15.マスコット作戦



「「えーーーーーっ!? それじゃ、はやてちゃんがさっき言ったわたしたちに会いたい男性ってコレ!?」」

「そうやで」

 スカさんがギャラドスによってKOされてから10分、俺は床の上で正座をさせられていた。 こいつらがいうには反省の意味も兼ねてらしいのだが……真に反省すべきはなのはだと思うんだ。 だってスカさん殴ったじゃん。 泡吹いて鼻血流してたじゃん。 流石の俺も警備員に鼻血は流させてないぞ。

「いや〜、おかげでなのはちゃんが本気で殴った映像も撮れたしよかったで」

「うぅ……あれは不可抗力で……その……本当はコレを殴るつもりだったのに……」

 もじもじしながら怖いことを言わないでください。 スカさん、俺を救ってくれてありがとう。

「まあまあ、ええやないか。 コレも本気でなのはちゃん達を心配してきてくれたんやで?」

「そうだそうだ! もっと言ってやれ、はやて!」

「ごめんな、下から必死こいてパンツ覗こうとしている奴を弁護できんわ」

 地に伏せながらなんとかスカートの中の楽園を覗こうと土下座体制でなのは達をみているひょっとこにはやては冷徹な目を向ける。

 その視線に気づきひょっとこは瞬時に正座の体制へと戻る。 そして周囲を2・3回見回した後、袖を拭いながら溜息をついた。

「ふぅ……危ない危ない、バレるところだったぜ……」

「もう遅いよ、なにもかも遅いよっ!? はやてちゃんのセリフ聞こえなかったのっ!?」

「え? どうしました、高町なのはさん。 そんなに大きな声を出してはいけませんよ?」

「誰のせいだと思ってるのっ!?」

「ちなみに、そろそろいちごパンツは卒業しましょうね?」

「個人の勝手じゃんっ! というか、いつの間にパンツみたのっ!?」

「ごめん、当たるとは思わなかった」

「zzうぇxrdcty9おいkじゅhygrてsxdcfvg!?」

 なのははバインドでひょっとこの両手両足を縛り、近距離から魔力弾を放つ。

「なんだか……なのはさん嬉しそうですね」

「これがそう見えるなら病院行ったほうがいいぞ、スバル。 どうみてもあいつを抹殺しようとしてる途中だろこれ」

 横にいるヴィータに話しかけるスバルだが、ヴィータはうんざりしたような様子で答える。 もしかしたら、今回のようなことがしょっちゅうあるのかもしれない。

「けど……どうしよう。 ねえ、ティア、あの人が同棲相手なら私たちはヤるしかないんだよね……──って、ティア?」

 みると友人であるティアが指をワナワナ震わせてカタカタと体を動かす。

「あれ……もしかしてお兄さん……? お面も一緒だし、声も一緒。 え? うそ? あんな人類の最底辺をいってるような人が私が気になっていた人……?」

「あの……ティア?」

 相方の様子がおかしいのに気が付き、そっと触れようとする──ところでティアがいきなりひょっとこのお面をつけている人に向かって駆け出した。

「あの! お兄さんですよね、ティアです! お墓で会った!」

「ちょっとまってくれ、いきなり妹感覚で話されても困る。 君が妹を名乗るなら縞パンをはいてフリフリのスカートを履き、ネクタイで可愛らしくきめてからまたきたまえ」

「いや、そうじゃなくて……お墓の前で会いましたよね!?」

「なのは、なのは、いま俺ナンパされてる?」

「はいはい」

「ヤキモチ焼く?」

「モチ焼くくらいならパン焼くよ」

「こいつ……こんなときまで高度な下ネタを……!?」

「いやいやどこがッ!? いまのどこが下ネタだったの!?」

 荒ぶるティア、しかしひょっとこはそれをひらりとかわし、なのはで遊び始める。 ティアはがっくりと肩を落とし、とぼとぼとスバルたちの所へ戻っていった。

「……よかったの? 俊くん」

「いいんだよ、これで。 嬢ちゃんの中では恰好いい男性なんてイメージが出来上がってるかもしれないしな。 それを壊したくないんだ」

「でもお墓に塩撒いたんでしょ?」

「寺生まれのTさん直伝の方法だぞ」

「知らないよ、そんなの。 もう……そんなことしちゃダメでしょ。 次やったら私が塩撒いちゃうよ?」

「潮吹いてくれるの?」

「死を撒いてあげようか?」

 レイジングハートを機動させながら俺の頬にペチペチと当ててくるなのははヤクザそのものです。 ギャラドスからレックウザに突然変異したぞ、こいつ。 とりあえずバインドを解いてくれたので、ひとしきり見渡すことに。

「なんというか……アレだよな。 六課って女多いな」

「せやな〜、わたしがじきじきに選んだからな〜」

「ああ、なるほど。 それは女が多くなるわけだ」

 はやてなら無駄な男なんていらないし、いれないだろうな。

「しかしはやて殿、こう|女子《おなご》が多いとマスコットなるものが必要ではないか?」

「マスコットならなのはちゃんがおるで。 毎日毎日、かわいすぎて萌え死にそうや」

「まあ、なのはがマスコットなのは認めるかな」

「ねえ、それって喜んでいいんだよね? ちなみにそのマスコットはどんな役をするのかな? みんなに笑顔を振りまいちゃうとか……?」

「「オチ担当かな」」

「ひどいよ二人ともっ!?」

 まあ、いいじゃないか。 見てる分には面白いし。

「どうせ、アレやろ? 自分がマスコットになりたいとかいうんやろ?」

「べつにそんなこと思ってないけど、マスコットにしてください」

 いかん、願望が少し漏れてしまった。

 はやては溜息をつく。

「ほな、わたしが満足するようなマスコットの案をだしてみい。 それで判断するで?」

「こんなのはどうだろう? ひょっとこハム太郎とか」

「鳴き声は?」

「デゥクシ」

「18禁verは?」

「ひょっとこハメ太郎」

「喘ぎ声は?」

「ヒギィッ!?」

「わたしの負けや、採用」

「大反対だよッ!!」

 はやてと互いに肩を抱き合いながら健闘を讃えているところでなのはからストップがあった。 やはりなのはで遊ぶのはめちゃくちゃく楽しい。 俺も息子も嬉しすぎて反り返っている。

「ところでスカさん、目を覚まさないね」

「それだけなのはちゃんの右ストレートが強かったんや」

 やはりギャラドスは伊達じゃなかった。




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