにゃぁ」

『……もしもしコイキング?』

「張り倒すぞハゲ」

 いけないいけない、せっかく声を聞きたくて電話してきたのにハゲはダメだよね、ハゲは。

 咳払いを一つ、先程より明るく可愛らしい声を出すように努めて電話口の彼に話しかける。

「どうしたの俊くん?なにか嫌なことでもあったの?」

『心の安寧を保ちつつ現実逃避するためになのはの声を聞きたかった。なのは、俺もうダメだ。挿入は出来なかったけど、ガーくんに顔射かましてしまった。あげくのはてにはお掃除もさせようとしてた。フェイトがビンタして正気に戻してくれなかったら俺の初体験の相手がアヒルになるところだったよ』

 どうしよう俊くんの話にまったくついていけない。

『しかも量がすごかった。びゅっるるるるるるるッ!って感じで。そんでいま1階でリンディさんと桃子さんと士郎さんが家族会議してる。助けて』

 どうしようそんな家に帰りたくない。

「あ、あのね俊くん?おちついて?俊くんいま混乱してるみたいだから。いい?わたしの質問にゆっくりと落ち着いて答えてね?」

『うん』

「よし、いくよ?俊くんはいま何をしていますか?」

『自分の部屋でヴィヴィオを抱っこしながらフェイトの太ももを触っています』

 頭の血管がキレそうになる。うらやましい!フェイトちゃんがうらやましい!別に俊くんのことなんてなんとも思ってないけど、そんな空間にいれるフェイトちゃんがうらやましいっ!

「そ、それじゃぁ俊くんはなんでそんなことをしてるんですか?」

『フェイトが泣きながら「アヒルに負けるのはいやっ!俊もどって!アヒルより女性のほうが絶対にいいから!」っていいながら太もも触らせてくれたから、そのままずっと触ってる』

 くそぉ……!わたしだって太ももには自信あるもん!おっぱいではフェイトちゃんに勝てないけど太ももなら勝てるもん!絶対に負けないもん!

 ……というかさっきから俊くんはなんでそんなことになってるんだっけ?

「俊くん?もう一度聞くけど、なんで俊くんは自室でヴィヴィオをだっこしながらフェイトちゃんの太ももを触ってるの?そしてなんでおかあさんとおとうさんとリンディさんが家で家族会議してるの?」

『……挿入しようとしたから』

「…………は?」

『アヒルに挿入しようとしたら家族会議にまで発展した』

「なんか頭痛くなってきたんだけど」

 頭痛が……!俊くんの発言の一つ一つがわたしの頭を締め付ける!なんてバカな頭をもってるの。もう死にたい、こんな男と幼馴染なんて人生の汚点なんだけど。

『あ、桃子さんが呼んでるからちょっと行ってくる』

「はっ!?ちょ、ちょっと俊くん!?まだ話終わってないから!」

 引きとめようと俊くんに声をかけるが、無情にも俊くんはわたしとの会話を切り自室のドアを開けた。流石にフェイトちゃんの携帯だけあってドアの開閉の音まで聞こえてくる。

『もしもしなのは……?』

「あ、フェイトちゃん?あのさ俊くんどうしちゃったの?ガーくんにその……えっちなことをしようとするなんて。ヴィヴィオのことは釘刺しておいたけど、ガーくんはまったくノーマークだったよ」

『わたしだってノーマークだったよ。どこの次元世界にアヒルと初体験を済ませようとする男がいるの。それも私やなのはと一緒に住んでいながら』

 そう、そこなんだよね問題は。わたしやフェイトちゃん、少なくてもフェイトちゃんは家にいたわけだしフェイトちゃんは女のわたしからみても素敵で可愛がってもらいたいというかなんというか──いけない、わたしまでトリップしそうになった。

「というかフェイトちゃん、俊くんに何かした?」

 やっぱフェイトちゃんが可愛い以上、俊くんがガーくんに初体験をあげるなんて考えられない。というか考えたくない。ガーくんに負けてるなんて絶対に考えたくない。

 フェイトちゃんの息遣いが聞こえてくる。ちょっとためらっているというか、言っていいのかどうか分からないって想いがわたしに伝わってくる。わたしはフェイトちゃんの名前を呼ぶ。フェイトちゃんはそれに反応するように、小さく小さく呟くように、

『……プロポーズされたの』

「…………………………………………は?」

『いや、だから俊にプロポーズされたの。えっとね経緯を話すと、俊が私の見てたドラマのセリフを私が言ってると勘違いしてなんかそのままプロポーズしてくれたの。あ、でもでも本人は六課解散のときに私となのはの二人に揃ってプロポーズしたくて……。つまり勘違いフライングした自分が恥ずかしくてガーくんに手を出そうとして』

「……………………」

 携帯が手から滑り落ちる。カツンと携帯が床と触れ合う音が聞こえたが、いまのわたしにはどうでもいいことだった。

『もしもしなのは?』

 ヴィータちゃんがわたしの足元に落ちた携帯を拾い、フェイトちゃんと何か話しをする。

 そっかぁ……フェイトちゃんそんなことがあったのかぁ……。

『あ!なのはさんだ!なのはさーん!』

『やりましたよなのはさん!なんとかギリギリで受かってました!』

『『なのはさーん!』』

 ティアとスバルがニコニコした笑顔で手を振りながらわたしのほうに向かってくる。流石わたしが鍛えただけやって足が速い。それにしても無事に二人とも合格してよかったなぁ。これで後は筆記だけだよね。ティアのほうは筆記は問題ないし、スバルもちゃんと勉強してたからよほどのことが無い限り二人ともAランクは確実。

「なのはさ──」

「うわぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!」

「あぁ!?ティアがなのはさんに殴り飛ばされてトリプルルッツで吹き飛んでいった!?」

「お、落ち着けなのは!?流石にティアが不憫すぎるだろ!?」

「うぅ……わたしもフライングでもいいからプロポーズされたかったもん!うわぁあああああああん!」

「ティア!?大丈夫!?」

「絶頂……」

 駄々っ子になったなのはと訳も分からず殴られたティア、そして愛想笑いを振りまきつつ事態の収束を図ろうとするヴィータ。

 より一層の混乱を極めていった。

          ☆

 愛想笑いを振りまきながら、とりあえず昼食休憩のために指定されている場所へと訪れたヴィータ。横には無表情で鬼のように電話をかけ続けているなのはと、カウンターを決められたことで絶頂に達したティア、そんなティアを羨ましそうに見つめるスバルに、そんな危ない人物達から守るようにヴィータに手を繋がれているエリオとキャロ。既にヴィータの胃は荒れに荒れている。昇進試験に受かった人や付添でやってきた人達が多数いたため、ヴィータは全員が座れるほどあいているスペースを探しながら足を進める。

 どうにかこうにか全員分が座れるスペースを見つけあて、ようやく腰を下ろした。

「よしここらで昼食にするか。ほら、なのはも少しは電話止めろって。あいつの履歴がなのは一色になってるぞ」

「俊くんは更生させないとダメなの。俊くんはわたし以外見えないように魔法かけるのがいいと思うの」

「はいはい、そんなことに魔法使ったら捕まるっつーの。ほら、その俊くんがお前のために作った弁当なんだから食べるぞ」

「むぅ……だって俊くんってば──」

「でもひょっとこさんらしいですけどね。勘違いでフライングなんて。それでもなのはさんは私のものですけど」

「確かにあの人ボケとバカで塗り固めたような人物だからねー。それとティア、なのはさんは私のものだよ?」

 重箱を開け、紙皿とコップを配りながらティアとスバルが視線ファイトを始める。

「でもー……なんか悔しいじゃん。べつに俊くんことは好きじゃないけど、俊くんがフライングでもなんでも他の人にそういったことをするなんて」

 ほっぺを膨らませながら拗ねるなのはに、この空間にいた全員の胸がきゅんきゅんした。無論、その場にいた男性局員はトイレに駆け込み、女性局員は鼻息を荒くする。

 ある意味での地獄絵図空間にうんざりしながら、ヴィータはなのはに声をかける。

「まぁあれだ。家に帰ってそこらへんは詳しく聞けばいいだろ。それよりいまは昼食だ。お前らもいつまでなのはによだれ垂らしてんだよ」

「うん、そうだよね。帰ったらお話ししようとおもう」

「(なんかすまんひょっとこ。変なスイッチいれてしまったかもしれん)」

 なのはは一つ頷いて、両手で自分の頬をぺしぺしと叩き気合をいれる。

「よし!いまは教え子の昇進試験、気合いれないと!」

 ヴィータに笑顔を見せながらおにぎりを手に取るなのはに、ヴィータも笑顔で応える。ひょっとこが痛い目をみる未来しか見えないがいまはそっとしておくとしよう。

「両手足縛ってベッドにくくりつけて泣きながらわたしに懇願するまで今日は寝させないぞー!」

 いまはそっとしておこう。

         ☆

 一方その頃、高町ハラオウン家では──

「で、俊ちゃんもう一度いってごらん?」

「えっとその……私こと上矢俊はアヒルに欲情したあげく顔に射精をしてしまいました」

「もう一度」

「……もう勘弁してください」

 士郎があわあわと見守る中、俊が桃子とリンディに苛められていた。




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