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A's37.問題解決?



某日、八神家にて

八神はやては書類に目を通したあと、困った顔で正面に座っている女性に話しかける。

「えっと……ほんまなんですか?」

「ほんまなのよ、はやてちゃん」

 はやてに返事を返すのはリンディ・ハラオウン。俊の天敵、フェイトloveの最強母。愛ゆえに娘と母の関係を壊し、女性同士の垣根を越えてフェイトを襲う恐ろしい存在。

 そんな彼女がもってきた資料を読んだはやては、そこに記されている事実があまりにも突飛なことなので目を疑うばかりであった。

「まさかヴィヴィオちゃんがなぁ……。で、なのはちゃん達は知ってるんやろか?」

「まだ知らせてないわ。というよりこの事実を知ってるのははやてちゃんと私と聖王教会の上のほうだけ。ということで喋っちゃダメよ」

「はーい。……こうなるとヴィヴィオちゃんを預けたあそこが怪しくなるなぁ。……こっちから仕掛けておいたほうがよさそうやな」

「ん?なにかいったかしら?」

「いえいえなにも。それで、今日はどんな用件で?この資料を見せるためだけにわざわざ家に来るとは思えないんですが……貴女の場合」

 にやりと口角を釣り上げるリンディ。はやてはうわーっとした顔をしながらとりあえず書類を片付けて端に置く。

『リィン、雪見だいふく一個やるよ』

『ほんとですか!?さすがヴィータちゃんです!』

 後ろではリィンとヴィータがはむはむと雪見だいふくを食べている。

「部屋に移動させましょか?」

「いえ、大丈夫よ」

 茶封筒にいれてあるもう一つの資料とおぼしきものをテーブルで滑らせながらはやてによこすリンディ。はやてはそれを受け取りながら、中身を取出し隅々まで資料を読み切った後、

「……聖王教会もやることがえげつない」

 そう呟いた。

「あら、探していたものがようやく見つかったのよ?これくらい普通よ。聖王教会だって管理局に頼りたくないから私に個人的な話を持ちかけてきたわけだし。そして今度は管理局の八神はやてとしてではなく、フェイトの友人の八神はやてに話をもちかけているのよ。バカを演じることができるあなたにね」

「さぁ?なんのことか、わたしには理解できかねますね」

「あらそれは失礼したわ。いまのは忘れて頂戴」

 はやては何もいわずに黙って資料に目を通す。

 そこに書かれている事柄は、端的にいえばヴィヴィオを聖王教会で見守るというものであった。

「これって監視ですよね?」

「監視じゃないわ。私がフェイトを温かく見守っているのと同じことよ」

「ストーカーじゃないですか」

 もう、ストーカーじゃないわ。愛が為せることよ!そう頬を膨らませるリンディをよそにはやては考え込む。

 なんせここに書かれていることを友人であるカリムは実行する気なのだから。そしてこの作戦には自分の家族も巻き込まれている。

 もう一度、もう一度ちらりと教師の欄をみる。

 校長──リンディ・ハラオウン

 保健教諭──八神シャマル

 体育教諭──八神シグナム

 校長補佐・ヴィヴィオの担任──フェイト・テスタロッサ・ハラオウン←ここ重要

「(なぜ当然のように校長補佐にフェイトちゃんがいるのか、そして身内が担任をもつことは許されてないはず、とかそういうことは置いといて……シグナムとシャマルが先生なぁ)」

 恐ろしく身内で固めたものだった。教育委員会にバレればどうなるかわかったものじゃない。

 しかし、きっと聖王教会ならどうにかするのだろう。

「もちろん報酬もしっかり渡すし給与も保障するわ。なんせシグナムとシャマルを二人も縛りつけるんだもの」

「まぁ管理局を退職してこっちにくるわけですから、それくらいしてもらわんとこまるけど……」

 二人がそれを許すかどうか、それがはやてには気がかりだった。なんせいきなりのことだ。しかも相談もなしに勝手に組み込まれているときている。はやてにとっても正直面白くないことではある。

「はやてー、なにしてんだ?」

「なにしてるんですー?」

 雪見だいふくを食べながらこっちにやってきたヴィータとリィン。ヴィータを膝にのせリィンを頭にのっけたはやてはヴィータの頭を撫でながら質問した。

「なーヴィータ。もしシグナムとシャマルが管理局を辞めて教師になったらどうする?」

「んー?あー……いいんじゃないか?どうせ仕事らしい仕事ってないし。あたしもできることなら辞めたいよ。辞めてはやてとのびのび暮らしたい」

「なんやヴィータ。そんな甘えたこといって、なにか買いたいお菓子でもあるん?」

「ねえよべつに。人を子ども扱いするな」

 見た目は子どものくせに。そう思ったが何も言わないはやてとリィン。

「ところではやてちゃん、いきなりどうしたんですか?そんなこと聞いて」

「んー、ちょっとな。これみてみ」

 ほいと渡した資料を読むヴィータ。雪見だいふくの串を弄びながら読み進めるヴィータだが、しだいに顔は険しくなっていく。

「……聖王教会えげつねぇ」

「それもういうた」

「で、どうすんだはやて。あいつら二人とも買い物行ってるけど」

「どうていうてもなぁ……。二人に聞いてみなわからへんし」

「だな。……しかしヴィヴィオがな」

「これは八神家だけの秘密やで?」

「ああ。しかしヴィヴィオが聖王教会……のねぇ」

「これはなのはちゃん達が大変やで」

「大丈夫なのかあいつら。けっこうメンタル弱いぞ」

「まぁフェイトちゃんおるし大丈夫やろ。うちはうちでこの案件をどう処理するかが問題になるで」

「あたしははやての指示に従うから」

「リィンもです!」

「ふふ、ありがとう二人とも」

 よしよしと頭を撫でるはやてに、目を細める二人。ほのぼのとした光景が広がっている。

「ちなみに、ちなみにだけどはやてちゃん個人としてはどうなのかしら?」

 湯呑を傾けるリンディにはやては一瞬だまりこむが、小さな声で呟いた。

「……俊もミッドにいないわけだし……帰ってもええかな」

「「「はい?」」」

 その声はあまりにも小さすぎて誰にも聞こえなかったらしく、その場にいた全員が聞き返す。

「あ、や、な、なんもない!なんもないから!」

 顔を真っ赤にしたはやてが両手を大きく左右にふる。疑いをむけるリィンとヴィータをさけるように顔を背けながら、はやては別の話題に切り替えていった。
              ☆

──現在

「説明して俊くん。この人と俊くんはどんな関係なの?浮気なの?浮気してたの?死ぬの?」

「説明してください亀頭……カリムさん」

「お母さん、私の太ももから手を離して。私に頬擦りしないで。というかなんで此処にいるのか説明して」

 三人とも違うことを口にする。なのはは俊の足を踏みつけながら、俊は痛みに耐えながら勃起するテントを触りながら、フェイトは隣に座るリンディをどかそうと奮闘しながらかけた言葉である。

「えーっと、詳しい話はちょっと。あと上矢さんでしたよね?なんで亀さんなんですか?」

 純情ぶりやがってビッチめ!

「いま何を考えました?不埒なこと考えましたよね?死にますか?殺しましょうか?」

「ガーくんたすけて!?ヌーブラヤッホーこわいよ!」

「ヤメロー!」

 どすっと嫌な音をたててヌーブラが崩れ去る。ガーくんの頭突き恐るべし。

 ヴィヴィオはヴィヴィオでカリムさんの隣にちょこんと座っている。なんか波長でも合うのだろうか、しきりにカリムさんの顔をみながら首をひねっている。かと思えばカリムさんの太ももをちょんちょんと触ってちょっかいかけてるし、カリムさんもその様子に嫌な顔一つしないでにっこりと対応している。……人見知りしないタイプだけどなんか他の奴らと接し方が違うような気がするなヴィヴィオ。

 俺の勘違いならいいけど。

「で、実際なにしにきたんです?俺らはヴィヴィオの小学校見学と説明を──」

「聖王教会の重要案件です。そう言えばあなたは理解できますよね。花瓶を割って退散したほどですから」

 復活していたヌーブラがそう俺に告げた。

「……なるほどね。ってことは、俺らは聖王教会に喧嘩を売ればいいのかな?」

 たしかあのときはヴィヴィオをよこせだの言ってたよな、聖王教会。カリムさんに敵意はないが、聖王教会には敵意ばりばりあるんだよな俺。

「逆よ逆。今回は聖王教会の暴走を食い止めるためにカリム・グラシアが先頭に立って用意したの」

「フェイトちゃん、話がまったく見えないよ」

「私もだよなのは。ねぇ俊、いったい何の話をしてるの?」

「聖王教会がヴィヴィオを全身舐めまわしたいって言ってるんだよ」

「「聖王教会潰すべし」」

「俺の体も隅々まで舐めまわしたいらしい」

「「あれ?一瞬にして聖王教会が気の毒になってきた……」」

 どういう意味だ。

「でもまあ、俺が説明するよりも亀頭……カリムさんから詳しく聞いたほうがいいんじゃないの?俺は一回聞く権利を放棄した身だから、正確な情報を教えることができないかもしれないし」

 多分俺がもってる情報と対して相違はないと思うが。聖王教会とヴィヴィオ。古代ベルカとヴィヴィオ。聖王教会がどういった組織なのかを考えれば……まぁ間違いはないはず。あの人に裏を取ってないが。

 これは嫌味でもなんでもなく、本当に心から思ったことなんだが……どうやらあちら側には嫌味に聞こえたらしい。カリムさんは沈んだ顔で、ヌーブラは睨みつけるが眼光が弱い。

「あーそのー……なんといえばいいんでしょうか」

 視線をきょろきょろするカリムさんにリンディさんが助け舟をだす。

「あまりこの場で詳しくは話せないわ。ただ、聖王教会にとってヴィヴィオちゃんはとっても大切な存在なのよ。おそらく、二人が思うよりもね。あの聖王教会の偉い人が魔法も認知されておらず発達もしていないこの地球にわざわざ越してきた理由を考えてみればいいんじゃないかしら」

「ヴィヴィオと聖王教会ねぇ……。そういえば聖王教会ってあの聖王教会ですか?」

「あ、はい。多分その聖王教会かと」

「……聖王教会。聖王と呼ばれる存在を崇め奉る大規模組織。それがヴィヴィオと関係してるってことは……──まさか!?」

 カンの鋭いフェイトは自分の中で一つの結論に達したようだ。驚きの顔でヴィヴィオを見るフェイトの顔で少しだけ複雑な表情を浮かべている。ヴィヴィオはそれに対して可愛らしい顔で首を傾げるにとどめた。

「……なるほど。それなら聖王教会が絡むのは必然というわけですね」

「流石は私の娘ね。察しがいいわ」

 フェイトの手を握るリンディさん。フェイトは心配そうにリンディを見つめ返す。

「聖王教会……聖の王……聖杯……つまり聖杯戦争?」

「なのちゃんちょっと落ち着こう?キミは気を緩めるとなのちゃんモードになるから、もう少しだけ頑張ろう」

「はーい。ヴィヴィオおいでー」

 手招きするなのは。ヴィヴィオはソファーからぴょんと飛び降りてなのはの膝の上に座る。ヴィヴィオの髪を三つ編みにして遊び始めるなのは。

「べつにヴィヴィオが何者でも関係ないことなのにねー。ヴィヴィオはヴィヴィオなのに」

「お?」

「……やっぱ気づいてたのか」

「推理小説はよく読むからね」

 三つ編み中のヴィヴィオはなのはを見上げながら首を傾げる。それは他の者も同様で、なのはの発言の意味がしっかり伝わっていないのかクエッションマークを浮かべていた。

 ただ一人、俺だけがなのはの言わんとしていることを理解できた。

 そもそもとして、高町なのはという人間はとんでもない人間だ。普段はぽよぽよしているが、戦闘中でもぽよぽよしているが、年がら年中ぽよぽよしているが、一般の物差しで測ってはいけない。

「答えは簡単だよシュトソンくん」

「へんなあだ名つけんのやめーや」

 動くヴィヴィオを固定して三つ編みにしたなのははどこからか取り出した伊達メガネを装着して悠然と立ち上がった。聖王教会側とリンディさんが口をぽかんと開ける中、なのははゆっくりと室内を歩きながら話す。ちなみにヴィヴィオとガーくんは安全なフェイトの隣に座っている。

「答えは常に言葉の中にある。かの有名な高町なのはが言った言葉さ」

「なのはの口調が変わったね」

「あいつはワンダフルガールだからな」

「フェイトママー、なのはママどうしたの?」

「どうもしないよ。なのはママはいつもどおり」

「……たしかにそうかも」

 おい言われてるぞ。娘にワンダフルガールだって認められてるぞ。

「俊くんとスカさんが友達になった。それがわたしが疑いをもつきっかけだった。ヴィヴィオを連れてきた初日は局員として俊くんを抹殺するべきか、幼馴染としてミンチにするべきかとても悩んだけど……ヴィヴィオが可愛かったから許した。そして次に俊くんたちが知らないところでスカさんに問い詰めて吐かせた。そして答えを得た」

「お前それ実力行使っていうんだよ!」

 しょぼんとした顔をするなのはだがやってることはとても恐ろしい。スカさんが不憫でならない。

「……お前それいつだよ。問い詰めたの」

「……さぁ?あまり重要なことでもなかったし。さっきまで素で忘れてたことだし。うーんと……いつだったかなぁ。管理局が色々と変わる前かな?」

 ……つまり俺が色々と動いていたときにはこいつは知ってた可能性があるってことか。いままで隠し通してきたって凄くないか?……いや本人も言ってたけどかなり前に忘れてたな。ヴィヴィオのこと。

 そのときになってようやくカリムさんが口を挟む。

「あ、あの……いったいどういうことなんですか?い、いま重要なことではないと」

「ええ。そうですけど?」

「あなたは……全て理解した上でそのような判断をしているのですか?」

「全て理解した上でそのような判断を下しましたよ」

「…………」

 けろりと言い切るなのはに流石のカリムさんも言葉を失ったのか、体を後ろに少しずらした。リンディさんも止めないし、フェイトもなのはに任せているようだ。きっとこの問題はフェイトよりなのはのほうが分かってるのかもしれない。

「私には何故あなたがそう平気な顔をされているのか理解に苦しみます。……胸が痛まないのですか?どうにかしようと思わないんですか?真相を知っていながら」

「胸が痛む?誰にですか?どうにかする?何をですか?真相?それはヴィヴィオと他人の聖王オリヴィエのDNAが一緒という事実ですか?ふむふむ、ほうほう。それで??(??? ) ?」
 カリムさんはよく我慢したと思う。拳を握るだけに止めたのは立派だと思う。

「俊の煽りスキルをなのはがいかんなく発揮してるよ。責任とりなよ」

「プロはこうする。だからなんですかー????( ?? ? =???? ?? ? )???」
 
 頬にできた手形にヴィヴィオがそっと手を触れる。暖かな温もりが頬を包み込む。こりゃいい子に育つわ。なお、リンディさんからは謎の延髄チョップをもらう。

「それでって……!」

「だってわたし、一度たりともオリヴィエとともに過ごした時間なんてありませんから」

 きっぱりとそう言い切るなのはにカリムさんが言葉を詰まらせる。

 膝に座ったヴィヴィオはなのはとカリムさんを無視して俺に首をむける。

「ねぇパパ?なのはママたちなんのおはなししてるの?」

「難しい話さ。ヴィヴィオの将来の話」

「ヴィヴィオはウェイトレスさんになる!ゆめのなかでおねえちゃんもおうえんしてくれた!」

「そうだなー、夢の中でお姉ちゃんがなー。──ん?お姉ちゃん?」

「うん!きれいなおねえちゃん!」

 ……おかしいな。ヴィヴィオに姉がいるなんて聞いてないぞ?スカさんも何も言ってないし、もしかしてと思ってなのは達のほうをみるとこちらも初耳のようで言い争いをやめて、こちらを見つめていた。

「ねぇヴィヴィオ?お姉ちゃんって、どんな人?フェイトママは会ったことないけど……」

 フェイトがヴィヴィオに視線を合わせながら質問する。おっぱい万歳。

「えっとねえっとね!ヴィヴィオよりおとなだった。なのはママやフェイトママみたい!それでねそれでね、ドレスきてた!それでね、とってもやさしいめをしてるの!ゆめのなかでたくさんおしゃべりしてね、おねえちゃんはいっつもえがおできいてくれるの!」

 興奮したようにヴィヴィオは姉の情報を喋る。個人的な感想も多いが、ドレスか……お姫様スタイルか?そして年齢は同じくらいらしい。

「あーヴィヴィオ?なんで夢にでてきた人がお姉ちゃんなのかな?それならパパも夢に出てきた美少女悪魔っ娘ちゃんと結婚してるはずだよ?」

「えー?でもだっておねえちゃんヴィヴィオとおなじめのいろだったよ?」

「……マジか。パパの美少女悪魔っ娘ちゃんはパパを殺して満足して帰っていったよ」

 ヴィヴィオと同じ瞳。オッドアイの瞳をもつ女性……か。

 ふとなのはとカリムさんをみると、なのはは何故かドヤ顔で、カリムさんは信じられないという様子を受けていた。

「それでね?おねえちゃんはね、ヴィヴィオがウェイトレスしたいっていったらよしよししてくれてね?がんばってねっていってた!……ようなきがする」

 そっかー、気がするだけかー。でもそれはきっと実際にヴィヴィオと同じ見た目の人物がヴィヴィオにそういったのだろう。どうしてヴィヴィオの夢の中に現れているのか知らないが、案外ヴィヴィオのことが心配になって古代ベルカから現代に転生でもしてきたのかもしれないな。

 それこそ違う生物に生まれ変わって。

「そっか。それならお姉ちゃんのためにも頑張らないとな」

「うん!」

 頷くヴィヴィオの頭を撫でながら、カリムさんにこの不毛な争いの終結を提案した。

「カリムさん、とりあえずもうやめにしましょうか。お互いにヴィヴィオのことが好きでヴィヴィオを大切にしたいって気持ちは同じみたいですし。聖王教会のことはそちらにお任せします。幸い、リンディさんが校長であるなら……まぁなんとかなるでしょう。ほらなのはも一応謝っておけって」

「……ごめんなさい」

 わたし悪くないもん。ヴィヴィオとオリヴィエ違うもん。というオーラ全開のなのはは一応謝ったが、すぐにヴィヴィオを抱っこして頬を膨らませた。

 フェイトがなのはの機嫌を取っているので、俺はカリムさんとヌーブラに向き合う。

「すいません。なのはは基本的に優しいですし柔軟な対応とかできるほうなんですけど……ヴィヴィオは特別な存在で。べつに聖王教会のことを悪くいってるわけでもないし、カリムさんのことが嫌いというわけではなくて……」

 どういったらいいか迷っているとカリムさんは優しく口もとに指を置く。

「ええ。わかってますよ。あれほど真剣に向かい合ってくれる人がヴィヴィオちゃんの親になってくれて安心しました。こちらこそすいませんでした。少し取り乱してしまったみたいで……。あの、聖王教会のことは私が全力を出しますので、ヴィヴィオちゃんが話していた件について進展がありましたら報告を……」

「ええ。もちろんです。色々と解決しないといけないことも多いですしね。まぁすぐに解決するとは思えませんが」

「それは同感です。おそらく年単位でのことになるでしょうから、貴方とは今後ともよりよい関係を築いていきたいものですね」

「お互い、潰しあうことがないようにしましょう」

 にこりと微笑みあう。それに合わせる形でなのはが俺の手を引いた。頬を膨らませていることから察するに多少怒っているのかもしれない。スカさんから色々と聞いたから、なのはも思うところがあるんだろう。

「はいはいわかったよなのは。それじゃもう帰ろうか。なんか疲れてきたし」

「帰りたいのはやまやまなんだけど……今度はフェイトちゃんの問題が」

 ヴィヴィオを抱っこしたままのなのはがフェイトのほうに視線をむける。そこにはフェイトがリンディさんに壁ドンされている光景が広がっていた。逃げようとするフェイトの行動を阻むリンディさん。

「お願いお母さん……補佐だけは許して」

「ダメよ。貴女の生活の全てを監視して舐めまわすの」

 これ親子の会話じゃないよね。絶対にストーカーに居場所を突き止められてた被害者と加害者の会話だよね。

「というかなんでかってに決めるの。私のかってでしょ」

「母親が爆死してもいいっていうの?」

「いやいや怖いよ!?娘にここまで執着する母親って怖すぎるよ!?」

 助けを求めるようにすがるフェイト。

「でもフェイトちゃん。案外いいかもしれないよ?教師って福利厚生いいってきくし、ヴィヴィオのそばにいられるのは最高だよね。管理局みたいに危険なことはないし。フェイトちゃんの体が危ないかもしれないけど」

「たしかにそうだな。ヴィヴィオの安全を考えるとそれもいいかもしれない。校長がリンディさんだし理事長がカリムさんだから都合もつきやすいだろう。フェイトの体がリンディさんによってとんでもないことになると思うけど」

「二人とも気づいて!無意識に私がお母さんによって食べられることを容認してる事実に気づいて!?俊はいいの?ほんとにそれでいいの!?」

「……親子丼をご所望してもいいですか?」

「知らないバカ!」
         ☆

 高町家に帰ってきた俺達はホットミルクを飲みながら思い思いに過ごしていた。なのはとヴィヴィオはお風呂で女の子向けのアニメ主題歌を歌っている。

 結局、フェイトの必死な抵抗と、カリムさんの助けもあってフェイトはヴィヴィオの担任になることだけにとどまった。(リンディさんは半径5m以内に近づかないこと。ただしフェイトが許可した場合のみ近づいていいこと)という条件つきでだが。

 そして俺はというと隣で拗ねているフェイトの文句に対してイエスマンになることに徹していた。

「助けてくれなかったからショックだった。それに俊は私がお母さんに何をされてもいいってのがわかったし」

「いやいや違うよフェイト。俺がリンディさんに肉弾戦で勝てる見込みはないし、俺もフェイトが教師になるのはとってもいいことだと思うんだ」

「どうして?」

「俺の好きなティアーユ先生とそっくりになるし」

「さようなら俊。籍を入れる前でよかったよ」

「まってフェイト先生!冗談だよ!冗談だから!」

 立ち去ろうとするフェイトの足にしがみつく。この体勢からだと下着が見えて役得ですよ。ぐへへ。

「……俊の前でスカート履くのやめようかな」

 ぼそりと呟かれたフェイトの恐ろしい発言に僕はたまらず無言で姿勢正しく土下座した。

「でもフェイト。管理局はよかったのか?カリムさんも管理局に残るつもりなら無理強いは決してしないとは言ってたけど」

 本人は是が非でも教師になってくれって視線で訴えていたけど。

「うーん、なのはが管理局を辞めるつもりなら私もいいかなって。それに教師のほうがヴィヴィオも安心すると思うし」

 まあ確かにな。なのはが翠屋で仕事して自宅に帰ってきて、外で仕事してきたフェイトをお出迎えとか最高じゃん?フリルエプロンでお出迎えのなのはとか最高じゃん?俺?隣でオナニーしてるからそれでいいよ。そんでティッシュを処理してくれるだけでいいよ。

「……二人とも無事に辞められるといいけどな。俺はそれが心配だよ」

「……いざとなったらなのはと結婚するから静かに暮らしますって宣言しようかな。でもそうすると色々と誤解が生まれてしまうような……」

 心配しなくてもその誤解はすでに生まれている。そしてそれは誤解でもないぞ。

「お母さんがごめんね俊」

 ふいにフェイトが話しかけてくる。その顔は少し困っていた。

「お母さんの気持ちも理解できるんだ。今回のことだって、ほんとは私のことを心配しているからだって気づいてる。成人もしてない娘が死ぬかもしれない仕事をしてるのは親なら心配して当然だよね。いくらいまは世界が平和だからって、この平和が何年続くか分からない。もしこの平和が壊れたら、私の実力からしたら……ね」

 真っ先にいくことになるってか。

「なのはも私も親の気持ちは痛いほどわかってるつもり。だからまぁ……なんというか。結婚もするしそろそろ親を安心させたいなって。それにもう──」

 俺に寄りかかってくるフェイト。肩の力をぬいて全身を俺に預けてくる。上目づかいでこちらを見上げて、微笑みながら

「守ってくれる旦那さんがいるからね」

 勃起不可避。僕の股間は盛り盛り盛り上がりました。ええ、それはもう暴発寸前です。

 全身を預けてくるフェイト。これはもう、そういうことなのでは?

 生唾飲み込み居住まい正し何かを期待するフェイトの体に触れようと手を伸ばす。

「フェイト……愛してるよ」

「──私もよ」

 最後にみた光景はフェイトと俺の間に顔だけ突出しこちらに見続けるリンディさんの顔であった。

『あ、フェイトちゃんお風呂あいたよー』

『はーい。ほらお母さん、さっさとお風呂はいるよ。俊はそこに置いといて。……せっかくいい雰囲気だったのに』

『えへへ、フェイトは一生私のものよ』

『はいはい。わかったわかった』

「ねぇなのはママ?パパはなんでしろいめむいてるの?」

「きっと恐ろしいものを見たんだよ。ほらヴィヴィオ、髪乾かすからこっちきて」

 俊が倒れているその横でのんびり髪を乾かす嫁と娘であった。
          ☆

 いつもの場所、花が世界を取り囲み、上を見上げれば果てしない空が広がっている空間で小さな女の子は純白なドレスを纏う女性に話しかける。身振り手振りをくわえて、子どもながらに今日あったこと楽しかったことを女性にも感じてほしいと思う女の子に、優しく笑いかける女性。やがて女の子は喋りつかれたのかとてとてと女性に近づき膝の上に座った。よしよしと頭を撫でながら子どもをあやすように子守唄を歌う。女の子は子守唄を聴きながら、ゆっくりとまぶたを閉じる。その顔はとても幸せそうで、女性は満足そうに頷きながら隣でのんびり座っていた。アヒルの頭を撫でた。

 明日もまたよろしくね。

 ──そう声をかけながら




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