16.[速報] スカさんが生還した



「スカさんが気絶してから1時間。 そろそろスレ建てようと思うんだけど」

「ほうほう、どんなスレタイにするん?」

「[コイキングの逆襲] スカさん余命1時間 [はねるコイは竜になり飛翔する] みたいなスレタイでいこうかなと」

「よし、わたしが建ててくる」

「やめてよっ!?」

 はやてとウキウキ気分でスレを建てようとしたところ、横から悲鳴混じりのなのはの声が聞こえてきた。

「え? どうしたの、なのはさん。 もといギャラドスよ」

「ちっ、ちがうってば! だ、だから……アレはそもそも間違いで……」

「ほんとは俺を殴る予定だった?」

「うん」

「おーい、スレ建てよろしく〜」

「あいよー」

 はやてが自分のPCでスレを建てようとする──が、それをさせまいとなのはもはやての机に迫ってくるので後ろから俺が羽交い絞めすることに。

「もうよせ……! 戦いは終わったんだ……!! お前は頑張らなくていいんだよ!」

「ここで頑張らなかったら私は大変なことになっちゃうよ!?」

「胸揉んでいいっ!?」

「人の話し聞いてよっ!?」

「ハァ……ハァ……なのはタソのおっぱい……──って、あぶなぁっ!? 後ろからレバ剣飛んできたっ! おっぱい魔人がレバ剣飛ばしてきたっ!?」

「貴様を葬ればミッドの平和を守れるような気がしてな」

 あながち間違いじゃないから反論できない。 そうこうしている間になのはははやての元にいって、PCの電源を切ってしまった。 くそっ……! このおっぱい魔人め!

「俺となのはのスキンシップを邪魔するなっ!」

「それはセクハラというものだ」

「シグシグのおっぱいだってセクハラもんだろうが──謝るから、レバ剣を投擲しようとしないでっ!?」

 昔から守護騎士たちは冗談が通じないんだよな。 とくにシグシグなんて全く通じないし。

 ふいにフェイトと視線が合う。 逸らすフェイト、見つめる俺。

「……我が家のおっぱい魔人は俺と視線を合わすのも嫌なのか……」

「ち、違うよっ!? でも、ここで目線を合わせると面倒なことに巻き込まれそうだったしっ!」

 そういいながら、キャロとエリオを後ろに庇うフェイト。 お前はどんだけ警戒してるんだよ。

「べつにー、ちょっとシグシグにフェイトの胸囲の脅威を教えてあげようと思っただけなのに。 なー、ロヴィータ」

「ここであたしに振るのは宣戦布告と受け取っていいんだな?」

 守護騎士一のロリっ娘は俺に向かってアイゼンを構える。

「まあまて、ロリにはロリの魅力があると高校時代に──もう言わないから振りかぶらないでくれ」

 ブンブンと空を切り俺の頬にまで届いてくる風を受け、両手を上げ降参の構えを取る。

「そういえば、お前はさっきからコイツのこと“スカさん”って呼んでるけどダレなんだ、結局のところ」

 そういってスカさんを指さすヴィータ。 人に向かって指を指しちゃいけないって習わなかったのかコイツは。

「こーら、ロヴィータちゃんダメでしょ。 人に指を指しちゃ──」

「うるさい」

 ボキッ

「指があああああああああああああ!?」

 おかしい、あいつ絶対おかしい。 思考がなのはと一緒だもん。 絶対おかしいぞ。

 急いでシャマル先生の元へ

「シャマル先生、助けてくださいっ! おっぱいとロリの相乗効果が襲ってきます!」

「ま、まぁ……二人とも会えて舞い上がってるだけですよ。 たぶん……」

「ロリ巨乳なんて認めないんだよっ!!」

「そういう話じゃないですよね?」

 困惑しながらもシャマル先生は指を治してくれる。 やっべぇ……シャマル先生、便利すぎ。 シャマル先生いればフルボッコにされても大丈夫なんじゃね?

 シャマル先生から治してもらい、いまだに構える二人に向かってしゃべる

「スカさんはスカさんだよ。 下着泥棒してるんだ」

「おいちょっとまて、その紹介文がすでにおかしいだろ」

「発明者なのかな? なんか家に行ったとき大量のロボットがあった。 全部壊しちゃったけど」

「よく仲良くできてるよな」

 まあ、変態同士だからな。

 ロヴィータの隣にいたシグシグが疑惑の念を向けながらスカさんを見る。 どうしたんだろう?

「どしたの、シグシグミシル」

「今度言ったら前歯折るからな」

「お前らは苦痛以外で俺とコミュニケーションができないのかっ!?」

 絶対アレだ。 はやてがアレなせいで守護騎士たちも頭がアレになってるんだ。

「けどよ〜……“スカ”って聞いたら次元犯罪者のジェイル・スカリエッティを思い出すんだよな〜」

 ロヴィータの呟きにウーノさんの肩が一瞬ビクリと動く。 ロヴィータはそのまま視線をフェイトのほうに

「そういえば、フェイトはスカリエッティのことに関して調べてるんだよな?」

「う、うん」

「まじで? フェイトタソちょっと教えてよ」

「あ、ちょっとまってて」

 フェイトは自分の机に戻ると大きなファイルを引出から取り出し、戻ってくる。 それは大きく大きく膨れ上がっておりそれだけでフェイトがこれに真剣に取り組んでいるのだとわかる。 ロヴィータはスカさんのことを次元犯罪者だと言っていたが……あのスカさんがそんなだいそれたことできるのだろうか?

 フェイトはファイルを一枚めくって紙に書いてあることを読み始めた。

「え〜っと、ジェイル・スカリエッティ・・・google検索で、間抜けな次元犯罪者は? っと打ち込むとgoogleさんから もしかしてジェイル・スカリエッティ? と質問される。 ミッド調べ 俺でも捕まえられそうな次元犯罪者 殿堂入り。 つい笑ってしまう次元犯罪者調べ 殿堂入り。 ワンパンで捕まえられそうな次元犯罪者 殿堂入り」

『ぶふぅっ!?』

 そこにいた全員が思わず笑ってしまった。 なのはとはやてに至っては痙攣を起こしてるほどだ。 かくいう俺も笑いを抑えられない。 いや、流石にgoogle攻撃は卑怯すぎるだろ。

 なのはが痙攣しながらフェイトに問いかける

「フェ、フェイトちゃん……それを追いかけてるの? あ、ダメ、笑いすぎてお腹痛い……!」

「う、うるさいなぁっ! 私だってこんな人だとは思ってなかったよっ!?」

 むしろそんな奴がどうやったら次元犯罪者になれるんだ? フェイトが調べてるってことはアレ関係かな?

 脳裏に浮かぶのは黒髪で俺のことを坊やと呼んだ女性。 手を伸ばし、掴んだはずなのにそれを振り払われた女性。 俺たちをフェイトに会わせてくれた女性であり、一図なほどの痛々しいほどの娘への愛情を魅せていた女性。 あれからどうなったか分からない……けど、きっと幸せな夢を見てるんだと思う。 娘さんと一緒に。

「どうしたの、気分悪い?」

「へ? いや、なのはとフェイトとヤってるところを想像してたんだ」

「頭カチ割るよっ!?」

「なにいってるんだよ。 あんなにも可愛い声で鳴いてたじゃないか」

「それ夢のことだよねっ!? なんで夢のことを現実であったかのように話しちゃうのっ!?」

 みるとフェイトのほうも、必死に誤解だと主張している。 ほんとこいつらの困った顔をみるのは面白い──けど、脈がないというのも考え物だ。 ここらで一発イケメンなところを魅せないといけないのではないだろうか?

 ということは置いといて、どうやらみんなには気付かれてないようで安心した。 ほら、なんか主人公みたいになっちゃうじゃない?

 ウーノさんが顔を赤くして俯いている。 そりゃそうだよな、スカさんの世間に対するアレが180°別ベクトルで有名になってる人だしな。 ウーノさん頑張れ!

 皆が笑っている最中、突然ドアが開いて声が室内を支配した。

『大変です! ミッド郊外にて犯罪者が出た模様! なお犯人は六課に対する侮辱を行い、六課が出動するのを狙っている模様です! どうしますか?』

「侮辱って具体的にどんなことなん?」

 冷静に聞くはやて。 流石は部隊長

『はい、六課はババアが多すぎる! とのことです!』

「全員、出動用意! 塵一つ残さへんで!」

『了解!!』

 声を荒げながら叫ぶはやて。 流石部隊長、目が殺意に満ちている。

 俺が女性たちの並々ならぬ殺意に震えていると、その殺意に当てられたかのようにスカさんが起きてきた。

「ん……ここは?」

「おはよう、スカさん。 いまから六課による犯罪者公開リンチが始まるけど、どうする?」

「……どうやったら管理局の萌え担当を怒らせることができるんだい?」

「まあ、乙女には色々と踏んではいけない地雷があるんだよ」

 ギャラドスなんか逆鱗に触ったようなもんだからな。

 とりあえず比較的冷静だったシャマル先生に頼んで、見学することに。

「スカさん、そろそろ紙袋取ってくれない? 袋全体に血がこびりついてて怖いんだけど」

 いまのスカさんは下手なホラーより怖いです。




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