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87.曲芸2



「しかし俊。 お前のやることはわかったが、具体的になにをすればいいのだ?」

「ん。 それをいまから言っていくよ。 まずお前らを選んだのには色々と理由がある。 管理局内のアイドル部隊である六課のリーダーはやて。 お前にはかなり面倒な仕事してもらうことになるが大丈夫か?」

「ええよ。 ところで俊。 わたし最高評議会のこととか初めて知ったで」

「昨日お前が聞かなかったからだろ……!」

 ぽけっとした顔を浮かべて首を傾げるはやてに俊はわなわなと拳を震わせながら答える。 他の面々は苦笑する。 ちなみに、いまの俊ははやてとユーノという見方を変えれば危ない二人が両隣に座っていることにもなる。 ユーノのほうはまだ自分で抑えることができるが、はやてが抑えられるか不安である。

「ま、まぁいいや。 それでだ。 皆には役割分担を綺麗に分けてもらう。 まずクロノ、お前は本局のことを頼むことになるが大丈夫か?」

「言ったはずだ。 お前は好きなように指示を出せと」

「頼りになるよ。 そしてカリムさん。 カリムさんには聖王教会の権限を遺憾なく発揮してもらうことになりそうですが、大丈夫でしょうか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。 あなたの考え方、とても面白いと思いますし個人的にも手伝いたいと増々思いました」

「ありがとうございます。 それでは、クロノとカリムさん。 この二人に本局のことはお任せします。 次にユーノ。 お前には管理局設立から今までの歴史、事件、全ての情報を調べてもらう。 いけるか?」

 俊の疑問にユーノは力強く答える。

「言ったでしょ? 後ろは任せてってさ。 時間はかなりもらうと思うけど、それでいい?」

「問題ない」

「ちょっと待て俊。 何故そのデータが必要なんだ?」
 
 ユーノと俊の会話にクロノが割り込んでくる。 俊はユーノに向けていた視線をクロノに向け、

「知ることは大事なことだよ。 それに──半端な知識と半端な覚悟で俺は最高評議会を送ろうなんて思ってないさ。 そんなことしたら、先人たちに失礼だろ?」

 ふんわりとクロノに向けて笑う俊。 クロノは俊のその笑みを受けて肩をすくめる。

「……変わらないな、そういう姿勢だけわ」

「生き方は変えれるけど、生き様までは変えれないさ」

 互いにニヤリと笑い合い、俊はそのまま話を続ける。

「おっさん、お前はなにもしなくていいぞ。 むしろするな」

「ここまできて戦力外通告はこたえるぞ、ひょっとこ」

 バツの悪そうな顔でひょっとこのほうをみる男。 そんな男の顔をみて、俊は慌てて言い繕う。

「あー、俺の言い方が悪かった。 おっさんにはどうしても活躍してもらう所があるんだよ。 権力的には雑魚のおっさんだが戦力的には申し分ない。 お前にはナカジマ夫妻とともに暴れてもらわないと困るんでな」

「……ほぉ。 それなら俺と同じくらいの適任がいる。 そいつも呼んでおこう」

「それはありがたい。 まぁ、その前にクロノとカリムさんが頑張らないといけないんだけどな」

 その言葉にクロノとカリムは親指を立てることで大丈夫だと示す。 それに頷く俊。

 と、ここで全員の話を聞いていたはやてが俊の袖を引っ張った。

「なー俊。 わたしはなにすればええの?」

「ん。 はやてには地上本部のレジアス・ゲイズとの会談を取り付けてもらう。 それとナカジマ夫妻ともだ。 ナカジマ夫妻のほうは今回の案を話して、是非とも協力の体勢にもっていってもらいたい。 レジアス・ゲイズのほうは俺が行く」

「レジアス中将なら……確かもうすぐ視察にくるらしいで。 六課のほうに」

「マジで!?」

「うん。 ヴィータから聞いたから間違いないはずや」

はやての言葉に指を鳴らして喜ぶ俊。

「丁度いい。 その視察の日、俺も六課に行くよ。 軽くご挨拶でもしとかないとな。 俺の友達の友人みたいだし」

「友達?」

「ああ、友達だ。 さて、こんなもんかな」

 ふぅ……そう一息ついて俊は皆に頼み込んだ。

「俺が局員ならよかったんだけどな。 悪いみんな、迷惑かける」

 そう言って手を合わせた俊に、全員ともこういった。

『おやすい御用だ』

「最後は任せたぞ、俊」

「おやすい御用だ」

 クロノの言葉に俊もそう答えるのだった。

           ☆

「ところでさ、俺はあまりレジアス・ゲイズのことを知らないわけだが管理局ではどういった風に捉えられているんだ?」

 最高評議会のことを調べる手前、レジアス・ゲイズを調べないわけにもいかないだろう。 そう思い、この場にいる全員に聞いてみたのだが──
 
「地上本部の実質的なトップであると同時に、過激武闘派だな。 しかしながら、その身一つでトップに上り詰めた強さとそこで得た人望は相当なものだ。 もし俊がレジアス中将を相手取るつもりならば、こう考えたほうがいいだろう。 お前は地上部隊すべてを敵に回すこととなる」

「成程ねぇ。 他には?」

「聖王教会や私のレアスキルのことを嫌ってるようでありますね。 あまりいい印象をもってもらえてないようです。 それに口の悪さも一級品です」

「……カリムさんがそこまでいう人物か。 他に──」

 他になにかあるか? そう言いかけたとき、後ろから男の声が聞こえてきた。

「レジアス・ゲイズ、私の友人だ。 上矢俊君」

 その声に振り向くと、おっさんよりも若干高い身長の男が立っていた。 図体もでかい、大柄の男だ。

「えっと……」

「俺の名前はゼスト・グランガイツ。 こいつに事情を聞いてね。 協力させてくれないかな、上矢君。 レジアスを止めたいんだ。 友人として、止めないといけないんだ」

 隣にいるおっさんを指さしながら真剣な表情で俺のほうをみるゼストさん。 あぁ……この目、俺と同じような目をしてるな。

 友達想いのいい人だ。

 一歩前に出て手を差し出す。

「こちらこそお願いします、ゼストさん」

 互いに握手する俺とゼストさん。 俺はそのままゼストさんを自分の座っていた席に座らせる。 俺は立ってればいいし。

「ところで俊。 レジアス中将のことだが、俊はどのように思っているんだ? あくまで僕たちは局員としての立場でいったが、市民である俊はどう思ってるんだ?」

「俺? そうだなー……そのレジアス中将にまつわる黒い噂ってさどういうのかわかるか? ゼストさんはわかりますか?」

 俺が聞くと、ゼストさんはゆっくりと息を吐いて天井を見上げた。

「レジアスを擁護するわけではない──が、あいつとて何も最初から違法に手を染めようとしていたわけではない。 ただ、世界から現実を突き付けられただけなのだ。 一向に止まない犯罪、うみに取られる戦力、それでも守りたい地上。 昔はまだよかった。 しかし年を経るにつれてレジアスはだんだんと犯罪に加担していった。 レジアスはただ守りたいだけなのだ、地上を。 どうしてこうなってしまったんだろうな……」

 ゼストさんは悲しそうにつぶやいた。 友が犯罪に手を染めているんだ。 そうなって当たり前か……。

「地上を守るために犯罪に手を染める、ねぇ。 確か戦力は陸よりもうみが圧倒的で、質も違うんだよな。 あげくに戦力が上がらないんじゃそう考えるのもわかる気がするな」

「ひょっとこ……」

「たださ、どうも思うんだよね。 市民目線の俺は、レジアス中将のことを嫌いになれないらしい。 一生懸命地上のことを考えて、それで犯罪に手を染める。 きっと辛いことだと思うぜ。 もしそれで、そのことによって、地上に危機が及んだとき──きっとあの人は後悔し自殺するかもしれないな。 俺は素直に“市民の平和を守ってくれてありがとう” そう思う」

 まったく……もっと信用してもいいんじゃないかな? 自分の部隊をさ。

「戦力は一日では増量しないし強大にはならない。 けど、確認することは一日で出来る。 レジアス中将の六課視察が終わり次第、皆には働いてもらうぜ」

 ぱんと手を叩き、解散を促す。 さて、ヴィヴィオと楽しい楽しい六課見学といくとするか。

 交番から外へ出ると長いこと話していたせいか、既に太陽は沈みかけていた。 さっさと帰らないとなのはとフェイトに怒られてしまい、ヴィヴィオは拗ねてしまう。

「なぁ、俊」

 バイクに跨り帰る寸前、はやてが声をかけてきた。

              ☆

 はぁ……きょうはレジアス中将が視察しにくるんやけど……ほんまに大丈夫なんかな?

「はやて、顔がニヤけてるぞ? なんかいいことでもあったのか?」

「んー、やっぱりバレてしもた? なぁ、ヴィータ。 やっぱ俊はカッコええな」

「……あいつのカッコよさなら10年前から知ってるよ」

「そうなんやけどな。 ただ──やっぱ俊はかわっとらんかったよ」

 あのとき話してよくわかったことや。

             ☆

「なぁ俊。 一つ聞いてええか?」

「んあ? どうした? 視察で作戦の難易度が変わるんだから頼むぜ?」

「まぁそこはええねんけど……。 なんで──俊はそこまでやろうとおもったん? 最高評議会とか管理局のこととか、俊には全く関係あらへんやん。 なんでこんなことやろうとおもったん?」

 はやては純粋にそう思った。 はやてはずっと疑問を抱いていた。 何故この幼馴染は──いきなりこんなことを言い出したんだろうと。 最高評議会のことも、レジアス中将のことも俊が率先してやろうとは思わない。 八神はやては知っている。 上矢俊が“とっても優しく誰でも助ける青年”ではないことを。 自分に甘く、身内に甘く──ただそれだけの男であることを知っている。

「なんでこんなことやろうとおもったん? 決意はわかった、動機もなんとなくわかった。 けど、それ以外のことはまったく理解できへんねん。 あんた、そんなに赤の他人に優しくないやろ? 他人には平気で暴言吐ける男やろ?」

 バイクに跨っていた俊が頭を掻く。

「一度くらい──主人公になりたいじゃん?」

 そういって俊は笑いながら身に着けていた白衣を翻し、バイクに跨って家に帰った。

           ☆

 まったく……またわたしに隠し事をして、ただですむと思ったら大間違いやで?

 ただ──言葉とその姿勢だけは真剣で本気やった。

「あー、わけわからんくなってきてもうた……」

 頭がぐるぐる回転する。 もう考えるのはやめや。

 それに、なんだか俊を見てると自分のことだけ考えていた自分がはずかしゅうなってきたのもたしかや。

「わたしも今回ばかりは頑張るとしよか」

 そのためには──まず午後のレジアス中将の視察を必ず成功させて次につなげることが、わたしの使命や。

 六課の面々が集まっている部屋の扉を開ける。 昨日のうちに皆には視察のことを話しておいた。 今日くらいは──本気をみせてくれるはずや。

『あ、なのはさん! わたしのレアアイテムいま取りましたね!?』

『ふっふっふ、これも教導だよスバル。 って、あーーー!? フェイトちゃんそれわたしのケーキ!?』

『あ、ごめん。 てっきりティアのだから食べていいかなと』

『私のだったら食べていいなんて法則ないですよ!?』

「……はやて、頑張れ」

「……がんばるんや、はやて……! ここで負けたらあかん……!」

 ごめんな……俊。 この視察、かなり危ない賭けかもしれへん……。




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