88.曲芸3



 機動六課のとある一室にて、八神はやては呆れ100%の顔で自分のデスクいっぱいに広がったゲーム機をみていた。 そして隣のもう一つのデスクにはポッキーやカルピス、クラッカーやビスコ、ポテトチップスにかっぱえびえんといったガールズトークに鉄板の食糧が所せましと置かれていた。 はやてはその中の一つ、──携帯型ゲーム機を手に取って持ち主に見せつけながら問う。

「なのはちゃん。 これはなんなん?」

「え? はやてちゃんPSPもわからないの? おっくれってるー!」

 指を突き付けながらはやてに笑顔を向けるなのは。 これでも空に愛され、誰もが憧れるエースオブエースである。 管理局内では『なのは教』まで作られるほどの影響力の持ち主だから困る。 ちなみにティアナもこれに所属していたりする。

 そんななのはに顔をひくつかせながらもはやては一人、ぐっと我慢する。

「(落ち着くんや、八神はやて。 あんただってそっち側の人間やろ? いま限定なんや、ここは我慢せんと、あいつの戦略が水の泡になるかもしれへんし……。 ここは我慢や……!)」

 表面上はなんとか笑顔を作ろうと努力するはやて。 しかし、そんなはやてにフェイトが追い打ちをかける。

「そんなこと言ったらダメだよなのは。 はやてはほら……脳内が結構偏ってそうだし、性の方向に」

 はやてのほうをチラチラとみながらそう小声で言うフェイトに、はやては体をわなわなと震わせ、頬には怒りマークを発生させる。

「(なのはちゃんとフェイトちゃんにだけは言われたくない……! 二人だってかわらんやんか! 二人が百合カップルになってくれれば、わたしは心置きなくいちゃいちゃできるのに……! もうええやん、局内殿堂入り百合カップルなんやしええやん! これで俊の存在が知られたらあいつ殺されかねんで!)」

 時空管理局 理想の百合カップル 殿堂入り
高町なのは&フェイト・T・ハラオウン (10年間無敗)

 いったい管理局はどこに向かっているのだろうか。

 はやては盛大にため息をつき、次いでなのはとフェイト、後ろに控えている面々を睨みながら時計を指さす。

「みんな、もうすぐ地上本部のトップであるレジアス中将が六課の視察にくるんやけど……それは伝えてあったから理解できとるか?」

 全員がうなづく。

「それでいまのいままで遊んでおったと……」

「でもはやてちゃん。 視察だから皆で一室に引きこもってたほうがよくない?」

「いいわけあるか! 視察に来るいうとるやろ! この視察で六課に何か問題があると判断されたら……」

『判断されたら……?』

 はやての意味深な言葉に思わずなのは達は聞き返す。 はやては全員を一度見回して──非常に残酷な現実を突き付けた。

「六課は解散ということになるで」

『本気だします!』

 はやての言葉を受けて全員が握りこぶしを作りながら室内が震えるほどの声量でそう言ってのけた。 ちなみに、ヴィータは一人外側で額に手を置き、やれやれと頭を振っていた。 どうやらヴィータにはこれから自分が苦労する未来が見えたようだ。

 はやては全員のやる気に頷きながら、一人一人に指を突き付けながら、演説のように喋る。

「ええか。 今回の視察でわたし達、六課の存続が決まってくるんや! 心してかかるんやで! とくに、教導は重要や! むしろこれが本命といっても過言ではあらへん。 なのはちゃん、頼むで?」

「オッケー。 大丈夫だよ、はやてちゃん」

「ところでなのはちゃん、昨日の教導はなにしたん?」

「ドッチボール」

「せめて魔法使ってくれへんかなあ!?」

 開始早々ぶっぱなしてくる高町教導官にはやては早くも冷や汗がだらだらである。 今回の視察、一重になのはの教導姿にかかっているといっても過言ではないのだ。 レジアス中将も事前に教導についてしっかり見るとのお達しがあったのではやてもそれを前提に行動したいわけだが──

「……えっとな、なのはちゃん。 一応、“魔法少女”やから魔法使ってくれへんかな? これじゃただの小学校のお昼休みみたいな感じやし」

「でもでも、魔力弾ありのドッチボールだよ? 四方八方から襲い掛かってくる魔力弾を躱し、ときには相殺して、そんな状況の中でも相手を的確に当てていく。 集中力と周りを把握する能力が常に求められる結構ハードな教導なんだよ?」

「うっ……! 教導のプロであるなのはちゃんがそういうんならそうなんやろうなぁ……。 エースオブエースやし、ここはやっぱりなのはちゃんの教導に任せたほうがええかも──」

「魔力弾を部下にブチ当てるとスカッとするよね」

「気持ちはわかるけど、お願いだから教導で部下に日頃の恨みを晴らすのはやめてくれへん!? めっちゃ私利私欲のためにドッチボールしてるやん!」

 しかしながら、この場にいる全員とも、普段のスバルとティアの言動と行動、そしてそれによってなのはがどれほど苦労しているのかを知っているので新人二人を本気で庇う気になれないのであった。 そして、その他にもスバルとティアを庇う気になれない理由がある。

「はやてさん! なのはたんを苛めるのはやめてください!」

「そうです! やめてください!」

「「私たち二人とも、なのはたんの魔力弾を受けることができてうれしいんです! イくことができるんです!」」

「教導はSMプレイするところじゃないわぁあああああああああああああ!!」
 
 キれて席を立つはやてを、ヴィータとシグナムで必死に抑える。

「落ち着けはやて!? いまはこんなことしてる場合じゃないし、部下の監督をすることができなかったはやての責任でもあるんだ、今日だけでもしっかりとした教導をやればいいだろ!」

「そうですよ主はやて! 主はやてのために私もできる限りのことをしますから!」

 はぁはぁ……と荒い息を吐きながら、大きく深呼吸をして席に座るはやて。

「と、とにかく……きょうはなのはちゃんちゃんとした教導頼むで。 スバルとティアとなのはちゃんと、シグナムもいこか。 その四人で教導を、後の面々は雑務を。 ヴィータはわたしとレジアス中将の案内を。 ええか、みんな? 六課でゆっくりしたいのなら、今日は本気を出すんやで?」

『はーい!』

 元気よく手を挙げる面々に、一抹どころじゃない不安を覚えるはやてであった。

 そんなはやての不安など、時間と現実は心配するはずもなく時計の針はレジアス中将が来る時間帯を指す。 はやては外からの連絡を受けて、ヴィータと二人、レジアス中将の元へと向かった。

 地上本部トップであるレジアス中将は厳しい目を向け、横にいる女性はそんなレジアスに何かを耳打ちしていた。 はやてはレジアス中将に歩み寄り、握手を求めて手を差し出す。

「本日はご足労ありがとうございます。 機動六課部隊長、八神はやてです。 こちらが、六課の教導から事務処理まですべてをこなすヴィータ副隊長です。 本日はこの二人で案内することになります」

「こんな小さな子供が副隊長とは……流石“アイドル部隊”だな」

 にこやかな笑みを浮かべるはやてとは対照的に、レジアスはヴィータを横目でみてわざと聞こえるように言いながら握手を返した。 はやては頬がヒクつく感覚を覚えながらも、愛想笑いを浮かべる。 はやてとの握手が終わると、今度はヴィータが一歩前に詰め寄り握手を求める。

「スターズの副隊長、ヴィータです。 お言葉ですがレジアス中将、外見だけで判断するのは如何なものかと思います。 あたしの友人の言葉を借りるのであれば 『三流がよくすること。 それかずっこんばっこんのことしか頭に入ってない奴がする』 とのことでした。 といっても、その友人は美少女がたくさん出てくるゲームを必死にやりながらでしたのであまり説得力はありませんが。 しかし地上本部のトップが外見でどうこういうとは思ってもいなかったですね」

「ふん。 その友人というのも大したことないだろうな。 言葉の端々から負け犬臭が漂っている」

「確かに負け犬かもしれませんね。 ただ、法則すら噛み砕く負け犬ですので注意しておいたほうがいいですよ」

 両者、握った手に力を込めながら話す。 ぴりぴりとした空気が辺りを包み込む──が、そんな空気もはやての声で消し去ることとなった。

「さ、さぁ! レジアス中将もヴィータもそんな握手ばっかりしとらんで、そろそろ視察のほうにいこや!」

 ヴィータの背中を押して、レジアス中将と横にいる女性を六課の面々がいる仕事場へと案内する。 既にはやては心の中でとある男にヘルプを送っているのだが、勿論届くことはないだろう。 そんな中、四人はメンバーが事務仕事をしている場所にたどり着く。 先ほどまでゲームをしていた場所だ。

 はやてが初めに部屋へ入り、二人を誘導する。 そこで二人がみた光景は──

「ねぇシャマル!? ここに置いていた書類知らない!? 執務官の仕事で使うものなんだけど──」

「それならシュレッダーにかけましたよ?」

「なんでかけちゃったの!?」

「ねぇエリオくん? この書類ってどう書けばいいかわかる?」

「えっと……あれ? これはどう書くんだっけ……。 確かこう書いて……」

「それ本当にあってるの?」

「うっ……。 ごめん、わかんない……」

「終わった……。 あの書類の中に重要な案件が入ってたのに……。 いまから取り寄せても遅すぎるし……」

「えっと……ノリで再生させてきますね!」

 自分のデスクに置いていた書類をシャマルにシュレッダーにかけられ落ち込むフェイト。 そんなフェイトを見て、なんとか書類の再生を試みるシャマル。 その近くでは、子供組であるエリオとキャロが少し特殊な書類の書き方で戸惑っていた。 まるで新学期を迎えたはいいが、用意もなにもしてなくて朝になって慌てる女の子の部屋のようである。

 部屋の光景を見て、はやてはチラリとレジアスのほうを見る。

「…………」

 レジアスの顔がとても険しくなっていた。

 いつものだらだら六課と比較すれば、素直に賞賛をはやては送りたいのだが……そもそも視察に来るほど六課のことを快く思ってないレジアスが相手となるとこの光景も叩くには十分なのかもしれない。

「ふんっ。 書類管理ができてない執務官に、書類をまともに書けない子供。 まぁ……所詮この程度のレベルか」

 そう呟いたレジアスの言葉に、はやては心の中で罵倒で返した。

 フェイトやシャマルが騒ぐ中──この人物だけは落ち着き払って行動を起こした。

 はやてとレジアスの間を通り抜けると、まずはじめにエリオとキャロのデスクに近づき

「この書類の書き方はちょっと特殊だからな、こう書くんだ。 ほら、あたしが練習用として書いたのがあるからそれを見ながら書いていけ」

 そう自分のデスクから紙を取出し、二人のそばから離れた。 次にフェイトのほうへと向かって歩き、これまた同じくデスクの上に置いてあった書類を落ち込んでいるフェイトに渡す。

「こんなこともあろうかと、一応コピーしてたんだがこれでいけるか? ダメなら取り寄せるしかないけど」

「あ、ありがとうヴィータ! 事情さえ説明すればこれでも十分通るよ!」

 書類を泣き目で受け取ったフェイト。 それをみて苦笑するヴィータ。 フェイトはヴィータから書類を受け取ると、すぐさま作業に没頭する。 そんなフェイトの姿をみて、今度はシュレッダーで必死に書類を探しているシャマルに声をかける。

「シャマル。 ちょっと教導のほうに行っててくれないか? ほら、うちのエースの教導は厳しいからきっと怪我してると思うぜ?」

 ヴィータの言葉にふと何かに気づき、そして親指を立てた後シャマルは走って出ていく。

 圧巻の一言だった。 先ほどまでの大騒ぎが嘘のように静まり返る室内。 ペンが紙の上を走る音だけが耳に聞こえてくる。

 ヴィータは室内をもう一度見回して、はやての元に戻ってくる。

「八神隊長。 どうやら事務のほうは大丈夫なようですし、教導のほうに行きませんか?」

 そう事務的な声で告げる。 そしてレジアスのほうを向き、

「レジアス中将。 此処にいたら仕事の“邪魔”になるかもしれないので教導のほうに行きませんか?」

 そう言葉を放った。

「ふんっ。 私がいるから仕事ができなくとでもいいたいのか? 随分とメンタルが弱い奴らだな」

「生憎、六課は美少女揃いなので怖い顔した男性がいますと全員ともそちらに意識を向けてしまうのです。 幼馴染に飼いならされているペットだと話は別ですが」

 なおもヴィータとレジアスは静かに、しかし勢いを増しながら何食わぬ顔で罵り合っていく。 それを傍目に見ながら、はやてはポケットから携帯を取出しとある人物にヘルプを要請した。 メールを出し終え、携帯をポケットに入れなおそうとするはやての肩をとんとんと叩く女性。

「いま男性の顔写真が写ってましたが……どういった関係ですか? と、それよりも自己紹介ですよね。 初めまして、オーリス・ゲイズです。 レジアス中将の秘書をやらせていただいてます」

 オーリスははやてに丁寧に頭を下げる。 それに答える形で、はやても頭を下げた。

「八神はやてです。 えっと……もしかしてレジアス中将の娘さんやろか?」

「ええ、娘ですよ」

 にこやかに笑うオーリスに、はやてはピンと何かを感じ取った。

「(なんやろ……、なんか危ない感じがする人やな〜……。 まぁ、ええか) それにしても、ほんとすいません。 ヴィータが突っかかってしもて……、きっとヴィータは六課ではなく自分にレジアス中将の目を向けさせるつもりなんやと思うんやけど……」

「いい部下をお持ちですね」

「部下やないです。 家族です」

「それは失礼しました。 ところで、先ほどの男性ですが」

「夫です」

 間髪入れずに答えたはやてにオーリスは呆気にとられる。

「えっと……アイドル部隊の部隊長に男がいるだけでも騒動ものなのに……夫ですか?」

「会ったこともない他人に愛されるより、大好きな一人に愛されたいと思うのは、乙女として普通のことやと思うで?」

「……確かにそうですが」

 若干狼狽えるオーリスに首をかしげながらも、はやてはヴィータとレジアスを諌めて教導の場所へ行くこととなった。

 そう──問題児たちが跋扈している教導に行くこととなった。

            ☆

『なのはさーん! これ終わったらプリクラ撮りにいきましょうよー!』

『いや、だから教導をしないとわたしの給料が……』

『えー! 行きましょうよー! お金なら私があげますから! 何万なら行きますか!? ホテルは何万ですか!?』

『プリクラ撮りに行くんだよね!? なんでホテル行くことになってるの!?』

『というか……なのはさんってプリクラとか撮りに行くんですか?』

『……高校のとき、ペットやフェイトちゃんやはやてちゃんとか、アリサちゃん、すずかちゃんとはよく撮りに行ってたかな』

『なんだろう……。 なのはさんの制服姿、思わず“無理しちゃダメです”と言いたくなるような……』

『おいちょっとまて。 それはどういう意味だ』

 八神はやては全身から吹き出す汗が止まらなかった。 ダムが決壊したかのように体の内側から止めどなく流れていく汗と、乾いた笑みと固まった頬を張り付かせながらレジアスをみるはやて。 見て後悔した。 レジアスの表情は険しいを通り越して、無表情で感情すら感じさせない顔をしていた。

 あかん……! これはあかん……!

 はやては心の中で叫ぶ。 いったい、どこの管理局に教導中にプリクラの話をする部下と上司が存在するのだろうか。

 はやてたちが見つめる先、高町教導官は強引に部下を引きはがす。 そこにやってくるもう一人の青髪の部下。

『なのはさーん! メリケンサックつけてみました! これで攻撃力が段違いですよ!』

『捨ててきなさい』
 
『そういえば、シグナムさんとシャマルさんは?』

『プレッシャーでトイレに籠ってるよ』

 終わった……、この視察で六課は終わったで……。

 その場で崩れ落ちるはやて。 しくしくと泣くはやて。 横にいたオーリスは流石にはやての行動におろおろするが、レジアスはそんなことなど微塵も気にせず声をかける。

「これが六課の教導とでもいうのだろうか。 とんだ教導だ、バカバカしい」

 鼻を鳴らして小馬鹿にするレジアス。 しかし、そのレジアスの言葉にまたもやヴィータが口を出す。

「確かに、短期間の教導ならばこういう馴れ合いは愚の骨頂ですが、六課での教導は1年間。 それを考えるのであれば、あの形態はとても良いとあたしは思いますが」

「何を言う。 世の中力がすべてだ。 教導ではその力を学ぶ。 こんな教導で、なにを学べるというのだ」

「『力しかない者を俺は雑魚と呼んでいる』。 以前、あたしの友人が言っていた言葉ですがね。 どうやら、その友人とレジアス中将は随分と相性が悪いようで。 そしてあたしとも相性が悪いようですね」

「小娘との相性などどうでもいい」
 
 吐き捨てるレジアスは、一度教導をチラリとみて、その場を後にしようとする。
 
「もうお帰りになるんですか?」

「どうやら、私は思い違いをしていたようでな。 六課に価値はない」

 レジアスはそういうと、すたすたと玄関のほうへと歩いていく。 その横を付き従うように歩くオーリス。 後ろを、一応見送る形だけでも……という体で歩くはやてとヴィータ。 はやては難しい顔をしており、ヴィータは面白くなさそうな顔をしている。 レジアスとオーリスは何か秘密の会話でもするかのように、互いの耳を近づける。

「あっ……!」

 はやては思わず声をあげた。 はやてより前方から、白衣を着こなし小さな5歳になる女の子と手を繋ぎながら、女の子とアヒルに話しかけている青年を発見したからである。

 しかし、レジアスとオーリスはただの職員だろう、そう思って気にかけなかったのだが──

「おっと、すいません」

「気をつけろ」

 青年の肩とレジアスの肩がぶつかり、青年が謝るとレジアスは多少苛立ちながら青年に返す。

 そして青年とレジアスが完全に交差する直前、青年は何かを思い出したかのように「そうそう、そこの方」 と、レジアスを呼び止める。

 レジアスが振り向く。 振り向いた瞬間、レジアスの眼前には山なりに投げられた自身のサイフが目に映ることとなった。

「気を付けたほうがいいですよ、サイフ落ちてましたから」

 そうにこやかな笑みを浮かべた青年は、そのままはやてとヴィータと談笑する。

 レジアスはそんな青年を見て、立ち止まった後、何も言わずに先ほどと同じ目的地に向かって足を進めた。

「レジアス中将、六課はどうでしたか?」

「ふんっ。 もう興味が失せた。 それより、“アレ”はできたのか?」

「はい、すでにできております」

 レジアスはその答えに満足して、六課を出て行った。

            ☆

「おいひょっとこ。 もうちょっと嫌味っぽく言えよ。 普段のお前なら、『注意が散漫してますね。 それでも地上本部のトップなんですか?』 とかいうだろ」

「だってミッドの生活守ってくれてるの地上部隊だし。 俺は一般市民だから、レジアス中将に嫌味を言う道理がないしな。 まぁ、あまりヴィータちゃんも喧嘩腰になっちゃダメだぞ? 同じ管理局の中同士、互いのいいところや凄いところを認め合って一つのことに向かって進んでいけ」

「むっ……、それはわかるけどよー。 だってはやてをバカにしてる奴なんだぜ、レジアス中将ってよ」

「だからといって、お前が堕ちる必要はないだろ」

 ヴィータの頭をぽんぽんと叩いて、次いでよしよしと慰める。 ちなみにヴィータは頬を膨らませて拗ねていた。 よっぽどはやてのこと関係で、レジアス中将のことが嫌いみたいだ。 それさえなければ、きっと普通の付き合いができるはずなのだが。 青年はそう思いながら、撫でていく。

「それにしてもはやて、お疲れ様。 よく頑張ったな」

「うぅ〜……、俊……六課はやっぱりダメなんかな? もうちょっとシャキってさせたほうがええかな?」

 涙目で聞いてくるはやてを、青年は 「まさか」 そう肩を竦め、はやてをあやしながら自信をもって答えた。

「だらだら六課は俺の切り札だ」

「さて、これからが大変だな……」そう口にして、甘えるはやてと愚痴を吐くヴィータ、そして遊んで遊んでとせがむ娘とアヒルの相手をしながら、青年は嗤う。

 カードを切る音がする。

 




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